敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ヤルタ会談の裏の目的…ソ連対日参戦のための極東密約
敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(8)ヤルタ会談の密約と本土上陸作戦
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏による島田塾特別講演シリーズ。1945年2月のヤルタ会談では、日本の戦後処理について米ソ間で密約が交わされ、また、この頃のアメリカでは、「日本は狂信的」という見方が定着していた。まさに、日本は敗戦後、米ソの直接分割統治を免れ得ない危機にさらされていたのだ。しかし、そこに一石を投じた女性学者の存在があった。(2016年7月8日開催島田塾第137回勉強会島田晴雄会長講演「敗戦、占領、そして発展:日本は異民族支配からいかにして再生したか?」より、全13話中第8話)
時間:9分54秒
収録日:2016年7月8日
追加日:2017年7月29日
≪全文≫

●ヤルタ会談の密約-極東についての秘密協定


 1945年2月4日、原爆投下の前ですが、ヤルタ会談が行われました。今はウクライナからロシアが併合したクリミア半島で行われましたが、ここはとてもきれいな保養地なのです。リヴァディア宮殿で、2月4日から1週間にわたって会談が行われ、最後に米英ソの3首脳の公式会談で締めくくられました。

 会談の目的は何かというと、ドイツの非軍事化、米英ソ仏による4カ国の分割占領、国際連合を設立するためのサンフランシスコにおける連合国会議召集、それから解放後のポーランド政権のあり方の審議。主眼は欧州ということになっていたのですが、実は極東について秘密協定があったのです。

 これは何かと言えば、フランクリン・ルーズベルト大統領が、43年秋以来、スターリンに対して何とか日本打倒の協力を要請し続けていたのです。スターリンは「ドイツが負けたら、3カ月後をめどに参戦する」と約束しましたが、「われわれが参戦するなら見返りが欲しい」と言ったのです。ルーズベルトは、スターリンが太平洋の出口を必要とするということが分かっていましたから、日露戦争で日本が正当に獲得している南樺太を「返します」と約束しました。それから千島は、1875年の日露間の平和協定で日本の領土と認定済みですが、これを「引き渡す」という約束もしているのです。このことを後にハリー・S・トルーマン大統領が知って、「何をやっているんだ、うちの大統領は?」と、もう仰天するのです。


●米強硬派による2つの本土決戦実施案


 ところが、その終戦の年の春まで、日米には強硬派がいました。ルーズベルトは強硬派で、軍ももちろんそうでした。日本は陸軍が強硬派です。彼らは両方とも「日本本土決戦だ」と考えていたのです。

 アメリカには詳細な実施案がありました。皆さん、ご存じかどうか。2つあるんです。1つは南九州上陸作戦。これは“Olympic Operation” と言います。それから関東平野侵攻作戦、“Coronet Operation”。11月1日には南九州上陸作戦を予定。空爆、鉄道破壊、大陸と遮断、日本列島を封鎖する。1946年3月には関東平野を全面侵攻作戦で首都制圧。粉々にして、息の根を止める。ゲリラも制圧する。ゲリラがいるから完全制圧は時間がかかるだろう、1946年末だとされていました。

 なお、軍部はこの南九州上陸作戦について、ドイツに無条件降伏を強いた経験を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ