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幸せになるための条件は4つに集約することができる

「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(3)自己実現と成長の「やってみよう因子」

前野隆司
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
概要・テキスト
日本人を対象としたアンケートに基づく研究によれば、幸せの源泉は4つの因子に集約することができるという。その1つ目が、「やってみよう因子」という自己実現と成長の因子である。自分の仕事などに対して、やらされ感ではなく、やりがいをもって取り組むことが幸福度に大きく関係する。そして、それが生産性や創造性の向上につながることを、ドラッカーのレンガ積み職人の話や企業での実例を挙げながら解説する。(全7話中第3話)
時間:11:21
収録日:2020/07/01
追加日:2020/08/18
キーワード:
≪全文≫

●幸せには長続きしない幸せと、長続きする幸せがある


 さて、私の研究に少しずつ移っていきたいと思います。これも重要な点ですが、幸せには長続きしない幸せと、長続きする幸せがあるという研究結果があります。長続きする幸せとしない幸せでは、長続きするほうがいいですよね。

 それでは、具体的には長続きしない幸せとは何でしょう。スライドに示したように、「地位財」が長続きしない幸せです。地位財(positional goods)とは、ロバート・フランク氏が提唱した経済学用語です。これは、周囲との比較により満足を得られる財のことを指します。より具体的には、所得や社会的地位、物的財が挙げられます。簡単にいうと、金・物・地位の三つです。金銭欲や物欲、名誉欲は誰しもが持っていると思います。ところが、この欲求を満たしたことによる幸せは持続性が低い、つまり長続きしないことが分かっています。

 例えば、給料が増えるとうれしいですが、その喜びは1年も続くことはあまりありません。むしろ、もっと上がるといいと思うでしょう。また、例えば課長に昇進した場合でも、1年間喜んでいる人はいません。重圧もあれば、もっと偉くなりたいという欲求も出てくると思います

 どういうことかというと、地位財をある程度得たとしても、その状態に慣れてしまうので、そうなるともっと上のもの、大きいものが欲しくなります。しかし、より大きな財を得ても、先ほどの限界効用逓減の法則があります。最初は、財を得ることで幸せは大きく上昇します。初めて平社員から主任に昇進したときには、ついに主任になったと喜びますが、課長から副部長に昇進しても、周りも出世していて、まだまだだと思ってしまいます。お金や出世による地位の上昇から得られる幸せは、増えるにつれてより幸福度に寄与しなくなることが一つあります。もう一つの理由として、より上を見ると、さらに次が欲しくなるという効果で、長続きしないといわれています。

 一方で長続きする幸せは、ここに書いたように環境・身体・心の幸せです。Well-beingの定義として、精神的・身体的・社会的に良好な状態が挙げられていました。環境、つまり社会的に良い状態にあること。そして身体的に良い状態にあること、心が良い状態にあることが、長続きする幸せのために重要なことなのです。金・物・地位などの...
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