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大企業とは全然違う!中小企業の賃金事情
日本の経済を支えている中小企業の賃金事情については、これまであまり整ったデータがありませんでした。そこで、東京都では平成22(2010)年より毎年、従業員が10人から300人未満の中小企業のみを対象に、賃金についての調査を行っています。企業の数で言えば、東京都内に所在する企業の98.9%が中小企業なのです(2014年調べ)。1.1%の大企業と比べてみると、どうなのでしょうか。
東京で働く中小企業従業員の平成28年度分年間給与支払額は547.5万円です。企業規模別に見ると、10~49人が503万円、50~99人が561万円、100~299人が580万円となります。また平成29年7月の平均賃金は所定時間内賃金351,957円(うち通勤手当12,706円)、所定時間外賃金34,617円となりました。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をみると、大企業の賃金(月収)は34.7万円(男性39.3万円、女性27万円)となっていますから、東京の中小企業に限っては大企業の全国平均に比べて遜色がないことがみてとれます。
産業別に東京の中小企業の平均賃金を比較すると、高い順に金融・保険業(49.1万円)、情報通信業(37.6万円)、建設業(35.2万円)。低い順では医療・福祉(28.2万円)、運輸・郵便業(28.8万円)、教育・学習支援業(29万円)となります。
この順位も、厚労省の産業別賃金とは少し違いがあり、全国・全規模の産業別でみると、金融・保険業、教育・学習支援業、学術研究・専門技術サービス業がトップ3。低いのは宿泊・飲食サービス業、他に分類されないサービス業、製造業となります。
男性と比較して女性の平均賃金が高いのは医療・福祉(92.9%)、運輸・郵便業(89.6%)、宿泊・飲食サービス(82.1%)で、低いのは金融・保険業(62.6%)、不動産・物品賃貸業(67.8%)、教育・学習支援業(70%)です。ちなみに全国平均では、女性の平均賃金(24.6万円)は男性(33.6万円)の73.4%。男女格差でも、東京都は一歩先を進んでいるようです。
年齢/中小企業/大企業(単位は千円)
22歳/208.2/215.3
25歳/230.3/246.4
30歳/270.3/317.3
35歳/305.0/391.1
40歳/348.5/464.4
45歳/389.6/540.3
50歳/420.2/592.9
55歳/442.0/619.1
60歳/432.6/561.8
こちらでは、相当差が開いています。とくにピーク時の55歳になると、中小企業では新卒の頃の2.1倍の44.2万円ですが、大企業では2.9倍もの61.9万円に上っています。
先のデータとの違いは、大企業では賃金の学歴間格差が大きいこと。たとえば高校卒生産職では22歳でモデル賃金の89.1%、55歳では66%しか支給されていません。中小企業では、22歳で97.2%、55歳で84.5%。大企業ほどの格差はないのです。
賞与については、支給時期のみを定めている会社が69.6%、支給時期と額の定まっている会社が10.3%、賞与規定のない会社が18.6%(無回答1.5%)です。実際に1年間でボーナスが支給された会社は849社(85.2%)に上り、支給額合計の平均は92.5万円(中央値は75.9万円)となかなかの水準を記録しています。
経団連の発表によると2017年年末賞与・一時金の平均が88.8万円とされています。夏・冬2回のボーナスを足しても大企業の年末ボーナスに届かない中小企業は多いようで、格差があるのは明らかです。しかし、東京都に限って言うと、一部メディアで言われている平均28万円よりは高い額が支給されていることも分かります。
東京の中小企業だと、平均年収は547.5万円という事実
平成29年度版の「中小企業の賃金事情」では、約45万社に上る中小企業から997社を抽出したデータが分析されています。東京で働く中小企業従業員の平成28年度分年間給与支払額は547.5万円です。企業規模別に見ると、10~49人が503万円、50~99人が561万円、100~299人が580万円となります。また平成29年7月の平均賃金は所定時間内賃金351,957円(うち通勤手当12,706円)、所定時間外賃金34,617円となりました。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査をみると、大企業の賃金(月収)は34.7万円(男性39.3万円、女性27万円)となっていますから、東京の中小企業に限っては大企業の全国平均に比べて遜色がないことがみてとれます。
産業別に東京の中小企業の平均賃金を比較すると、高い順に金融・保険業(49.1万円)、情報通信業(37.6万円)、建設業(35.2万円)。低い順では医療・福祉(28.2万円)、運輸・郵便業(28.8万円)、教育・学習支援業(29万円)となります。
この順位も、厚労省の産業別賃金とは少し違いがあり、全国・全規模の産業別でみると、金融・保険業、教育・学習支援業、学術研究・専門技術サービス業がトップ3。低いのは宿泊・飲食サービス業、他に分類されないサービス業、製造業となります。
男性と比較して女性の平均賃金が高いのは医療・福祉(92.9%)、運輸・郵便業(89.6%)、宿泊・飲食サービス(82.1%)で、低いのは金融・保険業(62.6%)、不動産・物品賃貸業(67.8%)、教育・学習支援業(70%)です。ちなみに全国平均では、女性の平均賃金(24.6万円)は男性(33.6万円)の73.4%。男女格差でも、東京都は一歩先を進んでいるようです。
モデル賃金で中小企業の「学歴不問」がわかる
この統計では、学校を卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の賃金水準を「モデル賃金」として、年齢別の上昇傾向を探っています。大卒の場合で、大企業との比較を参照してみましょう。年齢/中小企業/大企業(単位は千円)
22歳/208.2/215.3
25歳/230.3/246.4
30歳/270.3/317.3
35歳/305.0/391.1
40歳/348.5/464.4
45歳/389.6/540.3
50歳/420.2/592.9
55歳/442.0/619.1
60歳/432.6/561.8
こちらでは、相当差が開いています。とくにピーク時の55歳になると、中小企業では新卒の頃の2.1倍の44.2万円ですが、大企業では2.9倍もの61.9万円に上っています。
先のデータとの違いは、大企業では賃金の学歴間格差が大きいこと。たとえば高校卒生産職では22歳でモデル賃金の89.1%、55歳では66%しか支給されていません。中小企業では、22歳で97.2%、55歳で84.5%。大企業ほどの格差はないのです。
賃金規定の透明性は大企業が大きくリード
集計した997の中小企業のうち「賃金表」を作っているのは436社(43.7%)、賃金規定はあるが賃金表のない会社が477社(7.8%)、賃金規定自体のない会社が67社(7.0%)に上ります。1年間に定期昇給のあった会社は74.9%、なかった会社が24.9%。労組の有無が昇級を左右するのかどうかは、ありの105社で84%、なしの877社で74%の実施率なので、なんとも言えません。賞与については、支給時期のみを定めている会社が69.6%、支給時期と額の定まっている会社が10.3%、賞与規定のない会社が18.6%(無回答1.5%)です。実際に1年間でボーナスが支給された会社は849社(85.2%)に上り、支給額合計の平均は92.5万円(中央値は75.9万円)となかなかの水準を記録しています。
経団連の発表によると2017年年末賞与・一時金の平均が88.8万円とされています。夏・冬2回のボーナスを足しても大企業の年末ボーナスに届かない中小企業は多いようで、格差があるのは明らかです。しかし、東京都に限って言うと、一部メディアで言われている平均28万円よりは高い額が支給されていることも分かります。
<参考サイト>
・東京都産業労働局:中小企業の賃金事情(平成29年度版)
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/chingin/h29/
・厚生労働省:平成29年賃金構造基本統計調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/index.html
・中央労働委員会:平成28年賃金事情等総合調査(確報)
http://www.mhlw.go.jp/churoi/chingin/index.html
・日本経済団体連合会:2017年年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果(加重平均)
http://u0u0.net/JzaK
・東京都産業労働局:中小企業の賃金事情(平成29年度版)
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/chingin/h29/
・厚生労働省:平成29年賃金構造基本統計調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/index.html
・中央労働委員会:平成28年賃金事情等総合調査(確報)
http://www.mhlw.go.jp/churoi/chingin/index.html
・日本経済団体連合会:2017年年末賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果(加重平均)
http://u0u0.net/JzaK
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