テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.01.11

日本は後進国?キャッシュレス化が進む海外

 消費増税後のポイント還元事業によって、日本でもじわじわと広がっているキャッシュレス化。お隣の中国ではその比較にならない勢いでキャッシュレス化が進んでいるとよく報道されています。中国をはじめ世界の違いに焦点を当てて、日本のキャッシュレス化の動向を探ります。

日本とドイツの意外な共通点

 2019年はキャッシュレス元年とも言われ、日本でもキャッシュレス化が拡大しつつあります。とはいえ、まだまだキャッシュレス後進国と言われている日本。その理由は、世界の普及率と比較すれば一目瞭然です。

 経済産業省によると、韓国が89.1パーセント、中国が60パーセント、カナダが55.4パーセントと続き、アメリカが45パーセント、インドが38.4パーセントという数字が並ぶ中で、なんと日本は18.4パーセント。これは2015年時点のデータなので、現状を正確に知ることはできませんが、日本のキャッシュレス化が非常に遅れていることがよくわかります。

 ちなみにドイツは14.9パーセントで日本よりもさらに低い普及率でした。先進国の中で、日本とドイツだけ際立って現金主義が強いようです。

QRコード決済は海外では使えない?

 ところで日本で普及しているQRコードを読み取るスマホ決済は海外ではそれほどメジャーではないことをご存知でしたか。そのため、残念なことに海外ではほとんど使えません。

 日本のキャッシュレス市場で最大シェアを誇るPayPayも海外のお店ではほとんど利用できません。ただし、PayPayは、中国のAlipayと提携し、日本国内でAlipayが使えるように申請しているPayPay加盟店では、AlipayのQRコード決済が可能になりました。

 中国には二大QRコード決済サービスがあり、そのうちの一つがAlipayです。そしてもう一つがWechat Payです。

海外でメジャーなキャッシュレス決済

 キャッシュレス決済にはQRコード決済の他にコンタクトレス決済があります。コンタクトレス決済は分かりやすい例がSuicaやPASMOなどの交通系ICカード。つまり、専用リーダーにかざすだけで完了する決済方法です。

 海外ではこのコンタクトレス決済が主流です。ただし、日本で使われているコンタクトレス決済はほとんど海外では使うことができません。なぜなら、タッチ決済の規格が異なるからです。日本では「Felica」という規格が主流なのに対して、海外は「NFC Pay」が広く普及しています。

 海外でメジャーなキャッシュレス決済の方法は、VisaやMastercardなど電波アイコン(非接触対応マーク)がついているクレジットカードによるタッチ決済です。日本でもちょっとずつ、この電波アイコンのあるクレジットカードによるタッチ決済が広がってきています。

 同じキャッシュレスとはいえ、QRコード決済にしてもコンタクトレス決済にしても、日本と海外では大きな違いがあることが分かりましたね。今後、この溝をどのように埋めていくかが課題になっています。キャッシュレス後進国だからこその強みを活かして、日本と世界の消費者の利便性を追求した、日本ならではのキャッシュレス決済のサービスを展開していってほしいものです。

<参考サイト>
・【図解・経済】各国のキャッシュレス決済比率(2019年8月):時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_kinyushoken20190816j-05-w380
・PayPay「海外で日本のQRコード決済は使える?インバウンド対策にも役立つキャッシュレス決済!」
https://paypay.ne.jp/store-media/qr/0020_qr_overseas/
・「海外との違いを知ろう!国内でのタッチ決済の今と未来」
https://squareup.com/jp/ja/townsquare/what-is-nfc-payment/japan-trends
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
2

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
3

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
4

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
5

百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために

百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために

大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために

硫黄島の戦いでの奇跡的な物語を深く探究したノンフィクション『大統領に告ぐ』。著者の門田隆将氏は、「読者の皆さんには、その場に身を置いて読んでほしい」と語る。硫黄島の洞窟の中で、自分が死ぬ意味を考えていた日本人将...
収録日:2025/07/09
追加日:2025/08/15
門田隆将
作家 ジャーナリスト