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学歴と喫煙率は反比例する!その理由とは?
わたしたちに身近なテーマは、たばこ問題でしょう。国際オリンピック委員会は1988年より「たばこの無いオリンピック」を掲げ、選手村や競技場を禁煙としてきました。その流れで開催都市は公共の場を原則禁煙とし、罰則を含めた法規制をしくことが慣例となっています。が、日本ではいまだに全面禁煙か分煙かをめぐって議論が戦わされています。
愛煙家の人々にとっては、たばこも生活の一部、楽しみでしょうが、受動喫煙など喫煙者以外の人々に健康被害が及ぶことも事実です。受動喫煙により死亡している人々の数は年間15,000人…そんなたばこを嗜む人口の比率が、学歴によって著しく差があるということを御存知でしょうか。
女性においても、この構図は変わりません。トップは「中卒」の49.3%、「大学院卒」の4.8%が最低値です。また、性別を問わず、年代が上がるにつれて喫煙率は下がってゆくのは、やはり健康を意識するようになるからでしょうか。
学歴と喫煙率の関係は、諸外国でも同様の研究データが見られています。このような構造が生み出される背景には、学歴により就きやすい「職場の喫煙環境」が要因になっていると指摘されています。もともと喫煙率が高いところは、朱に交わればなんとやら、喫煙習慣がつくのも無理なからんことです。仕事仲間と一服する時間を共有する、タバコミュニケーションで人間関係を円滑にする面があるとも言えます。しかし、そのような環境では個人で禁煙を試みても非常に難しく、仮に成功したとしても、受動喫煙にさらされる機会は多くなるでしょう。
2017年4月、東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本に対し、WHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長は会見で、屋内の公共の場を全面禁煙の必要があると訴えました。日本は受動喫煙予防に対して最低ランクの取り組みしかなされていないと批判し、東京五輪前の今こそ、改善に取り組むべきだと述べました。
また、同組織のジュディス・マッカイ上級制作顧問によれば、屋内での『完全な分煙』は不可能であると、苦言を呈しています。世界水準からみれば、日本のたばこ対策は特に罰則があるわけでもなく、遅れているとされています。日本では、たばこの煙の問題は愛煙家の「マナー」意識の範疇にくくっていましたが、諸外国では「健康被害」と位置づけしているところに、決定的な違いがあるようです。
どうしてヘルスリテラシーが低くなるのかについては複数の原因が考えられていますが、一因として、学校教育をあげる声もあります。海外では早い時期から、段階的に健康や身体について学び、ヘルスリテラシーを身につけられるよう教育されるようです。それに比べると、日本の現行の保健の授業では、生涯役に立つレベルでのヘルスリテラシーを身につけるのは難しい、もっと体系的に人体について学ぶカリキュラムが必要だと唱えられてもいます。
しかし、授業改革よりも必要なのは、社会全体の「健康」に対する意識改革かもしれません。学校側も生徒側も、「どうせ受験に保健の試験はない」と考えているところは否めないでしょう。受験やビジネスに役に立たないものは軽視する風潮こそ、健康について学ぶ機会を失わせ、学歴による喫煙率格差、ひいては健康格差を助長する弊害になっているのかもしれません。
愛煙家の人々にとっては、たばこも生活の一部、楽しみでしょうが、受動喫煙など喫煙者以外の人々に健康被害が及ぶことも事実です。受動喫煙により死亡している人々の数は年間15,000人…そんなたばこを嗜む人口の比率が、学歴によって著しく差があるということを御存知でしょうか。
数値で見る喫煙の社会的格差
2016年に厚生労働省より出された「たばこ白書」から、学歴による喫煙率を見ることができます。性別、年代、最終学歴でまとめられたデータによれば、もっとも喫煙率が高いのが「25~34歳」までの「男性」「中卒」の人々、68.4%とかなりの割合でたばこを吸っていることがわかります。「高卒」では55.9%、「専門卒」では49.5%と、学籍を置いている期間が長引くごとに喫煙率は低くなり、「大学院卒」では19.4%となります。女性においても、この構図は変わりません。トップは「中卒」の49.3%、「大学院卒」の4.8%が最低値です。また、性別を問わず、年代が上がるにつれて喫煙率は下がってゆくのは、やはり健康を意識するようになるからでしょうか。
学歴と喫煙率の関係は、諸外国でも同様の研究データが見られています。このような構造が生み出される背景には、学歴により就きやすい「職場の喫煙環境」が要因になっていると指摘されています。もともと喫煙率が高いところは、朱に交わればなんとやら、喫煙習慣がつくのも無理なからんことです。仕事仲間と一服する時間を共有する、タバコミュニケーションで人間関係を円滑にする面があるとも言えます。しかし、そのような環境では個人で禁煙を試みても非常に難しく、仮に成功したとしても、受動喫煙にさらされる機会は多くなるでしょう。
日本と海外では「たばこ問題」にギャップあり
近年、飲食店では分煙が主流になってきています。時間帯やエリアで分けることで、愛煙家と嫌煙家の双方が利用できるようになどの配慮が進んでいますが、一方でこの施策では受動喫煙を防ぎきるのは難しいとの指摘も出てきました。2017年4月、東京オリンピック・パラリンピックを控えた日本に対し、WHOのダグラス・ベッチャー生活習慣病予防部長は会見で、屋内の公共の場を全面禁煙の必要があると訴えました。日本は受動喫煙予防に対して最低ランクの取り組みしかなされていないと批判し、東京五輪前の今こそ、改善に取り組むべきだと述べました。
また、同組織のジュディス・マッカイ上級制作顧問によれば、屋内での『完全な分煙』は不可能であると、苦言を呈しています。世界水準からみれば、日本のたばこ対策は特に罰則があるわけでもなく、遅れているとされています。日本では、たばこの煙の問題は愛煙家の「マナー」意識の範疇にくくっていましたが、諸外国では「健康被害」と位置づけしているところに、決定的な違いがあるようです。
ヘルスリテラシーが低い日本
たばこ問題に限らず日本人は、健康についての情報を得る、その正誤性を判断し活用するための意識や能力、すなわち「ヘルスリテラシー」が低いと言われています。調査法にやや偏りも指摘されていますが、ヨーロッパ基準の調査によれば、他のアジア・欧米諸国と比較すると低得点となりました。どうしてヘルスリテラシーが低くなるのかについては複数の原因が考えられていますが、一因として、学校教育をあげる声もあります。海外では早い時期から、段階的に健康や身体について学び、ヘルスリテラシーを身につけられるよう教育されるようです。それに比べると、日本の現行の保健の授業では、生涯役に立つレベルでのヘルスリテラシーを身につけるのは難しい、もっと体系的に人体について学ぶカリキュラムが必要だと唱えられてもいます。
しかし、授業改革よりも必要なのは、社会全体の「健康」に対する意識改革かもしれません。学校側も生徒側も、「どうせ受験に保健の試験はない」と考えているところは否めないでしょう。受験やビジネスに役に立たないものは軽視する風潮こそ、健康について学ぶ機会を失わせ、学歴による喫煙率格差、ひいては健康格差を助長する弊害になっているのかもしれません。
<参考サイト>
・厚生労働省:『たばこ白書』
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf
・厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書:『日本における喫煙の学歴格差』
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/japan21/pdf/o-27-13.pdf
・厚生労働省:『たばこ白書』
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf
・厚生労働科学研究費補助金分担研究報告書:『日本における喫煙の学歴格差』
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/japan21/pdf/o-27-13.pdf
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