社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.09.28

自由の国「アメリカ文化」の特徴とは?

 宇宙開発から経済活動まで、「20世紀はアメリカの時代だった」という言説で語られるアメリカ合衆国、現代も国際社会の中心に位置しているのはご存知の通りです。

 今や「世界のスタンダード」といっても過言ではないアメリカ文化ですが、一方で様々な問題も抱えています。その文化の特徴とはどのようなところにあるのでしょうか。日米での相違をまとめました。

「人種のサラダボウル」の国の公用語は?

 アメリカの第一の特徴としてあげられるのはやはり人種の多様性です。先住民であるネイティブ・アメリカンをはじめ、イギリスを筆頭にヨーロッパ各国から入植してきた白人種、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人種、新天地を求めた中華系やヒスパニック系など、様々な人種が世界から集まっている様相を、「人種のサラダボウル」という言葉で習った方も多いのではないでしょうか。

 同じ「アメリカ国籍」を持つ人同士であっても、バックボーンとなる生活習慣や考え方には差があるため、はっきりと自己主張をすると同時に、個性を認め合う土壌が育まれたとも言えます。「場の空気」を読むことを美徳とし、時に同調圧力に苦しむ日本との大きな違いといえるでしょう。

 そんな多民族国家ゆえ、実はアメリカに法で定められた公用語はありません。実際には9割以上の人が英語を話していますが、国が決めているわけではないのです。

自由の国は信仰も自由

 広く知られている通り、アメリカでもっとも信仰されているのはキリスト教です。国民の7割以上がクリスチャンでプロテスタントが主流ですが、カトリック、ユダヤ教やモルモン教などその他の宗派・宗教も存在しています。イスラム教徒や仏教徒も増えており、街中にモスクが見られたり、著名人が禅に傾倒していたりするのもよく耳にします。

 同時に、若者を中心に無宗教化も拡がっており、5人のうち1人は特定の信仰を持たないという統計調査も出ています。何を信仰するかも、信仰するもしないも「自由」というのは現代的かつアメリカらしいですね。

アメリカのジレンマ、銃社会

 日本人から見て最も馴染みのないアメリカ社会の特徴は、条件さえ満たせば一般市民も銃を持てることでしょう。国土の広いアメリカでは、事件が起きて警察に通報してもパトカーがすぐにはやってこられないため、命の危機を守るにはどうしても銃が必要になるそうです。また、銃を持つ権利はアメリカ人にとって政府の圧力に屈しないというシンボル的なものでもあります。

 とはいえ、無差別乱射事件が毎年のように起こっているのも事実です。その度に銃規制が議題に上りますが、大規模な改正には至っていません。

「右側通行」「左ハンドル」だけじゃない、交通ルールの違い

 日米では交通ルールも異なっています。自動車は日本と逆で右側通行、ハンドルは左ハンドルになっているのは有名ですが、踏切を渡る時にも一時停止しない、スクールバスは追い越し禁止など知っておかないと危ないルールが多々あります。

 ちなみに、飲酒運転が御法度なのは変わりません。州によっては日本以上に厳しく、車内に栓の開いたアルコール飲料がある、同乗者が飲んでいるというだけで違法になるところもあります。

風呂好きにはちょっと厳しい? 入浴事情 

 コロナ禍で世界のメディアから関心を向けられた日本文化のひとつに、家では靴を脱ぐということがありました。基本的に室内も土足である欧米からは珍しく、感染率の低さの一因ではないかと思われたようです。

 そして日本人の風呂好きはよく知られているところですが、アメリカでは浴槽に湯をはって浸かる人は多くありません。シャワーも数日に1回でじゅうぶんの人が多数派だそうです。気候の差の影響もあるのでしょうが、帰宅後だけでなく外出前にもシャワーを浴びる習慣のある日本人からするとちょっと厳しいですね。

ジャンボサイズの食べ物を残してもノープロブレム

 アメリカではいろんな場面でチップを支払う文化があります。レストランはその最たる例で、サービス料として総額の15~20%を支払います。現金でテーブルに置くほか、カード払いをすることもできます。

 何かと日米比較で話題になるのは食べ物のサイズでしょう、メニューによっては日本の倍以上の大きさものが出てくることも珍しくありません。その代わり、食べ残しの持ち帰り文化も普及しています。「もったいない」を掲げる日本でも広まって欲しいですね。

アメリカの「今」は日本の「何年後」?

 かつて「アメリカで今起きていることは数年後の日本で起きることである」という言説がしばしば語られていました。振り返ってみると、頷けるケースも少なくありません。

 現在問題になっているアメリカの人種差別は「Black Lives Matter」運動となり、その行く末に国際社会の注目を集めています。近年、日本も労働力として海外の方の移住を求めていますが、その雇用形態や環境のひどさがニュース番組に取り上げられるようになりました。相互理解を深めるでも歩み寄りあうでもない、現在のように労働力として期待するだけのスタンスでは、いずれ社会の根幹を揺るがす大きな問題に発展しかねません。アメリカで今起きていることから日本の未来を見据えていく必要があります。

<参考サイト>
・『日本とアメリカ文化はこんなに違う!中には注意が必要なものも』スマ留
https://smaryu.com/column/d/45126/
・『アメリカ文化の特徴とは?生活文化から国民性まで詳しく解説』en world
https://www.enworld.com/blog/2020/03/us-culture
・『アメリカの交通ルール』Cars Café
https://www2.jhc.jp/contents/others/car/destination/usa/rule.php

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方

編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる

この人生を生きていくうえで、「歴史」をひもとくと貴重なヒントにいくつも出会えます。では、実際にはどのように歴史をひもといていけばいいのか。

今回の編集部ラジオでは、歴史作家の中村彰彦先生がご自身の方法論...
収録日:2025/10/17
追加日:2025/11/27
2

命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ

命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク

最終話では、金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅を読み解いていく。鎌田氏は、この2つの曼荼羅は「粒子性」と「波動性」だという。そして空海は、この2つの曼荼羅や『秘蔵宝鑰』の冒頭の詩を通じて「命は光なのだ」ということを明示し...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/27
3

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは

歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本

「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
4

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール

内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール

日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
5

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン

熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法

「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授