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50年前にも、福原愛ちゃんがいた?!

失われている「保守の知恵」~友好の井戸を掘った人たち(8)松崎キミ代

佐高信
評論家
概要・テキスト
卓球を通じて周恩来に可愛がられ、厚遇を受けることで日中の友好の井戸を掘った松崎キミ代。彼女のような人々のスポーツ交流や文化交流がもたらす国際関係上の恩恵について、自身も卓球青年だった佐高信氏が熱く語る。
時間:11:06
収録日:2014/02/07
追加日:2014/07/24
≪全文≫

●周恩来に可愛がられた卓球選手・松崎キミ代


 前回、荻村伊智朗さんの話をしましたが、残念ながら、私は生前の荻村さんに会うことはできませんでした。しかし、『ハナ~奇跡の46日間』の試写会がありまして、前回も申し上げたように、荻村さんのことは『ハナ』の上映に携わった人も知らなかったのですが、私がその試写会で、ちょうど前回のように荻村さんのエピソードをお話ししたところ、たまたまそこに荻村さんの娘さんがいらっしゃっていて、感激の対面を果たしました。

 もう一人、卓球を通じて国同士の友好の井戸を掘った人として忘れてはならないのが、松崎(現・栗本)キミ代さんです。松崎さんには、私は何度も会っています。女子のシングルスで二回世界チャンピオンになっている人で、私より6つ、7つ上。当時の日本ではちょっとしたアイドルで、ぽちゃぽちゃとしていて、今でいえば福原愛ちゃんをさらに強くしたような存在でした。彼女は周恩来にとても愛されました。周恩来からすると松崎さんは娘か孫の世代ですが、自分に子どもがいなかったこともあって、本当にわが子のように可愛がったのです。

 1961年に北京で開かれた世界卓球選手権では、日中国交回復前ということもあり、日本人に厳しい判定や状況が多かったそうです。例えば、卓球には、サイドボール(テーブルの側面に当たったボール)はコートに入っておらず、エッジボール(テーブルの縁に当たったボール)はコートに入っているとみなすルールがありますが、この大会では、日本選手はエッジボールをサイドボールと判定されて、本当は自分の得点になるところを相手の得点にされてしまうこともあったほどで、非常に不利な戦いを強いられたと言います。

 前回チャンピオンだった松崎さんは、優勝候補筆頭でしたが、残念ながら準決勝で敗れてしまいました。今お話ししたような審判の判定の問題もあったのかもしれません。少なくとも、松崎さんがミスすると満場の拍手が起こるような「日本憎し」の雰囲気はあったそうです。

 そのような中でも松崎さんが笑顔を忘れずにプレーする姿を周恩来が見ていて、「負けたけれども、あなたが1番だ」と松崎さんに言ったのです。それ以来、周恩来は松崎さんのことをとても可愛がるようになりました。それどころか、パーティーなどで松崎さんの姿を認めると頬をぽっと赤らめるほど、周恩来は松崎さんのフ...
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