社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.09.21

平成30年間で伸びた/廃れた業界とは?

 平成の30年間でさまざまな業界で変化が起きました。帝国データバンクの資料によると、製造業や卸売業が縮小した反面、IT産業を含むサービス業が大きく伸びているとのことです。また、こういった消費の変化の大枠を捉えて、「モノ消費からコト消費へ」ということがよく言われています。つまり、所有することから体験することに人はお金を使うようになったということのようです。では実際にどういう業界が伸び、どういう業界が廃れたのでしょうか、詳しく見てみましょう。

百貨店は厳しい状況

 「百貨店(デパートメントストア)」は1904年に三越呉服店をはじめてから1990年の時点で231社になりました。その後、2019年7月時点では91社です。百貨店は主に服飾ブランドを扱ってきました。百貨店はお金に余裕ができたとき、高いものを買うことで気分を満足させてくれる場所だったかもしれません。翻って現代の私たちは、百貨店に並んでいるものと同じ商品をEC市場でより安く購入することができます。また若い人は駅ビルのセレクトショップの方がより気軽に買いやすいでしょう。さらにファストファッションの質もかなり良くなっており、紳士服も量販店で事足ります。

 無理して高いブランド品を買うことや所有することの喜びよりも、ほどほどに質の良いものを、より安価に手に入れようという意識の変化があるかもしれません。今は安いものを買うことは恥ずかしいことではなくなりました。むしろ、いいものを安く買えることの方が、一つの体験としての価値があるとも言えるでしょう。

伸びるソフトウェア業

 ソフトウェア業は1990年には5052社でしたが、2019年7月時点では22645社となっています。平成の30年でおよそ4倍以上の伸びです。このことについてヤフーの記事では「今後もビッグデータやAI(人工知能)など先端技術の開発によりIT産業の躍進は続くが、それにより規模縮小を余儀なくされる業界も増えてくるだろう」と分析しています。競争の激化によりIT産業の中での淘汰が生まれてくるということでしょうか。

 PCが一般に普及し始めたのはWindows95が発売された1995年頃からです。さらに2000年をすぎるとインターネットが本格的に一般に利用されるようになります。この頃「楽天」や「アマゾンジャパン」が誕生します。この後、インターネットを流れる情報は格段に増え、スマートフォンが普及し、クラウドサービスが登場します。いまではスマートフォンのアプリを使えば、音楽も映画もパッケージ商品を買ったりレンタルしたりしなくても、いつでもどこでも聴いたり観たりすることができます。インターネットという情報インフラとPCやスマートフォンの普及によって、ソフトウェアの可能性は大きく広がり続けています。

ここ数年で伸びている業界トップは「人材派遣」

 もう少し広く見てみましょう。おもに企業の2018年3月決算期をもとに業界別ランキングを出しているサイトがありました。この情報によると、2018年までの3年間の増加率が高いのは「人材派遣」「インターネット」「寿司」「ネット広告」「塗料」という順になっています。

 人材派遣は2012年ころより状況が好転しているとのこと。現在はさまざまな業界で人手不足が進んでいるという背景も影響しているようです。「インターネット」に関しては、「楽天」「リクルート」「ヤフー」という3強の構図ができているようです。「寿司」業界もシェアの奪い合いはかなり熾烈になりつつあります。ここから先は海外進出でどううまく着地できるかということが大きなポイントのようです。

 ただ国内の状況を見ると、今後日本の人口は減少します。つまり、国内の市場規模は小さくなっていきます。こうなると、必然的に海外にどう進出できるかということは考えざるを得ないでしょう。この時、人材派遣はどのような形になりうるか、IT関連企業はGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)とどう渡り合うのかといったところがキーポイントになってくるのかもしれません。

<参考サイト>
・30年間で「増えた業界」と「減った業界」 やはり小売りは先細りか|Yahooニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190820-00010000-teikokudb-bus_all
・業界別 増加率ランキング|業界動向 SAECH.COM
https://gyokai-search.com/5-nobi.html
・業界ランキング(2017-18年)|業界動向 SAECH.COM
https://gyokai-search.com/2nd-ranking.htm
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?

内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か

アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
2

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観

岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
3

島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本

島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本

編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは

ある国について、あるいはその社会についての詳細な実状は、なかなか外側からではわからないところがあります。やはり、その国についてよくよく知るためには、そこに住んでみるのがいちばんでしょう。さらにいえば、たんに住む...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/20
4

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授