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占領、同盟関係、平和憲法―日本の戦後復興の要因を探る

敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(11)占領後の日本の戦後復興(上)

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
降伏文書調印に向かう日本政府全権
占領後の日本の戦後復興の中で、考えなければならないポイントはいくつかある。まず最初に、占領は復興を助けたのか。仇敵だったアメリカと日本が同盟関係を結んだのはなぜか。また、平和憲法をつくったのは誰か、などである。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が主宰する島田塾の特別講演で、「戦後」の意味を考え直したい。(2016年7月8日開催島田塾第137回勉強会島田晴雄会長講演「敗戦、占領、そして発展:日本は異民族支配からいかにして再生したか?」より、全13話中第11話)
時間:19:53
収録日:2016/07/08
追加日:2017/08/05
≪全文≫

●14のポイントから 1.早期降伏の決断


 さて、ここまで述べてきましたが、例によって残り時間が36分になりました。これから戦後のことを語らなければいけないのですが、時間がないのは分かっていますので、皆さんに提案があります。以下については、論議のエッセンスを要約することで、本講義を締めくくりたいと思うのです。

 皆さんのレジュメに、たくさんの項目を挙げました。いずれいつの日か「占領後の日本の戦後復興」について詳しく語りたいと思いますが、今日は結論まで持っていきます。結論は、14のポイントに整理されています。さらに整理すると13になります。

 一つ目は、「早期降伏」。つまり、日本が早期降伏をしたことによって、ダメージが最小に食い止められたのです。

 今日、皆さんは講義をずっと聞いてこられましたが、ポツダム宣言を起草したグルー国務次官とスティムソン大使は、すごい人でしょう? 大統領から国民まで挙げて「日本を廃墟にしろ」「全部なくせ」「直接占領だ」と言っていたのに、彼らの途方もない努力が功を奏した。このくだりを勉強する最中は、私も手に汗を握りました。知日派の努力には脱帽です。彼らには「京都を残したい」という意志があったし、日本の歴史と伝統や、あるいは大正デモクラシーなどにも魅力を感じたのかもしれません。しかし、彼らの努力によって、それが実現しました。

 また、ルーズベルトがいいタイミングで亡くなってくれたのも幸運でした。さらに天皇陛下の御聖断、鈴木首相の決断も大きかった。

 もしも本土決戦になったら、どうなっていたのでしょうか。アメリカは、「南九州上陸作戦(Olympic Operation)」と「関東平野侵攻作戦「Coronet Operation)」を用意していました。先の講義でも触れましたが、欧州諸国の第二次世界大戦による被害は、ポーランドやドイツで死者700万人、ロシアは2,000万人です。もし日本であれば、どういうことになるか。それを考えても、早期降伏ができたのは、大変なことだったのです。


●2.間接占領のメリット


 二番目は「間接占領」です。

 まず、政府が主体性を持って降伏をしました。アメリカも占領軍も直接占領を考えていましたが、ここでも知日派の努力と日本の幸運がありました。やはりルーズベルトが亡くなったことは、本当にありがたいことでした。それから、何も知らない人が国務大臣になっ...
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