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DATE/ 2017.05.19

企業の取り組みにみるワークとライフの相乗効果

 ワーク・ライフバランスとは、働く時間を減らして生活の方に配分するといった、時間を奪い合う関係ではなく、「ワーク・ライフシナジーの関係にある」と株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏は言います。では、どうしたらそのようなワークとライフの相乗効果を生むことができるのでしょうか。

問題の根本にあるのは長時間労働

 小室氏は、「多くの企業が抱える働き方の問題は長時間労働にある。この長時間労働の是正が働き方改革の根本にある」と言います。それぞれの問題に一枚一枚絆創膏を貼るように対処療法的解決策を図っても、きりがありません。

 しかし、根本の長時間労働を是正すれば、多くの課題をまとまって解決できるのです。また、ありがたいことに長時間労働の是正には財源は必要ありません。きちんとルール、規制を作って持ち込めばよいのです。

長時間労働をなくすためのさまざまな試み

 小室氏は、長時間労働を減らすための各企業の取り組みを紹介しています。そのなかからいくつかお伝えしますと、従来の評価軸に代わって「時間当たりの生産性」という軸を取り入れたのがリクルートスタッフィングです。「ある一定時間を超えたら評価の対象外にする」というゾーンを評価軸に設けました。時間がかかっても成果さえ出せばいいじゃないか、という考え方を外したわけです。

 大胆かつ効果抜群のルールを取り入れたのは、セントワークスです。定時以降仕事をする場合は、紫色の派手なマントをチーム全員で付けなければいけないということにした結果、残業時間はほぼ半減したそうです。このマントはお星さまマークも付いていて目立つことこの上なし。これはどうしても時間内に終わらせようという気になりますね。

自社だけでなく業界全体を視野に入れた取り組み例

 「すばらしい試み」と小室氏も絶賛するのが、大塚倉庫です。それは、自社の従業員の残業削減だけでなく、集荷に来る配送会社のトラック運転手の残業削減にも着手したからです。今までは、翌日の荷積みの準備のためにドライバーは前夜から倉庫前にトラックを停めて順番待ちをしなければいけませんでした。当然、ドライバーは車中泊となってしまいます。

 こうした問題を解決するために、大塚倉庫ではスマホアプリを開発し、荷積みの予約ができるようにしたのです。このアプリを使えば、ドライバーは一晩中、車のなかで過ごすことなく家に帰って家族と食事をとったり、自宅でしっかり睡眠をとることができるようになりました。ドライバーがこうした家族とともに過ごせる生活を手に入れて非常に喜んだのは言うまでもありません。

 働く環境が改善されずドライバー不足に陥れば、業界全体の危機になるという大きな視野からこうした発想が生まれたのです。

ワークとライフの充実が良いサイクルを生む

 以上のような働き方改革がもたらした効果は、営業利益の大幅アップや残業、休日労働の削減だけではありません。女性社員の出生率や男性社員の育休率増加、10日以上の有給休暇取得率のアップに女性管理職数の増加といった効果も生み出しました。県をあげて働き方改革を推進し、企業に働き方に関するコンサルティングを積極的に入れた三重県では、県民の幸福度が年々向上しているという報告もあります。

 ワーク面での見直しがライフの充実につながり、それがさらにより質の高いワークに貢献する、といったワークとライフの相乗効果の輪がぐるぐる回っていることが分かります。

 仕事で頑張るか、私生活を充実させるか、どちらかを犠牲にしてどちらか一方の選択に迷う必要はありません。高齢化社会をハッピーに生き抜いていくためにも、ワークもライフもどちらも充実させたいですね。
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