テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.05.25

アメフトと経営は似ている?プロ経営者が語る「限界突破術」

 2015年、怒涛の快進撃で日本中を熱狂させたラグビー日本代表。多くの人が五郎丸歩選手のルーティンの真似をし、その正確無比な「型」が話題を呼びました。ラグビーが「型を尊ぶ」スポーツであることは、勝敗よりもいかに戦ったかを重んじる「フェアプレイ」や、ホイッスルが鳴れば敵味方なく互いの健闘を讃えあう「ノーサイド精神」からも見て取ることができます。

型を守ろうとするラグビー、破りにいくアメフト

 「型を守る」のがラグビーのお家芸なら、「破る」のが得意なのはサッカー、それともアメリカン・フットボール?卓越した個人芸とパフォーマンスが光るサッカーよりも、集団で戦略的にゴールを目指すアメフトのほうに、より「突破する」意識は強いような気がします。

 実際にアメフトは、頭脳・スピード・パワー・テクニックなど、さまざまな要素が生かされるスポーツ。ポジションや動きも多彩で、それに応じた体格の選手が集まり、すぐれた戦術を駆使することによって、それぞれの限界を突破していきます。

アメフトと経営の共通点を熱く語るプロ経営者

 型を守るにせよ破るにせよ、スポーツの試合でもっとも感動を呼ぶのは「限界突破」の瞬間に間違いありません。

 その醍醐味はビジネスにも通じるとして、「思い切って自分を変えないと実行できない」ほどの大きな権限と責任を従業員に手渡し、自らの能力を「ストレッチ」することを熱く求める経営者が、日本にも現れています。

 株式会社LIXILグループ取締役代表執行役社長兼CEOの藤森義明氏が、その人。アメフトと経営の共通点として、「大きな変革をおこすために大きなビジョンを立て、それに向かって戦略を練り、チームをつくって実行し、目標への到達を目指す」ことだと、教養メディア「10MTVオピニオン」の取材の中で話してくれました。

個人にも潜むダイバーシティを、もっとチームに

 高校時代、野球少年だった藤森氏は、東京大学工学部入学時にアメフトを選択。卒業後は総合商社の日商岩井(現双日)に就職しますが、ほどなく渡米。カーネギーメロン大学でMBAを取得した後は、日本企業よりも米国企業を選び、ゼネラル・エレクトリック(GE)に転職、2001年にはアジア人初のシニア・バイス・プレジデントに就任。2008年に日本GE会長兼社長兼CEOを兼任し、2011年より現職となりました。

 転機の度に新しいものを取り入れてきた藤森氏は、自分自身の成り立ちを「ダイバーシティ(多様性)そのもの」だと振り返り、個人でもそうなのだから、チームにも企業にもダイバーシティは欠かせないと考えています。

ストレッチとダイバーシティは、日本ビジネス全体の薬にも?

 「ストレッチ」と「ダイバーシティ」。それは、藤森氏が25年間のGEビジネスで戦い抜いて築きあげた「GEモデル」を日本の企業にも応用し、日本ビジネス全体をグローバルに戦えるようにするための戦略にほかなりません。

 GEモデルも、一つの「型」。日本の外側にある「型」を自分のものとし、国内に持ち帰る日本人が増えてくることで、日本企業の変革の波はさらに大きくなるだろうと、藤森氏は予測しています。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識

ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム

「ヒトは共同保育の動物だ」――核家族化が進み、子育ては両親あるいは母親が行うものだという認識が広がった現代社会で長谷川氏が提言するのは、ヒトという動物本来の子育て方法である「共同保育」について生物学的見地から見直...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/08/31
長谷川眞理子
日本芸術文化振興会理事長 元総合研究大学院大学長
2

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道

未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発

日本は第二次大戦後に軍事飛行等の技術開発が止められていたため、宇宙開発において米ソとは全く違う道を歩むことになる。日本の宇宙開発はどのように技術を培い、発展していったのか。その独自の宇宙開拓の過程を解説する。(...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/02
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士
3

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制

「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉

現代流にいうと地政学的な危機感が日本を中央集権国家にしたわけだが、疫学的な危機によって、それは早い終焉を迎えた。一説によると、天平期の天然痘大流行で3割もの人口が減少したことも影響している。防人も班田収授も成り行...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/01
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
4

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る

発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る

睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題

社会的時差ボケの発生には、働き方も大きな影響をもっている。特にシフトワークによって不規則な生活リズムを強いられる業種ではその回避が難しい。今回は、発がんリスク、メンタルヘルスの不調など、シフトワークが抱える睡眠...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/08/30
西多昌規
早稲田大学スポーツ科学学術院教授 早稲田大学睡眠研究所所長