社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
IoT時代のビジネスの目玉は「サービス」
IoTは「モノをインターネットにつなぐ」のではない
IoT(Internet of Things)は、「モノのインターネット」という言葉がイメージしやすかったのか、あっという間に認知度を広げました。しかし、言葉の普及と、IoTの本質をどれほど正確に理解できているかというのは、別次元の話。たとえば、多くの人が「IoTはモノをインターネットにつないで、遠隔でコントロールできるようにすること」と思っていますが、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長の坂村健氏によれば、「モノをインターネットにつなぐだけなら、もう10~20年前からできていること」なのだとか。正確には、「インターネットのようにモノをつなぐ」のがIoTなのだそうです。では、「モノをインターネットにつなぐ」と「インターネットのようにモノをつなぐ」の違いは、どこにあるのでしょう。
キーワードはオープン性とセキュリティ機能
「モノをインターネットにつなぐ」と「インターネットのようにモノをつなぐ」の違いは、オープン性にあると坂村氏は言います。たとえば、家電製品をインターネットにつないでも、従来のシステムでは、その製品のメーカーが提供するソフトウェアでのみコントロール可能という、ある意味、閉ざされた状態でした。これでは、メーカーごとに何種類ものソフトウェアを使い分ける必要が出てきます。そこで、インターネットの本質であるオープン性を獲得すべく開発されたのが本来のIoTなのです。API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を公開することで操作性の自由度を上げ、かつ、セキュリティ面から接続機器の管理(ガバナンス)機能を重視。つまり、オープン性とセキュリティがIoT時代のキーワードであり、坂村氏が開発したコンピューティングシステム「TRON IoT‐Aggregator」は、オープンにつながりつつ「誰が、いつ、どういう条件で」操作すればいいかということを記述できる仕組みとなっているのです。
新時代ビジネスは「サービスを売る」
このようなIoTが普及すれば、要は端末の機械そのものよりも、その機械からクラウドに集積される大量のデータを分析し、どのようなサービスに還元して提供できるかが、より重要になってきます。つまり、端末はサービスの蛇口のようなもので、機械の機能そのものは大差なく、消費者にアピールするのは、その蛇口からどんなサービスが好きなときに好きなように出すことができるかということになるのでしょう。坂村氏も「これからはモノよりサービスを売る時代」と明言しています。自動車の場合、その状態がデータとして常にクラウドコンピュータに送られてきて、たとえば、窓を開け放しにしたまま車を離れるとすぐにスマホに「窓が開いたままです」とメールがきたり、自分でメンテナンスを気にしておかなくても、クラウド上で部品データの分析が行われて、しかるべき時期がきたらメンテナンスの必要な箇所を教えてくれるといったことも。もちろん、クラウドを介してつながっている工場の方からメンテナンスに出向いてくれる、などのサービスも可能になってくるでしょう。
要するに、そのサービスこそが商品価値となるため、多彩で便利なサービスをいかに提供できるかが重要になってくるということです。坂村氏は、「そのようなサービスに対価を払うということになれば、極端な話、車はタダであげたっていいという時代がくるかもしれない」と言います。IoT時代が本格化すれば、「製造業」をはじめさまざまな産業の形態、構造を変えていくことになりそうです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた主な要因として、二つのオウンゴールを挙げる島田氏。その一つとして台湾のモリス・チャン氏によるTSMC立ち上げの話を取り上げるが、日本はその動きに興味を示さず、かつて世界を席巻して...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/25
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
全ては光だと説く空海が、なぜその著書『秘蔵宝鑰』で、「死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し」と書いたのか。『秘蔵宝鑰』については、以前のテンミニッツ・アカデミー講義でも解説したが、そこから半年かけてこの書を...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/26
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23


