社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「世界最高の国」ランキング―日本の順位は?
タイム、ニューズウィークに次ぐアメリカ第3位の時事解説誌「USニューズ&ワールド・レポート」誌は「世界最高の国」ランキング2019年版を発表しました。経済や安全といった観点からの評価はこれまでの記事でもいくつか紹介されてきましたが、こちらはもう少し幅広く、「国民の意識」や「海外への影響力」といった点も含めて国家を評価しています。外国から日本がどのように見られているのか、ということを知るという意味でも、いい物差しではないでしょうか。内容を少し詳しく見てみましょう。
・企業家精神(Entrepreneurship)17.87%
・生活の質(Quality of Life)16.77%
・市民の権利(Citizenship)15.88%
・原動力(Movers)14.36%
・文化的影響力(Cultural Influence)12.96%
・市場開放度(Open for Business)11.08%
・政治経済的影響力(Power)7.95%
・冒険心(Adventure)2.00%
・文化・歴史的遺産(Heritage)1.13%
主要項目をみるとやや漠然としています。内実をもう少し詳しく見てみましょう。もっとも比率の高い「企業家精神(Entrepreneurship)」には、「世界とのつながり」「高学歴人口」などが含まれています。次に比率が高い「生活の質」は「雇用や生活の安定」「所得の平等性」といった内容。「市民の権利」には「環境への意識」「宗教的自由」「性の平等」などが含まれ、「原動力」には「躍動性」や「特有性」といった項目があります。総じて、「自由」「平等」「安定」「独自性」「多様性」「教育」といったことの度合いと、その国の持つ文化や経済・政治が評価されている、と考えて良さそうです。
1位 スイス
2位 日本
3位 カナダ
4位 ドイツ
5位 英国
6位 スウェーデン
7位 オーストラリア
8位 米国
9位 ノルウェー
10位 フランス
では日本のどこが評価されたのか、もう少し詳しく、主要項目別(比準の高い順番)に見てみましょう。以下は主要項目別でのランキングです。
・企業家精神(Entrepreneurship)=1位
・生活の質(Quality of Life)=13位
・市民の権利(Citizenship)=17位
・原動力(Movers)=5位
・文化的影響力(Cultural Influence)=6位
・市場開放度(Open for Business)=22位
・政治経済的影響力(Power)=7位
・冒険心(Adventure)=39位
・文化・歴史的遺産(Heritage)=10位
「企業家精神」が1位となっています。ランキングで最も比重の高いこの項目が1位ということが、総合2位という結果を導いているようです。この「企業家精神」の内実は先述の「世界とのつながり」「高学歴人口」といったことの他にも、「革新性」「資金調達のしやすさ」「高スキル労働人口」「熟練技術」「透明性のある商慣行」「整備されたインフラ環境」「整備された法的枠組み」といった、起業やビジネスのやりやすさに影響する要素が含まれています。次にランキングが高い「原動力」は、「特有性」「躍動性」といった項目を含みます。つまり、もともと日本に備わっていた高い技術力や教育の質の高さに加えて、震災から東京オリンピックへ向けてのさまざまな取り組みなどが評価されているのではないでしょうか。
コメントによると、日本は世界で最も読み書き能力が高く、技術的に発展した国であるとしています。続けて、世界第3位の経済大国で、2011年の地震・津波災害からは概ね回復しており、自動車や電子機器、鉄鋼に関して世界最大の生産国であるとされています。
・企業家精神(Entrepreneurship)=4位
・生活の質(Quality of Life)=5位
・市民の権利(Citizenship)=3位
・原動力(Movers)=25位
・文化的影響力(Cultural Influence)=9位
・市場開放度(Open for Business)=2位
・政治経済的影響力(Power)=14位
・冒険心(Adventure)=17位
・文化・歴史的遺産(Heritage)=27位
「企業家精神」「生活の質」「市民の権利」「文化的影響力」「市場開放度」がいずれもトップ10に入っています。分析によるとスイスは失業率が低く、法人税率を低く設定することで金融サービスが高度に発展しており、またハイテク製造業にも高い技術力のある労働者が集まっているとされています。国際的な都市チューリッヒは多様性に富んでおり、海外の事業者や非居住者なども事業を行うことができるとのこと。
考えてみれば、音楽を持ち歩けるようにしたのはSONYのウォークマンでした。ケータイとカメラを一緒にしたのも、「iモード」でスマホの道筋を示したのも日本です。それがなければ現代のAndroid、やiPhoneは別の形だったかも知れません。コンピュータを今では主流のノートパソコンのサイズまで縮めたのは東芝です。家庭用ゲーム機を生み出したのも、また、世界中で遊ばれているポケモンも日本の発想です。アニメや漫画の文化に触れると手に負えなくなります。こういった日本が生み出した技術、アイデア、作品で世界を変えたものは枚挙に暇がありません。
ここで大事なことは、この内面的満足を保ちつつ、ガラパゴス化しないうちに外の世界を見て協調する、もしくは外の世界とコミュニケーションを取り、共に進化することではないでしょうか。このために、自分たちが楽しいと思うことを、しっかりと言語化して外に発信することが、私たちに求められているように思えます。
「世界最高の国」ランキング
このランキングでは調査が可能な世界80の国や地域を対象とし、65の要素をもとに9つの主要項目を割り出し、その主要項目にそれぞれ比重を与えて総合ランキングを出しています。9つの主要項目(カッコ内は原語表記)は比重の高い順に以下の通りです(パーセント表記は比重)。・企業家精神(Entrepreneurship)17.87%
・生活の質(Quality of Life)16.77%
・市民の権利(Citizenship)15.88%
・原動力(Movers)14.36%
・文化的影響力(Cultural Influence)12.96%
・市場開放度(Open for Business)11.08%
・政治経済的影響力(Power)7.95%
・冒険心(Adventure)2.00%
・文化・歴史的遺産(Heritage)1.13%
主要項目をみるとやや漠然としています。内実をもう少し詳しく見てみましょう。もっとも比率の高い「企業家精神(Entrepreneurship)」には、「世界とのつながり」「高学歴人口」などが含まれています。次に比率が高い「生活の質」は「雇用や生活の安定」「所得の平等性」といった内容。「市民の権利」には「環境への意識」「宗教的自由」「性の平等」などが含まれ、「原動力」には「躍動性」や「特有性」といった項目があります。総じて、「自由」「平等」「安定」「独自性」「多様性」「教育」といったことの度合いと、その国の持つ文化や経済・政治が評価されている、と考えて良さそうです。
「最高の国」トップ10、日本は2位という結果に
2019年でのトップ10は以下の通りです。日本は昨年の5位から、昨年2位のカナダ、3位のドイツ、4位の英国を抜いて2019年は2位となっています。1位 スイス
2位 日本
3位 カナダ
4位 ドイツ
5位 英国
6位 スウェーデン
7位 オーストラリア
8位 米国
9位 ノルウェー
10位 フランス
では日本のどこが評価されたのか、もう少し詳しく、主要項目別(比準の高い順番)に見てみましょう。以下は主要項目別でのランキングです。
・企業家精神(Entrepreneurship)=1位
・生活の質(Quality of Life)=13位
・市民の権利(Citizenship)=17位
・原動力(Movers)=5位
・文化的影響力(Cultural Influence)=6位
・市場開放度(Open for Business)=22位
・政治経済的影響力(Power)=7位
・冒険心(Adventure)=39位
・文化・歴史的遺産(Heritage)=10位
「企業家精神」が1位となっています。ランキングで最も比重の高いこの項目が1位ということが、総合2位という結果を導いているようです。この「企業家精神」の内実は先述の「世界とのつながり」「高学歴人口」といったことの他にも、「革新性」「資金調達のしやすさ」「高スキル労働人口」「熟練技術」「透明性のある商慣行」「整備されたインフラ環境」「整備された法的枠組み」といった、起業やビジネスのやりやすさに影響する要素が含まれています。次にランキングが高い「原動力」は、「特有性」「躍動性」といった項目を含みます。つまり、もともと日本に備わっていた高い技術力や教育の質の高さに加えて、震災から東京オリンピックへ向けてのさまざまな取り組みなどが評価されているのではないでしょうか。
コメントによると、日本は世界で最も読み書き能力が高く、技術的に発展した国であるとしています。続けて、世界第3位の経済大国で、2011年の地震・津波災害からは概ね回復しており、自動車や電子機器、鉄鋼に関して世界最大の生産国であるとされています。
1位のスイスは4年連続
日本は2016年調査では7位、その後、2017年、2018年で5位、2019年で2位と着実に順位を挙げてきました。その一方で、1位のスイスは2016年以降ずっと1位です。主要な項目のランキングを見てみましょう。・企業家精神(Entrepreneurship)=4位
・生活の質(Quality of Life)=5位
・市民の権利(Citizenship)=3位
・原動力(Movers)=25位
・文化的影響力(Cultural Influence)=9位
・市場開放度(Open for Business)=2位
・政治経済的影響力(Power)=14位
・冒険心(Adventure)=17位
・文化・歴史的遺産(Heritage)=27位
「企業家精神」「生活の質」「市民の権利」「文化的影響力」「市場開放度」がいずれもトップ10に入っています。分析によるとスイスは失業率が低く、法人税率を低く設定することで金融サービスが高度に発展しており、またハイテク製造業にも高い技術力のある労働者が集まっているとされています。国際的な都市チューリッヒは多様性に富んでおり、海外の事業者や非居住者なども事業を行うことができるとのこと。
日本の残念なポイント「自虐性」
さて、日本の「世界最高の国」ランキング2位という結果を受けて、同誌の2019年1月23日付けの記事では日本の弱点についても触れられています。その分析によると「日本国民は自分の国を他の国々よりもはるかに否定的で悲観的に見ている」とのこと。続けて「日本国民は、自国は他の国々が思うよりも生産性が低く、安定性に欠け、文化的にも重要ではないと思っているようである」と述べられています。また、日本は1990年代初頭までの大きく成長した時期に比べれば、かなり落ちこんでいることも事実であると示したのち、「現在でも(90年代までの急成長時の遺産により)世界中の市民が日本を技術革新と企業家精神の首都とみなしているのだから、日本人は自信を持ち、もっとアピールするべき」といったことが示されています。考えてみれば、音楽を持ち歩けるようにしたのはSONYのウォークマンでした。ケータイとカメラを一緒にしたのも、「iモード」でスマホの道筋を示したのも日本です。それがなければ現代のAndroid、やiPhoneは別の形だったかも知れません。コンピュータを今では主流のノートパソコンのサイズまで縮めたのは東芝です。家庭用ゲーム機を生み出したのも、また、世界中で遊ばれているポケモンも日本の発想です。アニメや漫画の文化に触れると手に負えなくなります。こういった日本が生み出した技術、アイデア、作品で世界を変えたものは枚挙に暇がありません。
日本人は内向的だから面白い
「音楽を一人でどこでも好きに聞ける装置を作ってみよう」「バッグに入ってどこでも使える自分専用のPCがあったら便利」「ゲームもポータブルゲーム機でどこでもやれたらもっと楽しいはず」といったように、より小さく、より自分好みに楽しむ、という感覚が日本人の中では強いように思います。また同時に、外国から入ってくる文化をどんどん吸収し、融合して自分たちの居心地の良いように改変するのも日本人の得意とするところです。つまり、私たちは対外的なアピールよりも、内向的満足を重視する傾向が強いと言えるかも知れません。また、これがガラパゴス化を引き起こすのではないでしょうか。内向的満足は、同じ価値観を持つ人々にしか浸透しないからです。しかしもちろん、内向的満足への欲求が、結果的に新たな面白い発想を生み出していることは、先に示した例の通りです。ここで大事なことは、この内面的満足を保ちつつ、ガラパゴス化しないうちに外の世界を見て協調する、もしくは外の世界とコミュニケーションを取り、共に進化することではないでしょうか。このために、自分たちが楽しいと思うことを、しっかりと言語化して外に発信することが、私たちに求められているように思えます。
<参考サイト>
・Overall Best Countries Ranking | U.S.News & World Report
https://www.usnews.com/news/best-countries/overall-rankings
・Overview of Japan | U.S.News & World Report
https://www.usnews.com/news/best-countries/japan
・Japan's Lessons on Branding a Country | U.S.News & World Report
https://www.usnews.com/news/best-countries/articles/2019-01-23/the-lessons-japan-provides-on-how-countries-should-brand-themselves
・Overall Best Countries Ranking | U.S.News & World Report
https://www.usnews.com/news/best-countries/overall-rankings
・Overview of Japan | U.S.News & World Report
https://www.usnews.com/news/best-countries/japan
・Japan's Lessons on Branding a Country | U.S.News & World Report
https://www.usnews.com/news/best-countries/articles/2019-01-23/the-lessons-japan-provides-on-how-countries-should-brand-themselves
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
なぜモンゴルがあれほど大きな帝国を築くことができたのか。小さな部族出身のチンギス・ハーンは遊牧民の部族長たちに推されて、1206年にモンゴル帝国を建国する。その理由としていえるのは、チンギス・ハーンの圧倒的なカリス...
収録日:2022/10/05
追加日:2023/01/07