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DATE/ 2015.07.09

ポジティブ思考がやる気を削ぐ?

 あらゆるところで推奨されるポジティブ思考。免疫力を高めたり、仕事によい影響をあたえることなど、実感している人も多いのではないだろうか。

 しかし、どんなにモノゴトを明るくとらえ、前向きに取り組んだとしても、行動の質が大きく変わることはない。

 ポジティブ思考の効果を20年にわたって研究してきたガブリエル・エッティンゲン博士は、こうした楽観主義の陥りやすい罠を指摘する。

 エッティンゲン博士の実験によると、ダイエットを目的にした人が「痩せた自分を想像する」というようなポジティブ思考をすると、実際に痩せるための行動に移らなくなったという。

 ポジティブ思考を「楽観的に夢を描く」というイメージでとらえると、目標達成のために具体的な行動を起こしたり、戦略的に方法を考えたりする意欲を削いでしまうという。

 つまり、ポジティブに理想を思い描くとそのイメージに満足し、具体的な行動に結びつかないことが多いのだ。これが、ポジティブ思考のネガティブな側面になる。

 いつも楽観的に理想を思い描いているだけのポジティブ思考によると、夢は夢のままで、人生も変えられない。ではどうしたらよいのか?

 エッティンゲン博士が提唱するのは、夢や理想を実現するためのイメージングに、その「障害」を考えるプロセスを取り入れた「WOOP」という方法である。

WOOP実践法

1.願望=Wish
・1~2分かけて自分の望んでいることをイメージする

2.結果=Outcome
・望んだ結果、目標を達成した時に得られる「ベストな事柄」をイメージする

3.障害=Obstacle
・目標や望みが叶うまでの、「障害」や「自分の弱点」をイメージする
・「障害」は家族や会社などの環境ではなく、できるだけ自分自身のことで

4.計画=Plan
・障害を克服するための計画を立てる
・想定するネガティブなケースへの対策を考える


 最近の自己啓発本などは、ポジティブ思考を推し進めるあまり、ネガティブな概念を「悪」として退ける傾向にある。

 障害となる事象や自分の弱点はどうしてもネガティブな概念となる。

 だからといってこれをネガティブ思考をして退けるのではなく、あくまでの目標や願いを叶えるためのプロセスとして考えることが重要なのである。

 むやみなポジティブ思考で安心せず、WOOPを実践し、自分の理想の一歩を踏み出してほしい。

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