テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.02.05

「セレブ」しか住めない国?モナコ公国とは

 フランスとイタリアの間に位置するごく小さな国、モナコ公国。国のことはよく知らなくても名前はよく知っている、セレブが集まる豊かな国で、エレガント&ゴージャスなんて言葉がぴったり……そんなイメージなのではないでしょうか。

 F1レースの開催国であること、あるいは元ハリウッド女優で王室に嫁いだグレイス・ケリー妃のことを思い出す人も多いでしょう。2011年には、現国家元首のアルベール2世が南アフリカの元五輪水泳選手と結婚したことでも話題となりました。

 そんな華やかな印象を持つモナコ公国とは、いったいどんな国なのでしょうか。

人口密度は世界第2位の高級リゾート地

 モナコ公国は三方をフランス、一方を地中海と接した国で、国土の大きさは2.02平方キロメートル。バチカン市国に続く世界で2番目の小国です。皇居の2倍ほどの広さの中に約4万人が住み、人口密度も中国のマカオに続いて世界第2位(独立国としては世界一)となっています。

 グリマルディー家が主権を要する立憲君主制で、公用語はフランス語。日本とはあまり関係性がないように思われがちですが、実は政治、文化、経済面のほか皇室同士の交流も活発です。2011年3月の東日本大震災の折には、モナコから多額の支援金ほか、救援部隊も送られました。

 メインの産業は観光業。最も観光客でにぎわうのがカジノとオペラ座で、その外観はまるで宮殿のようなきらびやかさです。昼の時間帯であれば、見学のみの入館も可能だとか。もちろん街歩きも人気で、モナコ大聖堂を始めとする歴史的建造物と旧市街の街並みは、まさにおとぎ話の世界です。

 さらにモナコは気候にも恵まれており、年間晴天日は300日以上。空と太陽、そして地中海の青さが、街の美しさをいっそう際立たせます。

 またモナコは世界一安全な国としても知られ、治安の良さは日本をしのぐとも。街中には至る所に監視カメラが置かれ、警察の数も多く、24時間厳重に警備されています。浮かれた観光客が服を脱いで裸になったとたん、数秒で警察が現れて厳重注意を受けた、なんて話も……。

 さらに地理的に、緊急時はすぐに国を封鎖しやすいという点も、治安を高めているとされています。

モナコがセレブ憧れの国である理由

 モナコの人口のうち、生まれも育ちもモナコという純モナコ人は、実は1/4程度だといわれています。つまり残りの人口のほとんどが外国籍の移住者です。

 そう言われるととても移住しやすい国という印象を受けますが、実際はその逆。移住にはいくつかの方法がありますが、

「モガネスク(純モナコ人の富裕層)の雇用主から雇用されること」
「自身が高額の資産を有することを国に証明すること」
「モナコで開業すること」

など、条件はかなりシビア。資産は35万~100万ユーロ(約1800万~1億4000万円 ※2023年1月現在のレート)は必要といわれています。

 つまりモナコに住むためには、名実ともにリッチでなければなりません。言い方を変えれば、モナコの人口の多くが世界中のセレブたちで占められていることになります。

 それほどまでに、モナコにセレブが集まる理由は何なのでしょうか。

 その最大の理由は、税制です。日本をはじめとする国の多くは、富裕層であればあるほど高額な所得税の納税を強いられますが、モナコでは、移住者には所得税や相続税、贈与税などが課せられない「タックス・ヘイブン」と呼ばれる税制が採用されています。富裕層であればあるほど、暮らしやすい国なのです。

 ではモナコ国家の主な財源は何かといえば「付加価値税」、日本で言う消費税です。モナコの付加価値税は約20%で、歳入の半分以上がこれで支えられています。実は物価は日本と同じか少し高い程度とされますが、モナコに住むセレブたちが国内で多く消費することで、国にたくさんのお金が入るような仕組みになっているのです。

 徹底した警備態勢を敷いて治安を維持するのは、治安の悪化によって富裕層が国外へ流出し、国内消費が減少してしまうのを防ぐため。モナコの国は、セレブたちによって支えられているのです。

 いかがでしたか。モナコはセレブにとって住みやすい土地ではありますが、セレブでなければ行けない、というわけではもちろんありません。ヨーロッパ屈指のリゾート地として、一般の観光客も十分に楽しめるレジャーがたくさんあります。世界一セレブな国、モナコの豊かさを、是非その目で確かめてみては。

<参考サイト>
・モナコ公国基礎データ(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/monaco/data.html#section4
・在モナコ大使館HP
https://www.fr.emb-japan.go.jp/jointad/mc/ja/index.html
・モナコ政府観光会議局HP
https://www.visitmonaco.com/ja/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的

第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想

「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
柿埜真吾
経済学者
2

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性

アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
3

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城

世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(1)「相互関税」とは何か?

トランプ大統領は、2025年4月2日(アメリカ時間)に貿易相手国に「相互関税」を課すと発表し、「解放の日」だと唱えた。しかし、「相互関税」の考え方は、まったくよくわからないのが実状だ。はたして、トランプ大統領がめざす...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/04/10
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授