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DATE/ 2016.03.19

「行動科学マネジメント」でみる仕事ができる人の法則

 あの人は仕事ができるな、と思うことはないだろうか。自分と「できる人間」の差異はどこにあるのだろうか。ここでは、「行動科学マネジメント」という視点から考えてみたい。

 ある行動の直後に賞賛されたり報酬をもらえたりすると、その行動を自ら繰り返すようになり、次第に定着・習慣化していく。これは行動分析学の実験データから明らかにされた法則だ。この法則に則って提唱されているものが「行動科学マネジメント」である。

仕事ができる人は「定型化」が徹底している

 たとえば、ある行動をしたら、スタンプやシールなどをもらえ、一定の数に達するとちょっとした品物や特権を与えられるという仕組みがあるとする。ポイントカードと同じ仕組みだが、これは確実に継続してポイントが貯まるため、その行動は習慣化しやすい。

 実際の場面を考えてみよう。たとえば、取引先にアポイントメントをとる場合を想定し、行動を分解してみる。

1、取引先の担当者の名前と部署を確認する。
2、相手に確認したいことについて、書き出しておく。
3、聞き漏らしがないよう、「手元にメモとペンを用意」する。
4、電話をかけたら、まずはこちらの会社名を告げ、名乗り、担当者につないでもらい、「いま、お時間よろしいでしょうか」と確認する。
5、そのうえで訪問したい旨を告げ、日時の都合を伺う。相手が不在だったり対応できなかったりする場合は、再度連絡することを告げる。

 細かく分けて考えれば、仕事の9割はこうした基本的行動の「繰り返し」だと気付く。重要なのは、「繰り返し」の部分でつまずいたり迷ったりする時間をつくらないこと。仕事ができる人は、そこが徹底しているという。どんな仕事であれ有効なのは、仕事のできる人のやり方を、先例のように「分解」してみることだ。「できる人間」は、この一連の流れが早い。つまり「定型化」が進んでいるのだ。

「チェックリスト化」と「具体的な言語化」

 「定型化」したことを定着させるには、「チェックリスト」を作ることが有効である。常に「チェックリスト」に沿って仕事を進めれば、作業時間は短縮できる。また、「チェックリスト」をクリアすると、そのひとつひとつが自分への報酬となる。これは先に挙げたポイントが貯まる仕組みや、ロールプレイングゲームでダンジョンをクリアする感覚にも似ている。単なる反復なのだが、チェックするたびに達成感が生まれ、次に進むための原動力となる。

 こうして9割の「いつもの仕事」の部分に時間と労力を割かずにすめば、その仕事特有の1割の部分について、じっくり時間をとることができるようになる。

 行動を具体化し、「定型化」するために大事なことは、「目に見える行動」のみを抽出し、曖昧で抽象的な表現は使わないこと。

 たとえば、「なるべく早く仕上げる」は「15分で仕上げる」に。「がんばってたくさん仕上げる」は「1日に5個仕上げる、もしくは12時までに2つ仕上げる」と決めることである。具体化すれば、誰にでも明確となり、すぐに行動に移せる。

 以上、「行動科学マネジメント」のポイントとして、今回は「定型化」「チェックリスト化」「具体的な言語化」の3点を紹介した。この点をおさえるだけでも、仕事の効率は間違いなく上がっていくはずだ。

<参考サイト>
・日本経営合理化協会:経営コラム「行動科学マネジメント」
http://jmcasemi.jp/column/article.php?article=266
・Lifehacker:一流ほど手を抜いている? 仕事を「定型化」してムダを省くコツ
http://www.lifehacker.jp/2015/08/150810book_to_read.html
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授