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不動産バブル到来で注目される「マンション格差」
日本も不動産バブル到来か
近年、いわゆる中国バブルに対する懸念が強まっています。主な要因は、北京や上海、沿岸部の杭州やアモイなど20余りの大都市の不動産価格の急騰です。その一方で「主要な70都市の中でも北朝鮮国境に近い丹東やウイグル族が暮らすウルムチなど6都市は前月比で下落し、不動産市場の二極化が問題になっています。実は日本も同様の問題を抱えています。マイナス金利政策の影響を受け、住宅ローンは史上空前の低金利時代に突入しました。だぶついたマネーは不動産市場に集中し、不動産マネーはかつての「バブル時代」を超えています。中国と同様に、不動産価格が上昇しているのは、主に東京、大阪、名古屋といった大都市圏です。それゆえに、都心バブルとも言われています。一方、三大都市圏と札幌、仙台、広島、福岡を除いた地方では不動産価格の下落が続いており、不動産格差が深刻化しています。
日本人の新築信仰とマンションバブル
首都圏内おいては、金融政策とは別の理由も加わって不動産の価格格差が広がっています。2020年の東京オリンピックに向けた建設需要の影響で建築費が値上がりし、首都圏の新築マンションの平均価格がバブル期並みとなっているのです。これでは平均的な所得水準の購買者にはなかなか手が出ません。その一方で、中古マンションや戸建ては新築マンションに比べて割安感があり、投資ビジネスではなく居住目的の購買者から人気を集めています。一般の人が新築マンションに手を出すことができない現状はいびつな不動産格差が生じていると言えるでしょう。
とは言っても、住むならやっぱり新築が良いという方は少なくないと思います。日本人は非常に「新築好き」な国民です。他の先進国に比べて、住宅の建て替え頻度が高く、人口に対する新築住宅建設の割合も高いのです。住宅ジャーナリストの榊淳司氏はそれを神道の清浄観と結びつけて「新築信仰」と呼んでいます。「新築信仰」が都心の新築マンションバブルの遠因になっているとも考えられます。
たくさんのマンション格差
榊淳司氏には『マンション格差』(講談社)という著書があります。本の帯には「35年前に購入したマンションの売却査定額が3200万円と800万円。何が運命を分けたのか!?」とあり、具体的な事例を踏まえて「マンション格差」がどのようにして生じるのかを論じます。「マンション格差」と一口に言っても、様々な格差があります。たとえば、TBSドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」が2016年10月から12月にかけて放送されましたが、そこで描かれたタワーマンションのヒエラルキーをはじめ、前述のような新築と中古、あるいは分譲と賃貸の差、またマンションのブランド格差という切り口もあります。
本書によるとブランドでマンションを選ぶ人は実は多いそうです。それに対して榊氏は「マンションのブランドは幻想である」、「ブランドはあくまでも参考程度。格差の基準とはなりにくい」と主張しています。
マンションは「9割が立地」
本書の本題である分譲マンションの資産価値の格差はどのようにして生じるのでしょうか。榊氏は「9割が立地」と述べています。不動産を購入する上で当然の指摘と思われるかもしれませんが、立地が全体の「9割」もの重要度を占めているというのがポイントです。立地に対する見方は、本書とともに『23区格差』(池田利道著、中央公論新社)が参考になります。さて、残りの1割は何でしょう。その多くはデザインや施工精度などのハード部分です。中でももっとも重要なのがハードとソフトの間を担っているとも言える「管理」だそうです。建築に欠陥があれば資産価値は大きく下落します。それと同様に、管理に不正があるとマンションの格が一気に落ちるそうです。それだけではなく、管理の質が落ちればマンションの寿命も短くなります。「中古マンションは管理で買え」といわれるほどに管理は資産価値を左右するのです。
本書末には、三井不動産や三菱地所をはじめとする「デベロッパー大手12社をズバリ診断」が特別付録として掲載されています。前述の通り、マンションにブランド格差はないかもしれませんが、会社によってそれぞれ独自の開発姿勢や販売方針があります。マンションの購入を検討している方は一度チェックしてみるといいでしょう。
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