社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.10.12

親知らず「抜く・抜かない」はどこで判断する

 10代後半から20代前半にかけて、知らず知らずのうちに生えはじめる「親知らず」。言葉の由来は、昔は一生の寿命が短く、この歯が生える頃には両親が死去していることも多かったため、「親の知らない歯」という意味があるといいます。

 上顎と下顎、計4本生える歯ですが、現代人の顎は4本も奥歯を追加できるほど広くはありません。そこで抜歯という手段を考える方も多いと思います。でも、いざ病院となると、「別に痛くないし……」と及び腰になってしまうことも。

 けれど、それではいけないのです。

気になる場合は歯医者さんへ

 親知らずは必ずしも4本すべてが生えてくるというわけではありません。人によっては4本全て生えない人もいます。逆に20代前半で生えていなくても、30代になってその存在が露呈しはじめるということもあります。親知らずは大人になっても生えてくるものなのです。

 もちろん、正しく生えて、かみ合わせもバッチリということであれば問題はありませんが、横向きに生えてしまって隣の歯を圧迫したり、一部が歯茎から露出して、上手に歯磨きができず虫歯になったりということもあります。どんな病気でも同じですが、痛みや違和感を感じはじめたら病院にかかることが一番です。

 ついつい「このくらいならいいか」と自己治癒を待つということもありますよね。しかし、親知らずは放っておいても抜けることはありませんし、どこかで歯科医の判断をあおがなくてはなりません。

見えないからといって安全とはいえない埋没親知らず

 親知らずが歯茎に埋もれたまま静かにしているのであれば、スルーしてしまおうと考えたくなりますよね。けれど、埋没しているからといって正常に生えているかどうかは、見た目では判断がつきません。見えない歯茎の中で、親知らずが大暴走。レントゲンを撮ってはじめてその不調に気付くということもあります。

 実は親知らずは歯茎から出るように成長すると思われがちですが、実は逆方向、つまり骨の方に向けても成長しています。歯茎の見た目だけではほとんど姿を見せていないのに、立派な太い根が出来上がっていることも珍しくはありません。

 下顎の親知らずの場合、気づかないうちに顎の下を走っている神経にまで根が到達していることもあります。こういった場合、特に下顎は大切な神経が集まっているため、大学病院などの大きな施設での抜歯が必要になってしまいます。

 基本的に、下の歯よりも上の歯の方抜きやすく、痛みの続く期間も短いといわれますが、鼻に繋がっている副鼻腔まで根が入り込むと、処置は難しくなっていきます。この場合、空洞が歯の空いた穴から鼻まで通じてしまうというのですから、想像すると背筋にヒヤリとしたものを感じます。

歯のメンテナンスを習慣に

 成長しすぎてしまって抜きづらいなら、早めに抜いてしまおうと思われた方も多いかもしれません。確かに「親知らずは若いうちに抜け」というのが通説として一般の人々にも知られています。これには、成長して根が張りすぎると抜きづらくなったり、傷口を大きくしてしまうという理由があります。しかし、歯医者の先生たちの間では、これにもさまざまな意見があり、すべて抜くべきという先生も、問題がなければそのまま取っておいてもいいという先生もいます。

 大切なのは日頃から信頼できる医療施設やクリニックを見つけておくことです。親知らずの有無、虫歯の有無に限らず、年に1回など、定期的なメンテナンスを習慣にしていきましょう。かかりつけの先生にきちんと相談を行い、きちんと説明を受け、必要であればセカンドオピニオンを受けることも間違いではありません。そこで、親しらずの抜く・抜かないをしっかりと判断しましょう。

 親知らずの抜歯は部分麻酔ですし、日帰りがほとんどです。来院のその日に抜歯ということは珍しいですが、多くの人が経験し、痛みを乗り越えて来ました。気になる親知らずのある方、最近歯医者さんに行っていないなという方、これを機に歯医者さんへ足を踏み入れてみては?

<参考サイト>
・親知らずを口腔外科で抜歯したほうがいい判断基準とおすすめ口腔外科
http://hanoblog.com/oral-surgery-wisdom-tooth-8780
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
2

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方

熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方

眠る環境は各家庭の状況や個人の好みによって大きく異なるが、一般的に「良い睡眠」のために望ましい環境はどのようなものだろうか。布団や枕などの寝具、エアコンなどの室温コントロールを含めた寝室の環境、また寝つきの良く...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/07
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係

世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係

数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家

数学も音楽も生きていることそのもの。そこに正解はなく、だれもがみんな数学者で音楽家である。これが中島さち子氏の持論だが、この考え方には古代ギリシア以来、西洋で発達したリベラルアーツが投影されている。この信念に基...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/08/28
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり

『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道

役者絵からキャリアを始め、西洋の画法を取り入れながら読本の挿絵を大ヒットさせた葛飾北斎。その後、北斎が描いていった『北斎漫画』や浮世絵などの数々は、海外に衝撃を与えてファンを広げるほどのものになっていく。60代は...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/06
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家