テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.03.06

不動産バブル到来で注目される「マンション格差」

日本も不動産バブル到来か

 近年、いわゆる中国バブルに対する懸念が強まっています。主な要因は、北京や上海、沿岸部の杭州やアモイなど20余りの大都市の不動産価格の急騰です。その一方で「主要な70都市の中でも北朝鮮国境に近い丹東やウイグル族が暮らすウルムチなど6都市は前月比で下落し、不動産市場の二極化が問題になっています。

 実は日本も同様の問題を抱えています。マイナス金利政策の影響を受け、住宅ローンは史上空前の低金利時代に突入しました。だぶついたマネーは不動産市場に集中し、不動産マネーはかつての「バブル時代」を超えています。中国と同様に、不動産価格が上昇しているのは、主に東京、大阪、名古屋といった大都市圏です。それゆえに、都心バブルとも言われています。一方、三大都市圏と札幌、仙台、広島、福岡を除いた地方では不動産価格の下落が続いており、不動産格差が深刻化しています。

日本人の新築信仰とマンションバブル

 首都圏内おいては、金融政策とは別の理由も加わって不動産の価格格差が広がっています。2020年の東京オリンピックに向けた建設需要の影響で建築費が値上がりし、首都圏の新築マンションの平均価格がバブル期並みとなっているのです。これでは平均的な所得水準の購買者にはなかなか手が出ません。

 その一方で、中古マンションや戸建ては新築マンションに比べて割安感があり、投資ビジネスではなく居住目的の購買者から人気を集めています。一般の人が新築マンションに手を出すことができない現状はいびつな不動産格差が生じていると言えるでしょう。

 とは言っても、住むならやっぱり新築が良いという方は少なくないと思います。日本人は非常に「新築好き」な国民です。他の先進国に比べて、住宅の建て替え頻度が高く、人口に対する新築住宅建設の割合も高いのです。住宅ジャーナリストの榊淳司氏はそれを神道の清浄観と結びつけて「新築信仰」と呼んでいます。「新築信仰」が都心の新築マンションバブルの遠因になっているとも考えられます。

たくさんのマンション格差

 榊淳司氏には『マンション格差』(講談社)という著書があります。本の帯には「35年前に購入したマンションの売却査定額が3200万円と800万円。何が運命を分けたのか!?」とあり、具体的な事例を踏まえて「マンション格差」がどのようにして生じるのかを論じます。

 「マンション格差」と一口に言っても、様々な格差があります。たとえば、TBSドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」が2016年10月から12月にかけて放送されましたが、そこで描かれたタワーマンションのヒエラルキーをはじめ、前述のような新築と中古、あるいは分譲と賃貸の差、またマンションのブランド格差という切り口もあります。

 本書によるとブランドでマンションを選ぶ人は実は多いそうです。それに対して榊氏は「マンションのブランドは幻想である」、「ブランドはあくまでも参考程度。格差の基準とはなりにくい」と主張しています。

マンションは「9割が立地」

 本書の本題である分譲マンションの資産価値の格差はどのようにして生じるのでしょうか。榊氏は「9割が立地」と述べています。不動産を購入する上で当然の指摘と思われるかもしれませんが、立地が全体の「9割」もの重要度を占めているというのがポイントです。立地に対する見方は、本書とともに『23区格差』(池田利道著、中央公論新社)が参考になります。

 さて、残りの1割は何でしょう。その多くはデザインや施工精度などのハード部分です。中でももっとも重要なのがハードとソフトの間を担っているとも言える「管理」だそうです。建築に欠陥があれば資産価値は大きく下落します。それと同様に、管理に不正があるとマンションの格が一気に落ちるそうです。それだけではなく、管理の質が落ちればマンションの寿命も短くなります。「中古マンションは管理で買え」といわれるほどに管理は資産価値を左右するのです。

 本書末には、三井不動産や三菱地所をはじめとする「デベロッパー大手12社をズバリ診断」が特別付録として掲載されています。前述の通り、マンションにブランド格差はないかもしれませんが、会社によってそれぞれ独自の開発姿勢や販売方針があります。マンションの購入を検討している方は一度チェックしてみるといいでしょう。

<参考サイト>
・『マンション格差』(榊淳司著、講談社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境

花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候

古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/02
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援

グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
3

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
4

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ

大谷翔平の育て方・育ち方(5)栗山監督の言葉と二刀流への挑戦

高校を卒業した大谷翔平選手には、選手としての可能性を評価してくれた人、そのための方策を本気で考えてくれた人がいた。それは、ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウト小島圭市氏と、元日本ハムファイターズ監督で前WBC...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/31
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員