テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.06.06

物価が一番高いのは本当に東京なのか?

 出張や旅行などでいくつかの場所を訪れてみると、食べ物からバスやタクシーなど交通機関の価格の違いに驚いたことはないでしょうか?「都会より、地方のほうが物価が安いので暮らしやすい」という話をよく聞きますが、そうしたイメージに対して実際はどうなのでしょう?

 イメージや感覚では真相がつかみにくいので統計から見えてくる都道府県別の物価について、調べてみました。

物価水準が最も高いのが東京都で、最も低いのは群馬県

 2017年6月、総務省から公表された「小売物価統計調査」によると、物価水準が最も高いのが東京都で、最も低いのは群馬県という驚きの結果が報告されています。この統計は「消費者物価地域差指数」に基づき、各地域の物価水準を全国100とした指数値による算出になります。

 よく耳にする「消費者物価指数」が時間の経過による物価変動を見るための指数であるのに対し、「消費者物価地域差指数」は、地域間の物価水準の差を表すための指数であることから、統計的に日本の地域別の格差を知ることができるといってよいでしょう。

 この統計を詳しく見ていくと、総合的な評価で物価水準の高い地域は、

1位:東京都(104.4)
2位:神奈川県(104.3)
3位:埼玉県(101.5)

 逆に、低い地域は、

1位:群馬(95.9)
2位:宮崎県・鹿児島県(96.1)
3位:奈良県(96.6)

 という結果でした。同じ関東圏で東京と群馬で8.9ポイントの差があるという驚きの結果です。

費目別でみていくと

 総合的な評価に対して費目で都道府県を見てみましょう。

 費目:最も高い都道府県(ポイント)/最も低い都道府県(ポイント)
・食料:沖縄県(103.5)/長野県(94.1)
・住居:東京都(133.2)/鳥取県(80.2)
・光熱・水道:北海道(116.3)/群馬県(91.2)
・家具・家事用品:福井県(108.7)/茨城県(93.0)
・被服・履き物:栃木県(115.7)/鹿児島県(90.1)
・保険・医療:山口県(103.1)/山形県(97.0)
・交通・通信:東京都・神奈川県(104.4)/岡山県(95.7)
・教育:神奈川県(112.6)/群馬県(79.9)
・教養・娯楽:神奈川県(104.8)/宮崎県(94.1)

 物価水準の振れ幅が最も大きいのがやはり「住居」で、逆に差が小さく平均化していうのが「保健医療」でした。意外な結果としては、「食料」における沖縄の高さでしょうか。

物量と選択肢も重要なポイント

 統計からはイメージと違った実像が見えてきました。物価水準において地域格差が大きいのであれば生活のベースを変更することも考えたいところですが、暮らし向きを考えると、消費に対して収入のレベルを換算する必要がでてきます。また、物量と選択肢も重要なポイントです。物価水準の低い群馬県で暮らして、東京で稼ぐというモデルも見えてきますが、実際のところはどうなのでしょう。2018年の統計を待ちながら、日本の地域格差の推移について注視していきたいところです。

<参考サイト>
・総務省統計局:小売物価統計調査(構造編)調査結果
http://www.stat.go.jp/data/kouri/kouzou/pdf/g_2016.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,200本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

映画『君たちはどう生きるか』とつながる山上憶良の答え

映画『君たちはどう生きるか』とつながる山上憶良の答え

山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(3)「沈痾自哀文」現代語訳を読む

宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』の一つの大きなテーマは、自分が恵まれていることにどう気づくかではないかと上野氏はいう。これは戦後日本のあり方、目指すべきものへの痛烈な問いかけではないだろうか。このことに...
収録日:2024/04/02
追加日:2024/07/26
上野誠
國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)
2

集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り

集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り

本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる

アスリートたちは本番で力を発揮するために、「準備」と「本番」の2つのフェーズに分けて物事を考えている。「準備」段階ですべきは、本番の状況を細部にわたってシミュレーションしておくこと。そして、本番で「意識が散漫にな...
収録日:2020/09/16
追加日:2021/01/19
為末大
Deportare Partners代表
3

こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は

こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は

「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像

「こりごりだ」「アイ・ラブ・トランプ」…いったいどちらが本当のトランプ評なのか。前大統領のトランプ氏は、過激な発言で物議を醸すことも多かったが、その人柄はどのようなものだったのだろうか。2024年11月アメリカ大統領選...
収録日:2024/04/23
追加日:2024/07/24
杉山晋輔
元日本国駐アメリカ合衆国特命全権大使
4

ポツダム宣言受諾が遅れた理由と昭和天皇の「御聖断」

ポツダム宣言受諾が遅れた理由と昭和天皇の「御聖断」

敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(10)ポツダム宣言受諾への道のり

公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏による島田塾特別講演シリーズ。紆余曲折の末、ついに発表されたポツダム宣言とその正式受諾に至るまでの道のりを知る。陸海軍の猛反発にあいながら本土決戦前の降伏を実現したポツ...
収録日:2016/07/08
追加日:2017/08/02
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授