敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
池田勇人の所得倍増計画はなぜ成功した?鍵は下村治の理論
敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(11)占領後の日本の戦後復興(下)
歴史と社会
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本の戦後復興が一段落すると、「東洋の奇跡」と呼ばれた高度成長の時代がやってくる。今回は、日本の成長に直接結びついた二つのポイントをやや詳しく追いかけ、廃墟からの大発展の原因を分析する。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が主宰する島田塾の特別講演によって、戦後と占領の意味はどう変わっただろうか。(2016年7月8日開催島田塾第137回勉強会島田晴雄会長講演「敗戦、占領、そして発展:日本は異民族支配からいかにして再生したか?」より、全13話中最終話)
時間:12分22秒
収録日:2016年7月8日
追加日:2017年8月9日
≪全文≫

●12.マクロ経済成長戦略


 12番目に挙げたいのは、「マクロ経済成長戦略」として、日本経済成長のモメンタムをして、日本中を元気付けた二人の人がいます。

 一人目は、低姿勢を貫いて「ごもっともでございます。日本は所得倍増いたします」と言っていた池田勇人です。直前の岸信介が非常な権力派で、警職法(警察官職務執行法)を通そうとするなどの姿勢が、大変な不人気でした。その雰囲気を払拭するために、池田首相は「低姿勢」でいったわけで、全て意図的なものでした。

 ただ、池田首相発言の根拠は下村治にありました。非常に切れ者の経済学者と評価されています。東京帝国大学出身で大蔵省に入省しますが、大病のため療養し、日銀政策委員を経て、池田首相に請われてブレーンになっています。

 この人については、日本中、いや世界中が驚いたことがあります。首相顧問としての発言で、「日本は1961年から71年にかけての10年間、GNP(当時はGDPではなくGNPを使用)成長率平均10.4を達成する」と発表したのです。この発言は世界中で話題になりましたが、結果はというと「10.9」を達成していました。この勢いだから、「日本は、どこまでも行くぞ」という感じになりました。


●池田勇人の所得倍増計画を支えた「下村理論」


 「下村理論」は、「ハロッド・モデル」というシンプルな理論が元になっています。経済が成長軌道に乗っているときには、産出係数において設備投資が決定的に働く。では、どの程度設備投資をするとGNPが成長するか。つまり、民間はGNPの中で設備投資比率をどのぐらい見ているか。これは、かけ算をすれば実際の成長が見えてきます。さらに、輸入依存になると外貨が出ていくので、世界経済の伸びに対する輸出の弾力性はどのくらいかを割り出していきます。

 この計算式には5つか6つしか変数を使いませんから、封筒の裏にでも書けてしまいます。それを池田首相にたたき込んだのです。池田首相のような政治家でも、これなら分かりますから、「お任せください」と、ガンガン言っていたということです。

 安倍首相にも、そういうところがありますね。彼は浜田宏一氏に吹き込まれて、国会で「皆さん、デフレは貨幣減少なんですよ」と言っています。素人があのように断言すると強いので、皆が信じてしまうわけです。それで、また「貨幣を増やせばインフレになるのです。いいですか」な...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『昭和16年夏の敗戦』と『昭和23年冬の暗号』
『昭和16年夏の敗戦』『昭和23年冬の暗号』が映す未来とは
猪瀬直樹
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子

人気の講義ランキングTOP10
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
編集部ラジオ2025(23)垂秀夫元中国大使が語る習近平中国
垂秀夫元中国大使に習近平中国と米中関係の実態を聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
人間はどうやって「理解する」のか?『学力喪失』から考える
今井むつみ
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(2)日本を根本から検討し直す
常識を覆せ…「無税国家」「剰余金分配国家」は実行可能だ
松下幸之助
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(5)現代社会の問題点と親性脳のスイッチ
親も子もみんな幸せになる方法…鍵は親性脳のスイッチ
長谷川眞理子