●今の政治家は全員、芸能人
―― 幕藩体制にしても、徳川家康がうまく作った統治の仕組みが、ある段階から形式主義になってしまいました。
執行 絶対なります。
―― 形式主義で動いて、「お前はこの畳の後ろの2枚目に座れ」とか全部やっていたわけです。そんなことをやって行き詰まったおかげで、ペリーがきた時に老中が阿部正弘だったこともあり、勝海舟や小栗上野介が登用され、福沢諭吉も蕃書調所に潜り込めた。目利きがいると、別選の人が出てくるわけです。勝の系譜でいけば、最後は竜馬の弟子の陸奥宗光まで出てくる。
でも、結局あのくらいでしょうか。あの時代は金銀交換比率を間違えてしまい、ものすごく米が上がってインフレになりました。経済がガタガタになって、混乱の幕末が10年あって、明治国家ができてから西南の役まで10年、この20年で再構築するわけです。人材の見つけ方も変わるし、登用の仕方も変わります。ああいう感じでしょうか、今の日本に求められるのは。
執行 少し違います。あの時代は大衆がそれほど力を持っていません。だから人材を選べました。貧乏人だろうが何だろうが。人材を選ぶエリート層、つまり武士階級がいましたが、今はいないですから。
―― 武士階級のような、しっかりしたところもなくなってしまった。
執行 昔は階級社会ですから。ヨーロッパも階級があって、エリート階級の人間が、貧乏人の優秀な子どもを選ぶわけです。では今、誰が選ぶかというと、大衆です。大衆は芸能人しか選びませんよ。
大衆が悪いわけじゃないんです。大衆というのは、そういうものなんです。だから今の政治家は全員、芸能人だというのです。だって人気取りだけですから。自分の人気取りをしている人間を芸能人と言うのです。人気があるほど偉い。これは悪いのではなく、芸能とはそういうものなのです。だから必然的に選挙制度の政治家は、芸能人になるのです。
芸能人は武士でもないしエリートでもないのですから、これはもう無理です。だから日本はきついです。アメリカのほうがまだましで、選挙制度と言っても日本みたいに本当に信じているわけではなく、キリスト教もまだ生きています。もっと違う要素が入っていて、日本みたいに選挙制度で政治が全面的に動いていません。ヨーロッパもそうです。
―― 日本は選挙制度から議会制から、欧米から持ってきました。でも彼らはオリジナルで作っていますからね。アメリカは独立するために作ったのですから。
執行 オリジナルということは、「間違っている」のです。だから裏があるのです。
―― しかも変えられる。自分たちで作ったものだから。逆に自分たちで作っていないと、ドグマ(教条)になってしまいます。
執行 優等生ですよね。これはもう仕方がないです。だから日本が一番やられるでしょう。本当は選挙制度をどうにかできない限りは、日本は立ち直ることはないです。必ず滅びます。
だから僕などは、滅びた後の準備を今しているのです。滅びた後の日本の立ち直りに、どうやって自分が役立てるか。この芸術もそうです。僕に今できることは、滅びた後の日本人の魂の賦活に役立つことをすることで、そのために本も書いています。
だから僕の本は、現世の人には書いていません。僕は滅びるのは、あと20年と思っています。20年後、30年後の滅びた後の魂の賦活のために一生懸命、本を出しているのです。古本でもいいから残れば、日本人の魂の糧になると信じています。体当たりした人間の意見は価値があります。戸嶋の絵も体当たりだし、僕の人生も体当たりで来ています。本も一行もウソを書いていません。
僕が今出している本が、この現世で生きている人に対する意見だと思ったら大間違いで、僕は意見を言う気はないんです。もう滅びるのですから。相手にするのは滅びた後です。これを言うと元も子もないですが、元も子も本当にないんです。
―― その辺の覚悟がすごいです。
執行 覚悟はあります。そのためにやっています。これも「オリジナル」だから言えることなのです。だから他の人に言わせれば、多分間違いなんです。今の政治家も官僚も、「そんなことを言ったら身も蓋もない」と言うでしょう。しかし、本当のことは身も蓋もないのです。身も蓋もあるものは、きれいごとなんです。間違いなんです。
●マスコミの偽善は悪人を許さない
―― 仏陀もそうでしたね。
執行 家族を全部捨てました。家族を捨てた人間は悪人で冷たいというのなら、釈迦がその代表なんです。それが真実です。世の中は釈迦のような女房子どもも捨てるような非情な男が正しいんです、極端に言えば。それがわかる社会に、もう一回戻らないとダメなんです。
―― やはり、そのリアリティーですね。
執行 自分がやるかどうかは別ですが、社会を指導す...