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抗議運動にも脅迫状にも、絶対折れなかった精神の根幹とは

渡部昇一に学ぶ教養と明朗(5)勇気を持つには何が必要か

概要・テキスト
激しい論争にも臆せず突き進み、反対派の抗議運動の闘士たちに、大学での講義で毎時間突き上げられても絶対に折れなかった渡部昇一先生。自宅にも脅迫状や電話が舞い込んでくる。しかし渡部昇一先生は、自身の心の中で『菜根譚』の「雁寒潭をわたる」という言葉を唱えて、どれほど厳しい局面に立たされているのかを家族にも悟らせなかった。どうして、そんな強さを持つことができたのか。それを考えていくと、「天と向き合っている」姿が浮かんでくる。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:23
収録日:2020/09/09
追加日:2020/11/06
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≪全文≫

●「雁寒潭を渡る」…抗議運動の闘士相手にもまったく折れなかった


―― あと先ほど言われた「勇気」に関する、印象深い渡部昇一先生のエピソードとして、(作家の)大西巨人さんと論争したときの話があります。毎回、講義をするときに、当時のことですから学生運動の闘士たちがやってきて、ヤーヤーヤーヤーと騒ぐ。

 そのような時期に、昇一先生は夜寝る前、『菜根譚』の「雁寒潭を渡る」という言葉をずっと唱えていたと、おっしゃっていました。「雁が過ぎていったら、あとは静かな水面が残るだけ」と。その言葉を唱えることで、「この騒ぎもそのうち静かになるだろう」と一歩も折れずに、やいのやいのと言われても頑張り続けた。そして奥様も、そこまで追い込まれていることに気づかないくらいだったと。印象深いお話だと思いました。

 学生運動の闘士から突き上げられるのは相当なプレッシャーだったと思いますが、それに平然と立ち向かわれた。この勇気が、どのように生まれるのか。

渡部 そこはわかりせんが、本当に父はいざとなったら絶対折れない人でしたので、通したのだと思います。そうすると、そのお話でいえば、だんだん、講義を受けている学生が味方してくるんです。最初は怯えて何も言わなかったのが、「おまえたち、出ていけ」と。そちらが味方になってくる。

―― 学生運動ではないほうの方々ですね。

渡部 そうです。それが、だんだん強くなってくる。しかも論争は、必ず打ち負かしていたらしいので。それで、だんだん引いていって、向こうから和解してくるような感じになってきた。

 そうしたら、ほかの大学から、「渡部先生はどうやって撃退したんですか?」という問い合わせが、けっこう来たらしいです(笑)。撃退したつもりはないけれど、まったく折れなかったという話を、後年、聞きました。

 このときに父らしいと思ったのは、母はまったく気がつかない。もちろん、子どもも気がつかない。だから「しんどい」といっても、たぶん他の人にはわからなかったし、家族にもわからなかったということです。

 あと、いろいろ脅しも受けました。やはりけっこう怖い脅しです。今は、保守といわれる論客の方もたくさんいるし、むしろ父より過激な主張をする人もたくさんいらっしゃる。でも当時はかなり本当に厳しい状況で、脅迫もされました。今のようにインターネットではないから、直接電...
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