テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.04.14

上がらない年収…でもバイト時給は過去最高?

 統計上は景気が回復していても、日本人の年収はなかなか上がらないと言われています。ですが、その一方でバイトの時給はずっと右肩上がりという意外な事実があります。数字で見てみることにしましょう。

「失われた20年」で給料もドカンと下がった

 まずは平均年収から。最新のデータは2016年のものになるのですが、国税庁が発表している民間給与実態統計調査によると、「1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は 422万円」になります。男性は521万円、女性は280万円です。また、正規、非正規で比べてみると、正規487万円、非正規172万円が平均となりました。

 この数字は高いのか、低いのか。ここ数年で見れば微増ではありますが、少しずつ増えてはいます。ですがもう少し時計を巻き戻してみると、ピーク時の1997年には467万円でした。「失われた20年」を経て、給料が上がらないどころか、40万円以上、下がってしまったことになります。1人当たりでこれだけ下がっているので、世帯で見れば当然減少額はもっと大きくなります。一世帯あたりの平均所得金額だと2016年は545.8万円ですが、1997年は661.2万円。こちらの方が実生活の数字としてイメージしやすいのではないでしょうか。一家庭の家計で年間100万円以上減ってしまっているわけです。

バイトの時給はグングンアップ!その理由は

 先ほどの「1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与」は正社員だけでなく、派遣社員やアルバイト、パートなども含めた数字です。全体で見れば平均給与は下がっているのですが、バイトの時給で見ると実は正反対。ジョブズリサーチセンターの調査によると、2017年12月の三大都市圏の平均時給は、過去最高の1030円をマーク。スタッフが学生だった10数年前は時給1000円もらえればそこそこ高給でしたが、今や1000円では平均以下。確かにコンビニや牛丼店の求人募集を見ても、都内では時給1100円、1200円台は珍しくないですよね。

 どうしてバイトの時給は上がり続けているのでしょう。最低賃金が常に上がり続けていることが大きな要因として挙げられます。現在東京都の最低賃金は時給958円。平均給与が最高額をマークした1997年は679円。勤労者全体で見れば約10%給料が下がった間に、最低賃金は約1.4倍までジャンプアップしたわけです。

 日本人の平均給与が下がった原因としては、非正規雇用の割合が大きく増えていることが大きいでしょう。1994年には20.3%だった非正規の割合は、2017年には37.3%に。5人に2人ほど非正規という時代になっています。

 平均給与が上がらない時代になっている一方で、バイトをしている人にとっては以前よりお金を稼ぎやすくなっている、とも言えるかもしれませんね。

<参考サイト>
・国税庁:民間給与実態統計調査
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2016/pdf/001.pdf
・平均年収.jp:日本の平均年収
http://heikinnenshu.jp/country/japan.html
・厚生労働省:平成28年国民生活基礎調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/index.html
・JBRC ジョブズリサーチセンター:最新市場データ(平均賃金レポート アルバイト・パート)
http://jbrc.recruitjobs.co.jp/data/ap/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
2

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
4

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授
5

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士