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DATE/ 2020.08.23

「50歳からの学び」に必要な3つの心得とは?

 中高年からの勉強や人生を説く本が数あるなか、童門冬二氏の『50歳からの勉強法』は、50歳を過ぎて転身した著者自身の生き方と重なり、だれもが実践したいと望む人生の方法を説いています。大人の学びには三つの心得がある、という童門氏。まず、そこから聞いていきましょう。

50歳からの勉強には、それまでの人生を総動員する

 三つの心得とは

(1)学びの姿勢は自由でいい
(2)教科書は世間にある
(3)孤独を覚悟せよ

 この三つです。92歳(2020年8月時点)の現役作家として毎月いくつかの雑誌に寄稿を続けている童門氏にとって、50歳はようやく「収穫」の時期に差し掛かったところ。定食コースで言えば最後のお菓子とコーヒーまで一通り味わってきたので、それまでの人生を誠実に生きていれば、種を蒔いたものが収穫できることがたくさんある、と言います。

 自分では気がつかない間に育ててきた大切なものを収穫するときには、おのずとそれまでを振り返る姿勢になります。それは前半生の「総点検」と「発見」の意味合いを持つため、後半生の学びの姿勢を自在に支えてくれる、ということです。

50歳からの勉強には、それまでの人生を総動員する

 50歳までビジネスマンとして働いてきた人の場合、上司や同僚、部下や得意先との間でいろいろな人とのコミュニケーションが膨大な経験知になっています。

 これまでは素知らぬ顔をしたり、あまり深く付き合ってこなかった人や場にこそ目を向けるのが、二つ目の「教科書は世間」の意味合いです。

「50歳になったとき、20歳代で見ていたのと全く反対の見方になることもある。立ち位置の移動、観測地点の移動というものも大事にしましょう」という童門氏。そこは、柔軟に流動性を持って多様な世間と付き合い、人生の蓄積から収穫した、いわば“実”をタネとして植え直すこともできるというわけです。

老いを見据え、「孤独を覚悟」するから手に入るもの

 50歳からの人生では、見ている景色はそれほど変わらないと思うかもしれませんが、見る側の変化を計算に入れることが大事です。若い頃のように付き合いを大切にしていると、自分の望む「学び」は手に入りません。

 時間の総量が限られていることも事実ですし、それ以上に身体・精神上で敏捷さや快活さが減っていることも計算に入れる必要があるのです。

 さらに、これまでに培った学びの鉱脈を一つ選ぶことは、他の可能性を捨てることになります。他の場所の蓄積はいったんご破算にして、ゼロベースに立つ覚悟が必要です。

死ぬまで未熟、未完な「起承転転」の日々を

 人生100年時代といわれる現在、これまでの生き方を表す節目にこだわる必要はありません。東洋では孔子の志学(15歳)、而立(30歳)、不惑(40歳)、知命(50歳)、耳順(60歳)が最も有名でしたが、あくまでも理想を述べたものです。

 50歳で「天からの使命を知った」と言えた人が歴史上何人いたでしょうか。現代人は、体力もそれほど衰えない分、若い頃と変わらない未完や未熟を引きずったまま、50歳・60歳の年齢に入っています。

 また、「起承転結」というやり方も保証されていません。従来は、社会へ出る20代が「起」、力を伸ばす30代が「承」、変化の起こる40代が「転」、人生を堅固に収束させていく50代が「結」とされました。でも、今や50歳を過ぎて目の前にあるのは「転」「転」「転」、ひたすら変化です。

 「終身現役、一生勉強をモットーに、死を迎える日までこれで良しと鞘に収まることなく、まだ不足、まだ未熟と自戒しながら命の最後の一滴まで燃焼させたい」というのが、童門氏のモットー。死ぬ瞬間まで「転」というのは、決して転がりおちることではありません。自分の持つエネルギーを完全燃焼させて生きていく、という強いメッセージです。
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