テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.05.01

「働き方改革」の実践で重要なのは管理職の働き方

 あなたの会社ではノー残業デーを実施していますか? 実施している場合、その効果を実感できていますか?実は、ノー残業デーの前後の日は、かえってそのしわ寄せで残業時間が増えるというケースが少なくないそうです。こうした現状について、「一律にノー残業デーを取り入れても効果は薄い。大事なのはチーム、部署ごとの残業理由を分析して、個々に合った対策を取ること」と語るのは、株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長・小室淑恵氏。多くの企業でワーク・ライフバランスのコンサルティングを行っている経験から、「100社あれば100通りの働き改革があるはず」と断言します。

最も重要なのは管理職自身のワーク・ライフバランス

 小室氏は働き方改革の実践において4つのポイントを挙げています。そのなかでもっとも重視しているのが、管理職自身のワーク・ライフバランスです。実際に、管理職の帰宅時間が遅い部署は部下の残業が多い傾向にあるため、管理職自身のワーク・ライフバランスを見直してほしいと、小室氏は言います。

 実は、地域社会で一番嫌われるのは、今まで地域でのコミュニケーションなど見向きもしなかったのに定年後に急に顔を出し、現役時代の仕事の話ばかりする人なのだそうです。「趣味や特技一本で自己紹介できるかっこいい定年後ライフのために、今から自己研鑚を積みましょう」というのが小室氏からの貴重なアドバイスです。

管理職が要となる働き方改革マネジメント

 他の3つのポイントですが、1つは「時間制約を持たない部下はいないと認識すること」です。たとえば育児や障害を持つ親族がいるなど、誰にも事情はあると認識して、一部の人に甘えるような仕事の渡し方をしないということです。

 「仕事を捨てる・断る・ミニマムにする。この3つのリスクを管理者が引き受けること」も大事なポイントです。上から降ってくる仕事を部下に丸投げでは管理職失格です。部下を疲弊させないためにも、仕事の取捨選択を的確に行うことが肝要です。

 最後のポイントは「時間と場所の柔軟さを報酬として活用すること」。親の介護、子どもの学校の用事、自身の通院などで昼間の数時間が必要な場合、その前後は出社せずに在宅勤務でカバーするといった柔軟な対応があってもいいでしょう。「会議は全員対面で」とこだわらないことも重要です。

 いずれも、先に述べた管理職のワーク・ライフバランスに対する意識が基盤にあってこそのポイントということがよく分かりますね。

働き方改革実践のユニークな方法あれこれ

 これらの4つのポイントに基づいて工夫された改革のための具体的な方法は、ネーミングを一見しただけでもかなり興味をそそられます。

 その一部をご紹介すると、たとえば「朝・夜メール」というものです。ブレークダウンした仕事内容を、朝、上司や同僚にメールで送り、一日の仕事を終えたあとその振り返りのためのメールを夜に送るというものです。この予定と実行のずれを振り返ってチェックしていくことで、内的要因に気づけるのが大きなメリットなのだとか。できなかったことは、ついつい「打ち合わせが長引いた」とか「急な仕事をふられた」などと外的要因のせいにしてしまいがちですが、実は自身の用意・知識の不足といった内的要因によるものだったということが案外多いのです。

 その他、「タイマー会議」はご想像の通りタイマーを使って会議時間に制約を設けるというものですが、話の長い人がいるとじりじりとタイマーがその人に寄っていくというルールが何とも実践的かつ効果的ですね。

ストラップ一つで「残業」の意識づけが変わる

 そうしたなかでもインパクトが大きいのは「ストラップ残業許可」なるもの。これは、残業する際には上司に申請してストラップをかけなければいけないというものですが、そのために非常に面倒くさい申請書類を書かないといけないのだそうです。かつ、ようやくもらったストラップは、背中一面ほどの大きさで、しかも毛筆で「定時までに仕事を終えられなかったので残業しています」と黒々と書かれているというのですから、このストラップは、残業はよく働く社員の証ではなく、「カッコ悪いもの」という意識づけに効果てきめんなのです。

 ということで、皆さんも「100社あれば100通りの働き方改革のやり方がある」を合言葉に、ご自分の会社、チームにあった方法を見つけてみませんか。もちろん、ワーク・ライフバランスを実践している管理職がキーマンとなるのは、言うまでもありません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

荻原重秀と大岡越前のリフレ政策…最適な通貨量と経済発展

荻原重秀と大岡越前のリフレ政策…最適な通貨量と経済発展

田沼意次の革新力~産業・流通・貨幣経済(4)田沼意次の評価と具体的政策

田沼意次は、全方位に向けた気配り、心配りを重んじ、また、金融や財政の大切さを強調していた。そんな田沼意次が、さまざまなブレインの声を集めつつ、進めていこうとした政策とは何だろうか。そのことを見ていきつつ、田沼時...
収録日:2025/01/28
追加日:2025/06/20
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員
2

昼寝が認知症予防に!?脳のグリンパティック・システムとは

昼寝が認知症予防に!?脳のグリンパティック・システムとは

睡眠と健康~その驚きの影響(3)グリンパティック・システムと脳の健康脳

近年の研究では睡眠に「脳の老廃物を除去する」働きがあることが分かってきた。脳に老廃物が溜まると、それが脳の神経組織に障害を与え、認知症(アルツハイマー)を発症するのだという。今回は、そうした「グリンパティック・...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/19
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

なぜ「やる気のある社員」が日本では6%しかいないのか?

なぜ「やる気のある社員」が日本では6%しかいないのか?

営業の勝敗、キリンの教訓(1)やる気のない社員になる理由

ベストセラー『キリンビール高知支店の奇跡』の著者で元キリンビール副社長であった田村潤氏に、キリンでの経験と営業の勝敗を分けるポイントを聞く。田村氏がかつて高知支店に配属された1995年は、キリンビールがまさに窮地に...
収録日:2020/09/25
追加日:2021/01/25
田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長
4

睡眠の健康への影響~驚きの「5つのミッション」とは

睡眠の健康への影響~驚きの「5つのミッション」とは

編集部ラジオ2025(12)睡眠はなぜ大切なのか?

テンミニッツTVでは、これまでも睡眠にまつわる講義を配信しておりますが、とても人気が高いシリーズになっています。やはり、それだけ関心が高いテーマということでしょう。何しろ、毎日24時間のうち3分の1は睡眠時間です。ど...
収録日:2025/05/28
追加日:2025/06/19
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
5

フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威

フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威

医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威

国家安全保障上の脅威といえばミサイルや爆弾投下などの「武力攻撃」を想定しがちだが、現在、特に先進諸国では異なる見方をしているという。2024年米国下院の特別委員会で、国内に大量の中毒者・死亡者を出して社会問題視され...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/01
山口芳裕
杏林大学医学部教授