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滅びるとき、多くの人は「理想社会が実現した」と思うだろう

魂の芸術(10)人間が「自分のオリジナル」で生きる社会

概要・テキスト
IT産業の社長などが言うような、人間が遊んで暮らせる社会、社会保障が行き届いて、AIロボットが嫌な仕事は全部やってくれて、人間は嫌な労働もしないような社会は、きっと実現するだろうが、そう考えることによって実は人類が滅びるのである。そうではなくて、人間が「自分のオリジナル」で生きる社会にしなければならない。そのためには、不良を許し、間違いを許さなければならない。なぜなら、「正しいものを描こう」としたら、いい絵は描けないのというのと同じだからだ。(全10話中第10話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:13:55
収録日:2019/09/11
追加日:2020/01/10
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≪全文≫

●敗者復活戦が何度もあった時代


執行 いまの家庭は、どこの家庭を見ていても、もはや親子の愛もありません。自分の幸せを望んで、うまくやっているだけです。家庭を保持するために、子どもにも女房にも正しいことを言わず、「まあ、いいだろう」「いいんじゃないか」と。女房のほうも一緒で、「亭主は金を持ってくりゃいいや」みたいな。今は、そういう社会です。どこを見ていてもそう思います。それは全部、戦後社会が「間違ったことを許容しない社会」になったから起こっていると思っているのです。

 「正しいことしかしちゃいけない」「正しく生きろ」「正しいことをしろ」と言うと、もう人間、動きが取れないです。誰だって、そうなります。僕だって「正しいことしかしちゃいけない」と言われたら、今しゃべっていることは全部しゃべれません。独立もできないし、会社もできない。何にもできないですよ、人間の意志に関しては。

 では昔の人間がどうして生きられたかと言うと、例えば戦前の日本社会を見ると、「間違ったことをしてもいい社会」だからです。昔はみんなそうです。

―― 陸奥宗光なんて紀州藩を脱藩して、勝海舟の弟子になって、坂本龍馬とともにいろんなことをやりました。それで紀州藩は、一番最初に洋式装備に変えることにもなるのです。だけど薩長閥に入ってから、その中で反乱を企てて1回ムショ送りになる。それでも井上馨や伊藤が彼の才能を見抜き、金を出してヨーロッパに送り出し、戻した。日清戦争を勝ったのは、伊藤と陸奥の名コンビのときです。すごく社会に余裕があるし、フレキシブルです。そのフレキシブルという形が、すごいです。

執行 今出てきたのは、みんな今の政治家が好きな人たちですが、彼ら明治の政治家や明治維新の志士たちの人生を見てごらんなさい。今ならみんな処刑です、牢屋です。でも、そういう生活を送れた人だから、あんな政治ができたわけです。

―― 敗者復活戦が何回もある感じです。能力があって、ある種、上も度量があった。人も足らなかったから、いろんな空間に隙間がいっぱいあったのではないでしょうか。

執行 そうです。それから悪いことだって、いい。正確には悪いことではなく、自分が本当に思ったことをしていい社会なんです。家庭でも、子どもは殴られるで済むんです。だから殴っていい社会じゃないとダメです。間違ったことをしたら殴られるの...
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