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リベラルアーツの必要性は「若手ビジネスマン」にあり
リベラルアーツは、普通「教養」と直訳されます。文学、歴史、哲学、音楽から科学の動向までを指す、一見ビジネスとは関係のなさそうな言葉です。しかし、グローバル人材や若手ビジネスマンにこそリベラルアーツは必要であり、かつ不足していると語るのは、経済学者の島田晴雄氏(首都大学東京理事長)です。なぜ、そうなのでしょうか。
なぜ30代なのか。それは、彼らこそ世界を相手としたビジネスをするために、自分の知識不足をひしひしと感じ、打開策を求めている世代だからです。
喉から手が出るほど知識を渇望しているのに、上司や顧客都合に振り回され、出張などで席の温まる暇もない。どこへ行けば自分の求める学びが、集中して手に入るのかが分からなかった。そんな彼らにとって、2週間に1回のペースで行われ、真夜中まで議論の続く島田塾の講義は、砂漠の中のオアシスのような存在になっています。
多くの大学でも社会人リカレント教育としてリベラルアーツを提供するようになりましたが、島田氏に言わせると、それらは「七夕方式」。一つひとつの教養コンテンツはあっても、すべてに共通する軸が欠けているのです。その軸は、「なぜリベラルアーツがビジネスマンに必要なのか」という問いに十分答えられるかどうかとも関係しています。
となると、日本が世界に向けて提供できるのは「ソリューション」という名のサービスになります。モノの作り方、戦略の組み方、設計の仕方、感性に訴える知的付加価値の高いものを供給することが、日本の役割になっていくのです。
ソリューションを売るためには、ドイツ人やユダヤ人や中国人など、手練れの人々と競争する必要がありますが、そこで決め手となるのがリベラルアーツだと島田氏は言います。
ここでのリベラルアーツとは、商売する相手の歴史や文化、宗教などから、相手のものの考え方や行動様式を深く理解し、それに沿った解決法を提案できる力です。明確な目的意識がなければ、教養はバラバラのままで役に立ちません。
そんなイギリスこそ、リベラルアーツ教育に最も熱心な国であることも、連想されたのではないでしょうか。イギリスが長けているのは、イギリス文化を好きにさせる力でした。
西欧諸国では、例えば中東ビジネスを例にとっても、担当者が数十年単位で現地に居住、現地化し、現地の人々のハートをつかんで一緒にビジネスをしようという姿勢で臨んでいます。それに比べて日本の駐在員は2-3年という短期間で交代してしまうので、友達もできず、現地の人に寄り添ったソリューションを提案することはできません。
異文化に根を生やすことにメリットを感じられないのは、目の前のビジネスだけで、ほかに話すことのできない日本人の高等教育にも問題があるのではないか。単なる教養とは少し違う総合的な知的能力を高めるため、島田氏は島田村塾の若者たちと議論を続けるのです。
島田村塾に集う30代ビジネスマン
島田氏は、30代の若手ビジネスマンを主な対象に、「島田村塾」を主宰しています。そこで学ぶのはリベラルアーツそのものです。なぜ30代なのか。それは、彼らこそ世界を相手としたビジネスをするために、自分の知識不足をひしひしと感じ、打開策を求めている世代だからです。
喉から手が出るほど知識を渇望しているのに、上司や顧客都合に振り回され、出張などで席の温まる暇もない。どこへ行けば自分の求める学びが、集中して手に入るのかが分からなかった。そんな彼らにとって、2週間に1回のペースで行われ、真夜中まで議論の続く島田塾の講義は、砂漠の中のオアシスのような存在になっています。
多くの大学でも社会人リカレント教育としてリベラルアーツを提供するようになりましたが、島田氏に言わせると、それらは「七夕方式」。一つひとつの教養コンテンツはあっても、すべてに共通する軸が欠けているのです。その軸は、「なぜリベラルアーツがビジネスマンに必要なのか」という問いに十分答えられるかどうかとも関係しています。
日本が「ものづくり大国」のままでいられない理由
21世紀に入って、超高齢社会から人口縮小に向かう日本では、今後あらゆる国内マーケットが縮小していきます。より多くの日本企業が海外マーケットに販路を求めます。しかし、人件費などの高い日本の工業製品は、拡大し続ける世界のボリュームゾーン向けには高すぎ、国際価格競争に勝てないだろうと言われています。となると、日本が世界に向けて提供できるのは「ソリューション」という名のサービスになります。モノの作り方、戦略の組み方、設計の仕方、感性に訴える知的付加価値の高いものを供給することが、日本の役割になっていくのです。
ソリューションを売るためには、ドイツ人やユダヤ人や中国人など、手練れの人々と競争する必要がありますが、そこで決め手となるのがリベラルアーツだと島田氏は言います。
ここでのリベラルアーツとは、商売する相手の歴史や文化、宗教などから、相手のものの考え方や行動様式を深く理解し、それに沿った解決法を提案できる力です。明確な目的意識がなければ、教養はバラバラのままで役に立ちません。
イギリスの商法とリベラルアーツに学ぶ
モノではなく「ソリューション」を売ることが最も得意なのはイギリス人だと島田氏は言います。ゴルフやサッカーという自国のスポーツを世界中に広めた手腕を、島田氏は高く評価しています。そんなイギリスこそ、リベラルアーツ教育に最も熱心な国であることも、連想されたのではないでしょうか。イギリスが長けているのは、イギリス文化を好きにさせる力でした。
西欧諸国では、例えば中東ビジネスを例にとっても、担当者が数十年単位で現地に居住、現地化し、現地の人々のハートをつかんで一緒にビジネスをしようという姿勢で臨んでいます。それに比べて日本の駐在員は2-3年という短期間で交代してしまうので、友達もできず、現地の人に寄り添ったソリューションを提案することはできません。
異文化に根を生やすことにメリットを感じられないのは、目の前のビジネスだけで、ほかに話すことのできない日本人の高等教育にも問題があるのではないか。単なる教養とは少し違う総合的な知的能力を高めるため、島田氏は島田村塾の若者たちと議論を続けるのです。
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