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世界の国旗、シンボルでわかる国家の宗教
星形・円形・三日月形・十字形……。あなたは何を思い浮かべるでしょうか。実は、これらの形は、世界の国旗の代表的なシンボル図形です。
世界には、国連加盟国だけでも193カ国(2022年5月現在)があります。そして、どの国にも固有の国旗、すなわち「国家の象徴として制定された旗」をもっています。国のシンボルである国旗の、さらにシンボルとなる図形には、さまざまな願いや想いが込められています。
今回は、世界の国旗の中から、星形・三日月形・十字形のシンボルに注目し、国家の宗教と関わりの深い国旗をめぐってみたいと思います。
なお、今回のテーマは「国旗×シンボル=国家の宗教」ですが、色も国旗の重要な要素です。そのため、今回のテーマである国家の宗教に関わる国旗の色については、適宜注釈を加えていきたいと思います。
「新月旗」とは、オスマン朝を象徴する色である赤地に、白の新月(三日月)と星を染め抜いた旗です。そして、「新月旗」の三日月(新月)と星のシンボルは、イスラム教国(イスラム教徒が多い国)の国旗の手本ともなりました。
チュニジア共和国・アゼルバイジャン共和国・マレーシアなどの国旗も、三日月形×星形のシンボルです。
さらに、イスラム教では緑が神聖な色として好まれているため、イスラム教国では、三日月形×星形のシンボルと緑色を使った国旗が好まれるようになりました。
典型例ともいえる国旗が、緑地に白の新月(三日月)と星を染め抜いた、パキスタン‐イスラム共和国の国旗です。ただし、旗竿側(左側)は白地となっており他の宗教を信ずる国民を、さらに月は発展、星は光と知識、白と緑は平和と繁栄を表しているとされています。
他にも、トルクメニスタン共和国やアルジェリア民主人民共和国などの国旗も、三日月形×星形のシンボルと緑が使われています。
ただし、シンガポール共和国の国旗のように、三日月形×星形のシンボルが描かれていても、イスラム教国ではない国もあります。
また、イスラム教国でもオスマン帝国と戦った歴史を持つ国などは、三日月形×星形のシンボルを使わずに、黒・赤・白・緑のアラブやイスラムを象徴する4色を使った国旗を制定している国もあります。
十字形国旗の最も古い基本形とされる国旗は、赤地に白の「スカンジナビア十字」(十字の縦軸が中心点からやや旗竿側に寄っている)が染め抜かれたデンマーク王国の国旗といわれています。
デンマーク王国の国旗には、1219年に異教徒の国であったエストニアとの戦いの際、天から舞い降り勝利に力を与えたという伝説があります。そして、フリージア語のDan(赤)とbroge(色つき布)の合成語である「ダンネブログ旗」とも呼ばれ、周辺諸国を含め、キリスト教国で広く親しまれています。
ところで、十字形国旗の魅力の一つに、デザインバリエーションの多さがあります。十字の中心が中央にあるデザインや上記で紹介したスカンジナビア十字以外にも、縦と横の長さが等しくそれぞれの中央で交差している「ギリシャ十字」、聖アンドルーにちなんだ「斜め十字(X十字)」などがあります。
中でも、「ユニオン・ジャック」の愛称をもつ、グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(通称「イギリス」)の国旗は、(1)イングランドの白地に中央に赤十字の聖ジョージ旗、(2)スコットランドの青地に斜め白十字の聖アンドルー旗、(3)アイルランドの白地に斜め赤十字の聖パトリック旗――の3種の十字形シンボルを組み合わせています。
他にも、スカンジナビア十字を使った北欧諸国、ギリシャ十字を使ったスイス連邦、斜め十字(X十字)を使ったジャマイカ、さらには、国章の「複十字(ダブル・クロス)」をシンボルとしたスロバキア共和国など、十字形をシンボルとした国旗を持つ国も多数あります。
例えば、インドの国旗は横三分割に色分けされ、中央の白地に仏教の法(真理)であるダルマを表すシンボル「アショーカ・チャクラ(法輪)」が描かれています。そして、上のサフラン色はヒンドゥー教を、下の緑色はイスラム教を、白が両者を含めたあらゆる宗教の共存を表すと解釈されています(ただし、公式にはサフラン色は勇気・慈悲深さ・自己犠牲、白は平和・純粋・真実、緑は公正・豊作を表す)。
また、イスラエル国は国旗の中央のシンボルに、古代イスラエルの王者である「ダビデ王の盾」(六芒星形だが星ではない)を採択し、清浄・純潔を表す白地に、パレスチナの空を表す青で描いています。なお、旗の上下にある青いラインは、ユダヤ教徒の祈祷用ショール「タリート」の象徴です。
いかがでしたでしょうか。世界の国旗のシンボルには、それぞれの国家の願いや大切にしている宗教観などがこめられています。
国際協調の基本に、相手の大切にしているものを正しく知り、敬意を表することが挙げられます。象徴として各国が大切にしている国旗に意識を向け興味をもつことから、国際協調の第一歩を始めてみてほしいと思います。
世界には、国連加盟国だけでも193カ国(2022年5月現在)があります。そして、どの国にも固有の国旗、すなわち「国家の象徴として制定された旗」をもっています。国のシンボルである国旗の、さらにシンボルとなる図形には、さまざまな願いや想いが込められています。
今回は、世界の国旗の中から、星形・三日月形・十字形のシンボルに注目し、国家の宗教と関わりの深い国旗をめぐってみたいと思います。
なお、今回のテーマは「国旗×シンボル=国家の宗教」ですが、色も国旗の重要な要素です。そのため、今回のテーマである国家の宗教に関わる国旗の色については、適宜注釈を加えていきたいと思います。
三日月形×星形のシンボルとイスラム教国
トルコ共和国の国旗は、かつてトルコの地に栄えたイスラム世界の覇者・オスマン帝国の「新月旗」の意匠を受け継いでいます。「新月旗」とは、オスマン朝を象徴する色である赤地に、白の新月(三日月)と星を染め抜いた旗です。そして、「新月旗」の三日月(新月)と星のシンボルは、イスラム教国(イスラム教徒が多い国)の国旗の手本ともなりました。
チュニジア共和国・アゼルバイジャン共和国・マレーシアなどの国旗も、三日月形×星形のシンボルです。
さらに、イスラム教では緑が神聖な色として好まれているため、イスラム教国では、三日月形×星形のシンボルと緑色を使った国旗が好まれるようになりました。
典型例ともいえる国旗が、緑地に白の新月(三日月)と星を染め抜いた、パキスタン‐イスラム共和国の国旗です。ただし、旗竿側(左側)は白地となっており他の宗教を信ずる国民を、さらに月は発展、星は光と知識、白と緑は平和と繁栄を表しているとされています。
他にも、トルクメニスタン共和国やアルジェリア民主人民共和国などの国旗も、三日月形×星形のシンボルと緑が使われています。
ただし、シンガポール共和国の国旗のように、三日月形×星形のシンボルが描かれていても、イスラム教国ではない国もあります。
また、イスラム教国でもオスマン帝国と戦った歴史を持つ国などは、三日月形×星形のシンボルを使わずに、黒・赤・白・緑のアラブやイスラムを象徴する4色を使った国旗を制定している国もあります。
十字形シンボルのバリエーションとキリスト教国
キリスト教のシンボルである十字を使った国旗をもつ国は、キリスト教国(キリスト教徒が多い国)といえます。十字形国旗の最も古い基本形とされる国旗は、赤地に白の「スカンジナビア十字」(十字の縦軸が中心点からやや旗竿側に寄っている)が染め抜かれたデンマーク王国の国旗といわれています。
デンマーク王国の国旗には、1219年に異教徒の国であったエストニアとの戦いの際、天から舞い降り勝利に力を与えたという伝説があります。そして、フリージア語のDan(赤)とbroge(色つき布)の合成語である「ダンネブログ旗」とも呼ばれ、周辺諸国を含め、キリスト教国で広く親しまれています。
ところで、十字形国旗の魅力の一つに、デザインバリエーションの多さがあります。十字の中心が中央にあるデザインや上記で紹介したスカンジナビア十字以外にも、縦と横の長さが等しくそれぞれの中央で交差している「ギリシャ十字」、聖アンドルーにちなんだ「斜め十字(X十字)」などがあります。
中でも、「ユニオン・ジャック」の愛称をもつ、グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国(通称「イギリス」)の国旗は、(1)イングランドの白地に中央に赤十字の聖ジョージ旗、(2)スコットランドの青地に斜め白十字の聖アンドルー旗、(3)アイルランドの白地に斜め赤十字の聖パトリック旗――の3種の十字形シンボルを組み合わせています。
他にも、スカンジナビア十字を使った北欧諸国、ギリシャ十字を使ったスイス連邦、斜め十字(X十字)を使ったジャマイカ、さらには、国章の「複十字(ダブル・クロス)」をシンボルとしたスロバキア共和国など、十字形をシンボルとした国旗を持つ国も多数あります。
シンボルが表す多様な国家の宗教
その他、仏教やユダヤ教にまつわるシンボルを取り入れている国旗もあります。例えば、インドの国旗は横三分割に色分けされ、中央の白地に仏教の法(真理)であるダルマを表すシンボル「アショーカ・チャクラ(法輪)」が描かれています。そして、上のサフラン色はヒンドゥー教を、下の緑色はイスラム教を、白が両者を含めたあらゆる宗教の共存を表すと解釈されています(ただし、公式にはサフラン色は勇気・慈悲深さ・自己犠牲、白は平和・純粋・真実、緑は公正・豊作を表す)。
また、イスラエル国は国旗の中央のシンボルに、古代イスラエルの王者である「ダビデ王の盾」(六芒星形だが星ではない)を採択し、清浄・純潔を表す白地に、パレスチナの空を表す青で描いています。なお、旗の上下にある青いラインは、ユダヤ教徒の祈祷用ショール「タリート」の象徴です。
いかがでしたでしょうか。世界の国旗のシンボルには、それぞれの国家の願いや大切にしている宗教観などがこめられています。
国際協調の基本に、相手の大切にしているものを正しく知り、敬意を表することが挙げられます。象徴として各国が大切にしている国旗に意識を向け興味をもつことから、国際協調の第一歩を始めてみてほしいと思います。
<参考文献・参考サイト>
・「世界の国旗」『日本大百科全書』(小学館)
・『国旗・国歌の世界地図』(21世紀研究会編、文春新書)
・『話したくなる世界の国旗』(阿部泉監修コンデックス情報研究所編著、清水書院)
・『図説国旗の世界史』(辻原康夫著、河出書房新社)
・世界の国旗、基本のシンボル│世界の国旗
https://www.world-national-flags.com/study/symbol-basic.html
・「世界の国旗」『日本大百科全書』(小学館)
・『国旗・国歌の世界地図』(21世紀研究会編、文春新書)
・『話したくなる世界の国旗』(阿部泉監修コンデックス情報研究所編著、清水書院)
・『図説国旗の世界史』(辻原康夫著、河出書房新社)
・世界の国旗、基本のシンボル│世界の国旗
https://www.world-national-flags.com/study/symbol-basic.html
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