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DATE/ 2020.04.02

平均年収441万円はウソ!性別、勤続年数でみる実態は?

 国税庁が毎年9月に発表している「民間給与実態統計調査」。それによると平成30年度の平均年収は441万円。平成29年度と比べると8.5万円UPで約2パーセントの伸び率ということです。実感値とくらべると、どうでしょう?

 セグメント別に検証してみました(数値はすべて約を省略)。

日本の平均年収を下げているのは、女性の低すぎる年収

 平成30年の男性平均年収は545万円、女性平均年収は293万円です。

 統計数字を見ると、男性の年収は55~59歳の686万円を頂点として、19歳の頃から段階的に上がり、多くの企業で定年が設定される60歳以降では急減することがわかります。

 一方、女性では多くの人が社会人になる20~24歳と、仕事を覚えた25~29歳の間では77万円程度の差があるものの、それ以降は頭打ち状態が続き、50代後半から徐々に下がっていきます。

 男性の平均年収が「日本人の平均年収」を下回るのは29歳以下と65歳以上だけ。統計値を押し下げているのは女性の平均年収であることは、明らかです。

年収1000万円と100万円の差がモノをいう統計数字

 でも、現実には女性でフルタイム勤務をこなし、管理職についている人も珍しくない時代です。彼女たちの給与は反映されていないのでしょうか。年収・性別ごとに区分けされたデータを見てみましょう。

<100万円以下>
男性:97.1万人(3.3%)
女性:312.7万人(15%)

<100万円台>
男性:193.2万人(6.6%)
女性:495万人(23.8%)←女性のボリュームゾーン

<200万円台>
男性:324.2万人(11%)
女性:437.5万人(21%)←女性の「平均年収」

<300万円台>
男性:508.9万人(17.3%)
女性:357.9万人(17.2%)

<400万円台>←「平均年収」
男性:524.1万人(17.8%)←男性のボリュームゾーン
女性:224.1万3千人(10.8%)

<500万円台>
男性:397.9万人(13.5%)←男性の「平均年収」
女性:116.9万人(5.6%)

<600万円台>
男性:270.2万人(9.2%)
女性:58.8万人 (2.8%)

<700万円台>
男性:190.1万人 (6.4%)
女性:31万人(1.5%)

<800万円台>
男性:129.4万人(4.4%)
女性:15.6万人(0.7%)

<900万円台>
男性:83.9万人(2.8%)
女性:9.3万人(0.4%)

<1,000万~1,500万円台>
男性164.7万人(5.6%)
女性15.7万人(0.8%)

<1,500万~2,000万円台>
男性:35.5万人(1.2%)
女性:3.8万人(0.2%)

<2,000万~2,500万円台>
男性:11.6万人(0.4%)
女性:1.2万人(0.1%)

<2,500万円以上>
男性:15.1万人(0.5%)
女性:1.3万人(0.1%)

 働く女性の4分の1以上が、年収は100万円台。前後を合わせると、300万円以下で働いている女性は60%で、3人に2人という実態が分かります。一方で1,000万円以上という高年収の女性も、合計すると22万人。女性調査数は2,080.7万人ですから、少ないとはいえ約1.2%、ほぼ100人に1人は1,000万円以上の年収を得ています。

 一方、男性の20.9%が300万円台の年収であることも意外です。平均年収を下回る400万円以下で働く人の割合は38%、男性平均を下回る500万円以下では56%と過半数になります。高年収ゾーンを見ると、男性で1,000万円以上年収を得ている人は8%。およそ100人に8人という計算ですね。

 これらのことが重なるため、「平均年収441万円」の数字は、実際のボリュームゾーンからも、大手企業で働くビジネスパーソンからも乖離して見えるのでしょう。

「配偶者特別控除」と「M字カーブ」のワナ

 女性の年収を頭打ちにしているのは、既婚女性パートタイマーの多くが「配偶者控除」や「配偶者特別控除」枠に収まるよう、働く時間を自主的にセーブしているというのが通説です。今回の調査では、配偶者控除又は扶養控除の適用を受けた者は1,344 万人、配偶者特別控除を受けた人は135万人だということです。

 もう一つの要因は、いわゆる「M字カーブ」。出産退職する女性は、男性ほど勤続年数が積み上がらないので、年収も上がらないという説があります。「勤続年数別の平均給与」統計を見てみましょう。

<勤続5年未満>
男性:398万円
女性:244万円

<勤続5~9年>
男性:469万円
女性:277万円

<勤続10~14年>
男性:548万円
女性:308万円

<勤続15~19年>
男性:606万円
女性:342万円

<勤続20~24年>
男性:684万円
女性:379万円

<勤続25~29年>
男性:750万円
女性:436万円

<勤続30~34年>
男性:771万円
女性:419万円

<勤続35年以上>
男性:672万円
女性:342万円

 平均して最高額を得られるのは勤続年数30~34年の階層です。しかし、その比率はというと、5年未満の頃の年収と比べて、男性は373万円上がる1.9倍、女性は175万円で1.7倍にしか達しません。政府も「一億総活躍社会」を看板にするなら、ここから手をつけてほしいと思うばかりです。

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<参考サイト>
・国税庁:平成30年分 民間給与実態統計調査
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf
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