テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.11.27

なぜ・いつから競馬は若者に人気になった?

幅広くなった競馬のファン層

 「競馬」といえば「おじさんの趣味」とか「身を滅ぼすギャンブル」というようなイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし近年は若者や女性にも人気が出ており、楽しみ方も多種多様になっているようです。

 ITツール比較サイトのSTRATEが全国の20代男女400人に行った「競馬に関するアンケート」によると、全体の約40%が競馬に興味があり、さらに20代女性の約15%が実際に馬券を買ったことがあると回答しています。20代女性の6~7人に一人は馬券の購入経験があるということになります。

 馬券を買う以外にも、馬の美しさやかわいらしさに魅力を感じ、写真のSNS投稿を楽しむ若者も増えています。SNSを駆使するあたりは、いかにも最近の若者らしいですよね。また、馬に騎乗するジョッキーも厳しい訓練や減量を日々行っているアスリートであり、野球選手やサッカー選手のように憧れてファンになる若者が多くいます。

 競馬を運営する日本中央競馬会(JRA)の発表によると、馬券売上額の参考値になる売得金額は1997年をピークに減少してきましたが、2012年から再び上昇傾向にあります。これは、JRAが若者に訴求するプロモーションを行った影響も大きいでしょう。2012年にはアイドルユニット・AKB48の20歳以上のメンバーがAKB競馬部を結成し、CM出演や予想対決をして注目を集めました。また、今年2月にリリースされたアプリゲーム・ウマ娘をきっかけとして競馬に興味を持った若者も多いです。

現在の競馬場はギャンブルだけの場ではない

 それでは、「競馬場」といえばどのようなイメージをお持ちでしょうか。競馬新聞片手のおじさんたちがカップ酒片手に野次を飛ばす鉄火場……などを思い浮かべる方も多いでしょう。日本の競馬にはJRAが運営する中央競馬と地方自治体が運営する地方競馬があり、比較的規模が小さい地方競馬では、現在もそのような光景が見られる競馬場もあります。

 しかし国営の中央競馬の競馬場は規模が大きく、なかでも中心的存在の東京競馬場はラグジュアリーで清潔感のある建物です。施設内には100軒以上の飲食店があり、和食洋食からファストフードやスイーツまでさまざまなグルメが楽しめます。また、コースの内側にあたる内馬場には子ども向けの遊具広場があるほか、キャラクターショーや乗馬体験が開催されることもあり、子どもも存分に遊べます。広い芝生があるので、お弁当を用意してピクニック気分を味わうことも。入場料200円を払えば、家族連れで1日楽しめるのです。

 中央競馬は基本的に昼間に開催されますが、地方競馬ではナイター開催をするところもあります。都内の大井競馬場はこれを“大人の夜のプレイスポット”と位置づけ、場内をライトアップして中央競馬にはない魅力を演出しています。グルメフェアなども開催されるので、ナイター競馬をデートや女子会に利用する競馬ファンも多いです。馬券は100円から買えるので、のめり込みすぎなければあまりお金をかけずに楽しめるエンターテインメントなのです。

競馬人口は増え続けている

 コロナ禍の緊急事態宣言により、昨年は中央も地方も無観客開催や入場人数制限を行いました。JRAが発表したデータによると、昨年の中央開催競馬場入場人数は前年の6分の1ほどまで減っています。しかし一方で、昨年の売得金額は前年より増えており、総参加人数もやや減ったもののほとんど変わっていません。これは、ネットの馬券購入システムが普及した結果といえるでしょう。

 売得金額が上昇傾向に転じた2012年の前年である2011年には、従来の銀行登録するタイプのネット投票システムであるA-PAT・即PATに加え、クレジットカードを登録すればPCかスマホで馬券が購入できる新しいネット投票システムのJRAダイレクトが導入されました。より手軽に馬券が購入できるようになったことも、馬券売上上昇の要因のひとつと考えられるでしょう。売得金額のピークが1997年の約4兆円だったのに対し、昨年の売得金額は約3兆円にまで回復しています。

 そして競馬総参加人数のピークは、実は2019年の約1億8千万人でごく最近。開催競馬場入場人数は緩やかに減少しているのに対して総参加人数が増えている点からも、ネット投票が広く利用されていることがわかります。

 競馬人気が若者まで広がっている理由は、カジュアルに馬券を楽しめるシステムや、効果的なプロモーション、ギャンブル以外も楽しめる競馬場などをつくりあげた運営側の企業努力によるものが大きいのではないでしょうか。

<参考サイト>
・JRA JRAの概要 成長推移
https://jra.jp/company/about/outline/growth/
・JRA JRAの概要 JRAのあゆみ
https://jra.jp/company/about/outline/history/
・JRA 電話・インターネット投票 はじめての方へ
https://www.jra.go.jp/dento/welcome/
・STRATE 20代女性の15%が馬券を買ったことがあり、4割強が競馬に興味ありと回答【(20代対象)競馬に関するアンケート】
https://strate.biz/news/horse-racing-20/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

契機は白村江の戦い…非常時対応の中央集権国家と防人の歌

契機は白村江の戦い…非常時対応の中央集権国家と防人の歌

「集権と分権」から考える日本の核心(2)非常時対応の中央集権と東アジア情勢

律令国家は中国の先進性に倣おうと始まったといわれるが、実際はどうだろうか。当時の日本は白村江の戦いの後、唐と新羅が日本に攻め込むのではないかという危機感から「防人」という徴兵制をつくった。徴兵には戸籍を充実させ...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/08/25
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
2

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機

「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機

混迷を極める現代社会にあって、「学び」の意義はどこにあるのだろうか。次世代にどのような望みをわれわれが与えることができるのか。社会全体の運営を、いかに正しい知識と方針で進めていけるのか。一人ひとりの人生において...
収録日:2025/06/19
追加日:2025/08/13
納富信留
東京大学大学院人文社会系研究科教授
3

カーボンニュートラル達成へ、エネルギー政策の変革は必須

カーボンニュートラル達成へ、エネルギー政策の変革は必須

日本のエネルギー政策大転換は可能か?(3)エネルギー政策大転換への提言

洋上や太陽光を活用した発電の素地がありながらその普及が遅れている日本。その遅れにはどのような要因があるのだろうか。最終話では、送電網の強化など喫緊の課題を取り上げるとともに、エネルギー政策を根本的に変換させる必...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/08/24
鈴木達治郎
長崎大学客員教授 NPO法人「ピースデポ」代表
4

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」

トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性

トランプ大統領は同盟国の役割を軽視し、むしろ「もっと使うべき手段だ」と考えているようである。そのようななかで、ヨーロッパ諸国も大きく軍事費を増やし、「負担のシフト」ともいうべき事態が起きている。そのなかでアジア...
収録日:2025/06/23
追加日:2025/08/21
佐橋亮
東京大学東洋文化研究所教授
5

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

ウェルビーイングの危機へ…夜型による若者の幸福度の低下

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(4)社会的時差ボケとメンタルヘルス

社会的時差ボケは、特に若年層にその影響が大きい。それはメンタルヘルスの悪化にもつながり、彼らの幸福度を低下させるため、ウェルビーイングの危機ともいうべき事態を招くことになる。ではどうすればいいのか。欧米で注目さ...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/23
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長