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DATE/ 2016.12.19

「メンタル不調に陥る人」が多い職場の特徴とは?

 あなたの職場ではどのくらい自然なコミュニケーションがありますか。メンタル不調の出にくい職場では、エレベータの中や、トイレで手を洗っている時など、ふとしたタイミングで何かしら社員同士が言葉を交わしているそうです。見波利幸氏の著書『心が折れる職場』によると、こういう職場ではいざというときに助けを求められる安心感が生まれている、ということです。

 一方、メンタル不調を抱える人が出てくる職場は、社員同士が気軽に話しにくい環境であることが多いようです。

緊張の強い場所でメンタル不調が生じる

 また、同書によると、不調が発生しやすい職場の特徴に「最近なにかで涙を流したことはありますか」という質問に対する「はい」という回答の少なさが挙げられるそうです。少し前から「涙活」という言葉が巷に出回りましたが、心が自然と反応する状態のほうが、リラックスできていることではないでしょうか。

 こういったことから考えると、メンタル不調に陥る人の多い職場は、無用な緊張が強い場所といえるのではないでしょうか。たえず大人として振る舞うことを暗黙の了解となっている場所かもしれません。かといって、ちょっと緊張を解くためにも飲み会でも開こうか、と上司が言えば、それはやはり業務になることが多いでしょう。

関係をつくるには、相手をしっかりと見て、よく聞くこと。

 では、職場の緊張を解くにはどうすればいいのでしょうか。まず、あなたがどういう立場であったとしても、相手のことをしっかりと見て、相手の話をよく聞き、その相手とじっくりと話すということではないでしょうか。こういうと当然のことのように感じますが、実は簡単なことではありません。

 リーダー的立場にある人は、ときに自分が率いなければ、と強気になろうとします。ですが、構成員一人ひとりがリーダーのことを信頼していなければ、いい結果は残せないでしょう。つまり問題は、リーダーシップという力を持つことではなく、個人間の信頼関係をつくれるかどうかです。信頼がない関係には緊張が入り込んできます。緊張状態で発せられる言葉は、事務連絡か命令かのどちらかになってしまうことが多く、場はまた緊張が増していきます。

コミュニケーションはまず相手を尊重することから始まる

 2016年、元SMAPの中居正広さんの「傾聴力」が話題になりましたが、相手のことをしっかりと見てよく聞くことはそれにもつながり、相手を尊重する態度といえるでしょう。そして、たとえ明らかに相手が間違っていると感じたとしても、「それは違う」とすぐにはねのけず、「そうなのか、君はそう思うんだね」と一度、自分の頭に入れて検討してみることです。その上で、こういう考え方はどうだろうと提示すると、相手との間に通路が生まれる可能性が膨らみます。つまり、人間として自分も同じ場所に立ち、一対一で接することから信頼は生じるのではないでしょうか。

 論理的説得だけでは、人間関係は形成されません。あの人は自分の話をきちんと聞いてくれる人だ、という心の安心があれば、相手は反応を返すということです。それが仕事の結果につながることもあるでしょう。このような人間関係を築いていくことで職場の緊張が和らぎ、いつのまに自然なコミュニケーションが生まれるようになるということですね。

<参考文献>
・『心が折れる職場』(見波利幸著、日本経済新聞出版社)
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授