テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.01.11

老後に必要な貯金は〇〇万円!1億円説はウソだった!?

 一般的なサラリーマンが稼ぐ生涯賃金は2~3億円といわれている。これに対し、金融機関などが提案する「ゆとりある老後の必要資金は1億円」というフレーズを耳にしたことはないだろうか?実際のところ、一般的なサラリーマン世帯にとって老後に1億円を残せるかはかなり怪しい。

 この1億円という金額は、公益財団法人生命保険文化センターが実施する「生涯保障に関する調査」のアンケート結果に基づく。「ゆとりある老後生活費」というテーマで、2013年度の調査では、1ヶ月あたり約35万円必要という結果から、65歳から90歳までの25年間を想定した算出額になる。このアンケートは、18~69歳の男女からサンプリングした数字であることから、それぞれの世代の希望を反映して、やや高めのバイアスがかかっているとみてよい。

 老後の資金は多い分にこしたことはないが、現実的な額としての生活費を想定して算出しておいたほうがよさそうだ。よく耳にする「老後破産」の多くは、介護離職やリストラ、退職金の当てがはずれて住宅ローンが払えなくなるケースである。老後においては、借金やローン返済を持ち越さないことが前提で、生活費をある程度カバーしてくれる年金受給額との相関でリアルな貯蓄額を想定しておきたい。

 公的年金は当てにならないという話をよく聞くが、多くのサラリーマン世帯にとって、老後の収入のベースは年金に頼らざるをえない。サラリーマンや公務員にとっての公的年金は、基礎年金となる「国民年金」と「厚生年金」(公務員は共済年金)に加入実績から、基本的に受給要件を満たした年齢から手続きをすることで受給が開始される。

 では、実際にどのくらいの受給が見込まれるのだろうか。厚生年金は現役の収入からの支払額によって変わる。平成26年8月の日本年金機構の統計によると、サラリーマン世帯モデルとして、夫が会社員、妻が専業主婦による平均の年金月額は約21万円になる。そして、月額の年金受給額に対して、リアルな生活費としての支出をみておきたい。平成26年9月の総務省「家計調査」によると、60~69歳の世帯支出は月額にして約25万円である。年金受給額から、約4万円の不足が見て取れる。これが平均値からのリアルな生活実態となる。

 年金受給が65歳からを考えて、60歳定年から働かない想定での5年間、夫婦世帯の生活費は1500万、65歳からの90歳まで生きる25年の不足分を計算すると1200万円となり、少なくとも2700万円の貯蓄額が算出される。少子高齢化による年金受給額の目減りはほぼ確実であることから、老後資金1億といわず、少なくとも3000万円を目標にした蓄財を準備しておきたい。また、少なくとも年金受給可能となる65歳まで稼げるような環境を確保しておきたい。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,200本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

映画『君たちはどう生きるか』とつながる山上憶良の答え

映画『君たちはどう生きるか』とつながる山上憶良の答え

山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(3)「沈痾自哀文」現代語訳を読む

宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』の一つの大きなテーマは、自分が恵まれていることにどう気づくかではないかと上野氏はいう。これは戦後日本のあり方、目指すべきものへの痛烈な問いかけではないだろうか。このことに...
収録日:2024/04/02
追加日:2024/07/26
上野誠
國學院大學文学部日本文学科 教授(特別専任)
2

集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り

集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り

本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる

アスリートたちは本番で力を発揮するために、「準備」と「本番」の2つのフェーズに分けて物事を考えている。「準備」段階ですべきは、本番の状況を細部にわたってシミュレーションしておくこと。そして、本番で「意識が散漫にな...
収録日:2020/09/16
追加日:2021/01/19
為末大
Deportare Partners代表
3

こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は

こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は

「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像

「こりごりだ」「アイ・ラブ・トランプ」…いったいどちらが本当のトランプ評なのか。前大統領のトランプ氏は、過激な発言で物議を醸すことも多かったが、その人柄はどのようなものだったのだろうか。2024年11月アメリカ大統領選...
収録日:2024/04/23
追加日:2024/07/24
杉山晋輔
元日本国駐アメリカ合衆国特命全権大使
4

ポツダム宣言受諾が遅れた理由と昭和天皇の「御聖断」

ポツダム宣言受諾が遅れた理由と昭和天皇の「御聖断」

敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(10)ポツダム宣言受諾への道のり

公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏による島田塾特別講演シリーズ。紆余曲折の末、ついに発表されたポツダム宣言とその正式受諾に至るまでの道のりを知る。陸海軍の猛反発にあいながら本土決戦前の降伏を実現したポツ...
収録日:2016/07/08
追加日:2017/08/02
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授