●通信環境の異変とサイバー攻撃の可能性
(今回は中国による)武力侵攻のシナリオを考えたいと思います。シミュレーションです。まず、何が起こるでしょうか。私は、武力侵攻が行われるのは2023年の10月ごろと、一応想定しておきます。この頃の日本は、新しい安全保障戦略で予定してあることは何一つできていないですが、それが習近平氏にとってはいいことです。何一つできていないということが一番勝ち目がありますから、おそらくそうなると思います。
そのような状況を想定していますが、するとどのようなことが起こるでしょうか。おそらく2023年の夏ごろから原因不明の異常現象があちこちで起こるでしょう。1つは通信環境に異変が起こる。ネット通信に障害が起こり、インターネット通信が頻繁に不通になる。企業、官庁、社会のインフラ機能が低下する。個人にも不便なことが起こって不安が高まる。さらに金融機関に故障が出てくる。
銀行や金融機関の取引や業務の不全が起こる。(いわゆる)システム機能障害ですが、原因は不明で、復旧には時間がかかる。また、データセンターが機能不全になる。データセンターは多くの企業で利用しており、その機関も利用しているので、それらが業務停止となり、その原因が分からないので復旧に時間がかかる。
さらに、電力が供給機能不全となり、発電所や変電所の機能障害が起こる。つまり、停電、電圧低下、企業活動、病院、家庭生活に障害が生まれる。それから鉄道のダイヤが混乱する。鉄道の運行における同時多発機能障害、例えば運行システム障害、ダイヤの混乱で事故のリスクが高まる。などの社会不安が大きくなるのです。
これは一体何か。おそらくどこか不明なところからサイバー攻撃を受けているのではないかと、誰でも考えられることです。日本はサイバー防御態勢がものすごく弱い。むしろ欠落しているといってもいいでしょう。
多くの国々はサイバー防御態勢を整備、強化(イスラエルなどは典型)していますが、そういう国々では、「Active Cyber Defense(アクティブ・サイバー・ディフェンス)」というものを行っています。つまり、サイバー攻撃の足元を突き止める技術を確立しています。日本はまだ研究段階で、自衛隊の専門部隊はそれなりの訓練をしていますが、政府には政府全体を防護・管轄する仕組みがないのです。民間企業のほとんどは無防備の状態なので、通信施設、データセンター、金融機関、電力システム、鉄道など、機関インフラは容易にサイバー攻撃で機能不全に陥りやすいのです。
このようなサイバー攻撃の発信元の特定は難しいので、原因が分からず社会不安を増幅させます。発信元はおそらく日本を取り囲んでいる中国、北朝鮮、ロシアなどの可能性が高いのですが、確証がないので責任を問えず、的確な批判も反撃もできない。たぶん、北朝鮮の疑いが高いかなという感じもするのですが、それは北朝鮮が弾道弾の発射をものすごく繰り返しているからです。
弾道弾を1発撃つのに何十億円もかかることをやっているわけですが、北朝鮮のGDP(2019年)は335億ドルしかありません。1年間にかかる費用はその3パーセントに達するといわれていますが、北朝鮮は経済制裁を受けていて経済は不調で、そういう中で費用をどうするのか。国連が報告書を出しているのですが、サイバー攻撃で暗号資産を盗み取っているというのです。これまで判明しただけでもおよそ10億ドル、GDPの3パーセントほどということです。
北朝鮮にはサイバー部隊が1万人ぐらいいて、優秀な青年はみな行きたがっており、給料も高いのです。また、日本企業からたくさんの金額を窃取していることは知られていて、かなり経験豊富です。
ですから、彼らがやるとなれば、今私が申し上げたことは朝飯前にできてしまうわけです。このようなことが起こっているのではないかというのが、その理由の1つです。
●北朝鮮とロシアを利用した陽動作戦
次の段階で起こりそうなことは、陽動作戦です。中国は、本体は動きません。北朝鮮のミサイルがどんどん飛んでくるようになり、それが以前より増えました。EEZ(排他的経済水域)の内側に多く着弾しています。この前、中国が同じことを1回やって日本政府は猛烈に抗議しました。日本政府はこれらが北朝鮮から飛んできたものだと分かっていますから抗議していますが、発射は止まず、着弾は続いています。
そのうちもっと激しくなって、日本海側のいくつかの県で、山林とか農地に着弾するでしょう。日本はイージス艦やPAC3で迎撃することになるわけですが、極超音速や変則軌道のミサイルが一度にたくさん来たりするので、迎撃はほとんどできません。それが移動体から発射しているのか、発射元が特定できないことで反撃できないのです。反撃能力について日本ではたくさ...