テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.08.18

大学教授から保育士まで-給与明細にみる格差

 SNSの時代になって、これまで気になりつつも見ることのなかった他人の家の食卓やお弁当、ペットとのふれあいの様子などを見る機会が増えました。そんな「気になる」度で最強の部類に属するのが、他人の「給与明細票」ではないでしょうか?

雲の上の戦いだった京大教授vsホリエモン

 賃金アップを図るため、「国立大学の現状を知っていただきたい」と源泉徴収票をご自身のブログにアップしたのが京都大学の高山佳奈子教授でした。2013年度の所得は約660万円。手当と賞与が加算されて年収は約940万円。様々な控除が約270万円にも上り、中でも月額約10万円の社会保険料は高いと感じます。しかし、2014年に発表された当座、ご本人が感じられていたほど世論の共感を集めることはありませんでした。

 ところが、このブログ、なぜか2016年になって「京都大学の教授が給与明細を公開。衝撃の年収が明らかに!」というweb記事で再燃。堀江貴文氏はTwitterで「何言ってんだこいつ。バカか。」と反応し、「給料に不満があるなら大学教授を辞めて、事業を起こせば良い」と納得のアドバイスも。

勤続7年手取り11万の保育士、残業で10万確保の整備士

 しかし、最近の主流はそんな雲の上の出来事ではありません。保育士、図書館員、整備士などが次々に「さらしたい」とツイートしてきた給与明細の現物写真からは、あまりにも厳しくつらい現実が見えてきます。

 発端は「保育園落ちた日本死ね」に始まった、保育士への低待遇。「7年働いてこの給料」とツイートされた金額は約11万円(控除額約3万円)でした。

 この5月に支給額合計約19万円、差引支給額約11万円の給与明細をツイッターにアップしたのは自動車整備士。投稿によれば、残業しなかったら10万を切っているとのこと。保育士、整備士どちらも国家資格なのに…、です。

社会保険が高いのか、手当が低いのか

 この後twitterでは、「最底辺」を競う多くの給与明細がアップされました。多くの人が嘆くのが「額面」と「手取り」の差です。その間で控除されるのは所得税・住民税と健康保険・厚生年金などの社会保険。それでも非正規雇用の人たちからは「保険があるだけマシ!」との声も上がり、「ブラック明細」も盛んに飛び出しています。

 逆に基本給の低さを補ってくれるのが各種手当なのですが、「扶養手当・地域手当・住宅手当・家族手当・職務手当」などの基本的な手当はおろか「時間外・超過勤務手当」さえ「見たことがない」と自嘲する発言も多数。通勤手当と時間外手当以外は企業によって定められるものなので、特に中小企業では縮小の一途をたどっているようです。

 それでも一部の大企業では、ママさん社員からの評価を高めるため「ベビーシッター補助」を支給するところも。大手企業は国家公務員にならって福利厚生を定めているため、単身赴任、特殊勤務、特地勤務への手当も手厚いのが慣例です。

子役で3000万円の月収があった内山信二

 一方で、ブームになる芸人さんたちには驚くほど高いギャラが支払われていることも、最近人気の番組「しくじり先生」(テレビ朝日系)などで次々に暴露されています。

 タレントの内山信二さんは子役時代の10歳当時、MAXの月収が3000万円だったそうです。保育士や整備士との差はなんと300倍。いわゆる「スーパースターの経済学」がもたらす効果なのでしょうか、恐ろしい数字ですね。

 ここまで来た格差、どんな政治家が埋められるというのでしょうか。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
2

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
3

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
4

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授