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これからの30年間は中国の時代になるのか

アンチ・グローバリズムの行方を読む(5)中国の戦略

情報・テキスト
中国の特徴は、人権保護や個人情報の保護よりも、国家の経済発展を優先させることで、繁栄していった点にある。こうした方針は他の新興国にも共通してみられ、今後の世界経済を考える上でも無視できない。また、中国は途上国支援によって影響力を行使する戦略も積極的に講じている。(全6話中第5話)
時間:11:29
収録日:2019/11/07
追加日:2019/12/28
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≪全文≫

●中国の国内的状況はどうなっているのか


―― アメリカ国内の分析が先ほどありましたが、中国の今後の戦略はどうでしょうか。これまで「一帯一路」や「製造2025」といったスローガンで政策を進めてきましたが、昨今の米中対立によって少しブレーキがかけられています。今後、国内的な動きも含めて、中国は壁にぶつかっていく可能性もあるかと思いますが、そこについてはどのように見ていらっしゃいますでしょうか。

岡本 紆余曲折はあるでしょうが、基本的にあの勢いは変わらないでしょう。14億人の優秀かつハングリーな人々を抱え、目的達成のための手段を選びません。人権保護や個人情報保護などは二の次です。中国の国家情報法第7条のなかに、「全ての組織と個人は国家の情報収集活動に協力する義務がある」と書いてあるのですよ。そんな国は世界中、他にないですよね。


●中国は周辺の富を吸い取るブラックホールである


岡本 このビッグデータの時代、中国にはありとあらゆるデータが為政者のところにあるわけでしょう。人権や自由、民主主義などを全部すっ飛ばして良いとなれば、経済発展のためには独裁者の政権が一番都合良いのです。開発独裁型ということです。中国はそれを実現しているわけで、実際にこれによって利益を得る人たちが多いことは事実です。

 やはり、今までにない形で繁栄している「異形の国家」が出現しているということなのでしょう。そして、ブラックホールのように周辺の富を吸い込んでいるという格好です。先日のペンス副大統領演説でも、中国は激しく非難されていますが、その原因の1つは中国の借金漬け外交にあります。スリランカなどが典型ですが、多額のお金を貸しこんで、相手がそれを返せなくなったら、その国が造った港などを全部リースで使う権利を奪い、結局自分のものにしてしまうというやり方です。これを、一帯一路政策でどんどん進めているわけです。

 だから冷戦後、今までの30年間は、この新しい収斂点を求めて、国や価値が動いていた時代です。これからの30年間は、中国の30年間になるんじゃないですかね。簡単に言ってしまえばね。


●新興国の位置付けが、今後ますます重要になっていく


伊藤 少し違った視点でお話しさせていただくと、1990年ごろから、つまり先ほどおっしゃっていた時代から30年間は、先進国の長期金利はずっと下がってきているのです。これに対してはいろいろな解釈があるのですが、一番オーソドックスな解釈は、残念ながら、先進工業国の成長力が落ちているというものです。そうした中で、2000~2001年ごろから出てきたのは、BRICsについての議論でした。ブラジル、ロシア、インド、中国といったところが今後伸びていくのだから、そっちに投資すれば良いんじゃないかという議論です。

 こうした構想は、リーマンショックで一度頓挫しました。しかし、一般論としてみると、先進国の直面していることと、途上国や新興国が直面している状況は、かなり違っています。したがって、中国の立場から見ると、新興国や途上国の人たちをいかに自分のなかのネットワークに入れていくかということが、経済的に見ても重要です。

 一帯一路は、そういう観点を持っている面もあるのかなと思います。先ほどのデカップリングの話に戻ると、これで旧先進国と旧新興国・途上国に分かれていくかといえば、話はそんなに簡単ではありません。例えば、インドがどう動くか、あるいはアメリカから見たとき、どうなるかといったことも絡んできます。いずれにしても、中国が世界経済の中でどうポジションを取るかということを考えるときには、新興国の出方が非常に大きな意味を持ってくるのではないかと思っています。


●新興国と独裁政権の深い関係


岡本 新興国や途上国の中では、独裁者とはいわないまでも独裁的な手法のリーダーが増えてきています。トルコのエルドアン(レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領)、エジプトのシーシー(アブドルファッターフ・アッ・シーシー大統領)、サウジアラビアのMBS(ムハンマド・ビン・サルマン皇太子)、メキシコのロペス・オブラドール(アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領)、ブラジルのボルソナーロ(ジャイル・ボルソナーロ大統領)などです。もっともメキシコとブラジルの場合は、蓋を開けてみたら「割とまともではないか」という評価が出てきているようです。こういう人たちが、開発独裁型の経済成長を志向し始めたら、また変わっていきますよね。

 「今後30年間が中国の時代じゃないか」と言ったのは、僕の専門的立場からいうと、地政学的な安全保障の面でも、中国の覇権確立が、東アジア地域で実現しつつあると考えたからです。これがますます固定化していくんじゃないかと思うので、日本の今後の選択を考える際にも、この点...
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