社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
TPP協定で日本のコミケ市場が消滅する!?
7月、TPPの著作権分野はおおむね合意する方向で話が進んでいるとの報道があった。このニュースに衝撃を受けたのが日本のコミックマーケット、通称コミケ界隈の人々だ。
二次創作とは、元となる作品のキャラクターを流用して、二次的に創作された作品のことだ。当然、多くの作品が著作権を犯していると言えるのだが、訴訟になることは今のところあまりないと言える。
あまりない理由は、訴訟のコストがそもそも高いということもあるが、そもそもコミケで盛り上がることが、二次創作の元となるオリジナル作品の売上向上にもつながる。だから、あえて黙認する作家も少なくない。
また、同人誌の作家として才能をみがくことで、オリジナル作品を描くプロの作家が生まれることも決して珍しくない。つまり、コミケを中心にした二次創作市場は、マンガやアニメ業界全体を活性化する役割を果たしているのだ。
日本の著作権法は「親告罪」という制度を採用している。これは、被害を受けた方が自ら訴えを起こさない限り、立件されないというものだ。今回TPPで話されているのはこれの「非親告罪化」である。
非親告罪になると、著作権者の意思とは関わらず、第三者が訴えれば立件されてしまう。つまり、著作権者の許可がなければ、いかなる二次創作も即裁判沙汰にできる状態になってしまう。今までのような「あえて黙認」というような曖昧な態度はとれなくなってしまうのだ。
例えば、被害額が50万円だとしても、再び同じような罪を犯す意志をくじくために、罰金的に1,000万円を払わせることが可能だということだ。これらの導入を主張しているアメリカでの法定賠償金額を参考にすれば、1作品につき15万ドル(約1,860万円)までが認められることになる。
これらのほとんどは、アメリカの都合で動いていると言われている。ディズニーやハリウッド映画、テレビドラマなどのコンテンツビジネスにとって有利な方向で話が進んでいるのだ。
著作権分野は、アメリカにとって、米や自動車よりも本命だと言われている。マンガ、アニメ、ゲームなど、世界に誇る日本のポップカルチャーの原動力であるコミケ、ひいては二次創作市場の危機はすぐそこまで迫っている。
コミケが日本のマンガ界をささえている?
コミケとは、同人誌を販売するイベントであり、毎年お盆の頃と年末頃に開催される。それぞれ数10万人以上を集める巨大なイベントで、同人誌の内容は、主にマンガ、アニメ、ゲームなどの二次創作だ。二次創作とは、元となる作品のキャラクターを流用して、二次的に創作された作品のことだ。当然、多くの作品が著作権を犯していると言えるのだが、訴訟になることは今のところあまりないと言える。
あまりない理由は、訴訟のコストがそもそも高いということもあるが、そもそもコミケで盛り上がることが、二次創作の元となるオリジナル作品の売上向上にもつながる。だから、あえて黙認する作家も少なくない。
また、同人誌の作家として才能をみがくことで、オリジナル作品を描くプロの作家が生まれることも決して珍しくない。つまり、コミケを中心にした二次創作市場は、マンガやアニメ業界全体を活性化する役割を果たしているのだ。
著作権侵害は著作権者の訴えが必要
さて、TPPとコミケには、どのような関係があるのだろうか。日本の著作権法は「親告罪」という制度を採用している。これは、被害を受けた方が自ら訴えを起こさない限り、立件されないというものだ。今回TPPで話されているのはこれの「非親告罪化」である。
非親告罪になると、著作権者の意思とは関わらず、第三者が訴えれば立件されてしまう。つまり、著作権者の許可がなければ、いかなる二次創作も即裁判沙汰にできる状態になってしまう。今までのような「あえて黙認」というような曖昧な態度はとれなくなってしまうのだ。
賠償金に罰金が加わる
また、もうひとつ「法定賠償金」制度もコミケを委縮させてしまうと考えられている。現在日本の法律では著作権侵害によって生じた被害額を見積もって、その額を著作権者は賠償請求できることになっているのだが、法定賠償金制度が認められると、被害額の何倍もの金額を罰金的に請求することができる。例えば、被害額が50万円だとしても、再び同じような罪を犯す意志をくじくために、罰金的に1,000万円を払わせることが可能だということだ。これらの導入を主張しているアメリカでの法定賠償金額を参考にすれば、1作品につき15万ドル(約1,860万円)までが認められることになる。
TPPの著作権分野はアメリカの都合で動いている
TPPで二次創作市場を委縮させると言われているのは、「非親告罪化」と「法定賠償金」だが、他にも著作権保護期間を「本人の死後70年」に延長するなどの動きもある。これらのほとんどは、アメリカの都合で動いていると言われている。ディズニーやハリウッド映画、テレビドラマなどのコンテンツビジネスにとって有利な方向で話が進んでいるのだ。
著作権分野は、アメリカにとって、米や自動車よりも本命だと言われている。マンガ、アニメ、ゲームなど、世界に誇る日本のポップカルチャーの原動力であるコミケ、ひいては二次創作市場の危機はすぐそこまで迫っている。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
西洋には逆境は神が与える運命という考え方があり、その運命をいかに克服するかを考えたのがストア派だった。しかし、神道が説くように「ヒトもカミ」であれば、それに気づく瞬間は逆境の中にこそ存在するはずである。「他者で...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/20
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
2025年8月、米露、米ウクライナ、EUの首脳会談が相次いで実現した。その成果だが、中でもロシアにとって大成功と呼べるものになった。ディール至上主義のトランプ政権を手玉に取ったロシアが狙う「ベルト要塞」とは何か。事実上...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/12/21
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
渡部昇一氏には、若き頃に留学したドイツでの体験を記した『ドイツ留学記(上・下)』(講談社現代新書)という名著がある。1955年(昭和30年)から3年間、ドイツに留学した渡部昇一氏が、その留学で身近に接したヨーロッパ文明...
収録日:2021/08/06
追加日:2021/10/23
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
かのジャン=ジャック・ルソーも平和問題を考えた一人である。個人の「自由意志」を尊重するルソーは、市民が直接参加して自分の意思を反映できる小さな単位を基本としつつ、国家間紛争を解決する手段を考えた。「自由の追求」に...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/16


