社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
なぜ企業は店舗の急拡大で失敗するのか?
ハンバーガー屋、牛丼屋、ファミリーレストラン。日々、多くの飲食チェーンができるだけ店舗を増やそうと、しのぎを削っています。当然ながら、店舗を拡大するのは、事業を大きくし、利益を増やすためです。
けれども、店舗の拡大はそう簡単なことではありません。「いきなり!ステーキ」などの具体的な失敗例を参考に、なぜ企業は店舗の急拡大で失敗するのかに焦点を当てて、飲食チェーンの失敗の本質を検証します。
「いきなり!ステーキ」は、2013年に1号店を出店してからステーキブームを牽引していました。商機を逃したくなかったのか、拡大路線を突き進み、結果的には経営は大きく悪化しました。
カニバリゼーションを起こしてしまったということは、他社と競争できなくなってしまったということです。その理由には「急激な店舗拡大」、それから「値上げによる高価格化」が挙げられます。
他社との差別化ができなくなると、どういう結果を招くのか。一言で言うと、競争力の低下です。競争力が低下すると、飲食業の基本であるQSC(クオリティー、サービス、クリンリネス)が揺らぎます。競争の輪から外れると、このような弊害があるのです。
ちなみに、カニバリゼーションは絶対的に悪いというわけではありません。あえて競合企業のカニバリゼーションを創出することで、シェアを拡大するマーケティング戦略もあります。
「いきなり!ステーキ」の置かれていたシチュエーションとは異なり、牛丼業界には吉野家・松屋・すき家という最強の御三家が君臨しています。大手は膨大な経営ノウハウを蓄積しており、この業界で戦い、生き残るためには綿密な戦略が欠かせません。東京チカラめしには何が足りなかったのか。縮小を余儀なくされた理由は何か。
失敗の理由は、店舗拡大を優先し、人材の育成がおろそかになったこと。人材の育成がおろそかになると、やはり飲食業の基本であるQSCが低下します。これが急拡大する多くのチェーン店が共通して陥る失敗です。
飲食業に限らず、あらゆるサービス、社会も国も、人材こそが宝です。教育に軽視すれば、必ず大きなツケを払わされることになります。
けれども、店舗の拡大はそう簡単なことではありません。「いきなり!ステーキ」などの具体的な失敗例を参考に、なぜ企業は店舗の急拡大で失敗するのかに焦点を当てて、飲食チェーンの失敗の本質を検証します。
ブームの牽引者がなぜ? 大赤字で大量閉店
株式会社ペッパーフードサービスは、「いきなり!ステーキ」の不振が原因で、2019年11月、従来20億円の黒字を見込んでいた通期の業績予想を7億3100万円の赤字に下方修正しました。さらに、2019年度の出店計画を210店舗から115店舗へ縮小し、44店舗の退店を発表。「いきなり!ステーキ」は、2013年に1号店を出店してからステーキブームを牽引していました。商機を逃したくなかったのか、拡大路線を突き進み、結果的には経営は大きく悪化しました。
競争の輪から外れる悪夢
「いきなり!ステーキ」の業績不振について、運営会社のペッパーフードサービスは、「カニバリゼーション(自社競合)」が原因だとしています。これは「共食い」という意味です。カニバリゼーションを起こしてしまったということは、他社と競争できなくなってしまったということです。その理由には「急激な店舗拡大」、それから「値上げによる高価格化」が挙げられます。
他社との差別化ができなくなると、どういう結果を招くのか。一言で言うと、競争力の低下です。競争力が低下すると、飲食業の基本であるQSC(クオリティー、サービス、クリンリネス)が揺らぎます。競争の輪から外れると、このような弊害があるのです。
ちなみに、カニバリゼーションは絶対的に悪いというわけではありません。あえて競合企業のカニバリゼーションを創出することで、シェアを拡大するマーケティング戦略もあります。
あの牛丼チェーン店がなぜ
別の例も見てみましょう。2010年代前半に現れた「東京チカラめし」。牛丼業界に彗星の如く現れ、ハイペースの出店を推し進めました。しかし、全盛期は100店舗を超えていたにもかかわらず、閉店が相次ぎ、現在はたったの7店舗にまで落ち込みました。「いきなり!ステーキ」の置かれていたシチュエーションとは異なり、牛丼業界には吉野家・松屋・すき家という最強の御三家が君臨しています。大手は膨大な経営ノウハウを蓄積しており、この業界で戦い、生き残るためには綿密な戦略が欠かせません。東京チカラめしには何が足りなかったのか。縮小を余儀なくされた理由は何か。
失敗の理由は、店舗拡大を優先し、人材の育成がおろそかになったこと。人材の育成がおろそかになると、やはり飲食業の基本であるQSCが低下します。これが急拡大する多くのチェーン店が共通して陥る失敗です。
飲食業に限らず、あらゆるサービス、社会も国も、人材こそが宝です。教育に軽視すれば、必ず大きなツケを払わされることになります。
<参考サイト>
・いきなり!ステーキ、いきなり拡大し失速 │日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/031900178/
・戦う相手が強すぎて衰退した東京チカラめし│ITmedia ビジネスオンライン
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1804/27/news036.html
・いきなり!ステーキ、いきなり拡大し失速 │日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/031900178/
・戦う相手が強すぎて衰退した東京チカラめし│ITmedia ビジネスオンライン
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1804/27/news036.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,400本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
火箸で考える…「空」は奪う教え、「縁起」は与える教え
禅とは何か~禅と仏教の心(5)空と縁起
火箸を通して縁起を説明するのが一照師のやり方だ。囲炉裏に刺された火箸は、使い方によっては武器にも孫の手にも、さらには筆記用具にもなる。どんなものも使い手の行為と無関係ではないということだ。人間も同様で、さまざま...
収録日:2024/08/09
追加日:2025/02/10
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
かねて島田晴雄先生は「40年周期説」を述べてこられた。1865年頃は、幕末の動乱期のどん底。そこから40年を経た1905年は、日本が日露戦争に勝利した年。しかし1945年に、日本は第二次世界大戦の敗戦で再びどん底に。1985年は日...
収録日:2025/01/21
追加日:2025/02/06
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
日本人のライフコースとして「3ステージ(教育・仕事・引退)の人生」とよくいわれているが、長寿化が進み「人生100年時代」と呼ばれる現在、長くなった3つ目のステージとともに、これまでの日本的な労働慣行も見直すべき時期を...
収録日:2024/08/03
追加日:2025/02/07
文と武の両輪――仁愛の精神と厳しさでリードせよ
『孫子』を読む:行軍篇(6)信頼関係の構築
上司と部下の信頼関係はどのように築いていけばよいのか。これは、いつの時代にあっても難しい問題である。また、軍隊でも会社でも組織の大きさより、内部がいかに整っているかが、目標を達成するための最大要因でもある。鍵と...
収録日:2020/10/09
追加日:2025/02/09
印象派の画家たちによる最先端の表現方法「筆触分割」とは
印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(7)マネのトリックと印象派の表現方法
印象派の画家たちに大きな影響を与えたマネは、最後の印象派展を見届けることなくこの世を去った。マネの最後のサロン出品作となった《フォリー・ベルジェールのバー》には、よく観察するとさまざまなトリックが隠されており、...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/02/08