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DATE/ 2015.08.12

ブームの「熟成肉」って一体何なの?を解説

 霜降り肉に劣らぬ、旨みと柔らかさ。もともとが赤身肉なので脂質が少なく、低カロリでヘルシーであることからダイエットにも効果的な選択をするなら「熟成肉」である。

 味覚を満足させながら、キレイにやせるのに欠かせないタンパク質、L‐カルニチン、鉄分を多く摂ることができる。

 数年前から話題になっている「熟成肉」ではあるが、少し誤解があるようだ。本来は、赤身肉を対象に、温度や湿度、風力をコントロールしながら乾燥熟成で旨味を引き出すドライエージングビーフ(DAB)のことであった。

 ニューヨークやハワイの人気のステーキ店「ウルフギャングステーキハウス」や「BLTステーキ」が日本に出店することで、その旨さの秘密として語られるようになったグルメ・キーワードといってもよいだろう。

 そんな「熟成肉」ブームが続くなか、最近のTWITTERで「大ブームの「熟成肉」で食中毒」と、ギョッとする記事が数多くリツイートされていたので、読んでみた。

 実のところ食中毒がおきたのではなく、食中毒の可能性について書かれた記事であったのだが、「一定期間寝かせて旨味を“発酵”させる熟生肉は大ブーム」というフレーズに少なからず仰天した。

 微妙な違いではあるのだが、「発酵」は外からの微生物の酵素で分解することで、「熟成」は、一定の温度を保つ冷蔵庫で肉を「寝かせる」ことであり、肉が持っている酵素によってたんぱく質が分解され、アミノ酸へと変化することをねらう。

 これは、近江牛を扱う会社のサイトにあった「熟成肉」の定義の曖昧さを指摘した記事にも説明がある。

 いろいろと調べてみると、ドライエージングの技法についても青カビであったり白カビであったりと方法が違っているところもあり、熟成にもウェットとドライの2つの方法があり、これは混乱せざるを得ないという結論にいたる。

 モノには言葉からの想像とは乖離した実体がある。「熟成」とくれば旨そうな雰囲気を醸すことになり、しかも方法としての幅の広さを感じさせる。冷蔵庫にただ入れておいても熟成なのである。

 なので、本来のドライエージングの技法ではない「熟成肉」でがっかりしないためにも、知るべきことは多い。

 欧米の有名店や国内の食肉店が長年の研究と努力で仕上げたドライエージングの技法は、肉の選定から温度や湿度、風力をコントロールしながら乾燥熟成で旨味を引き出すもので、単に冷蔵庫で寝かせた肉を同列に並べて良いものではない。

 今後は、熟成肉とひとくくりにせず、「熟成肉=ドライエージング」とするか、ドライエージングビーフ(DAB)として知るべきではないか。

 熟成肉をうたうレストランや食材の説明をチェックして、満足できる肉食ライフを送りたい。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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