テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.09.13

IoT時代のビジネスの目玉は「サービス」

IoTは「モノをインターネットにつなぐ」のではない

 IoT(Internet of Things)は、「モノのインターネット」という言葉がイメージしやすかったのか、あっという間に認知度を広げました。しかし、言葉の普及と、IoTの本質をどれほど正確に理解できているかというのは、別次元の話。たとえば、多くの人が「IoTはモノをインターネットにつないで、遠隔でコントロールできるようにすること」と思っていますが、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長の坂村健氏によれば、「モノをインターネットにつなぐだけなら、もう10~20年前からできていること」なのだとか。正確には、「インターネットのようにモノをつなぐ」のがIoTなのだそうです。

 では、「モノをインターネットにつなぐ」と「インターネットのようにモノをつなぐ」の違いは、どこにあるのでしょう。

キーワードはオープン性とセキュリティ機能

 「モノをインターネットにつなぐ」と「インターネットのようにモノをつなぐ」の違いは、オープン性にあると坂村氏は言います。たとえば、家電製品をインターネットにつないでも、従来のシステムでは、その製品のメーカーが提供するソフトウェアでのみコントロール可能という、ある意味、閉ざされた状態でした。これでは、メーカーごとに何種類ものソフトウェアを使い分ける必要が出てきます。

 そこで、インターネットの本質であるオープン性を獲得すべく開発されたのが本来のIoTなのです。API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を公開することで操作性の自由度を上げ、かつ、セキュリティ面から接続機器の管理(ガバナンス)機能を重視。つまり、オープン性とセキュリティがIoT時代のキーワードであり、坂村氏が開発したコンピューティングシステム「TRON IoT‐Aggregator」は、オープンにつながりつつ「誰が、いつ、どういう条件で」操作すればいいかということを記述できる仕組みとなっているのです。

新時代ビジネスは「サービスを売る」

 このようなIoTが普及すれば、要は端末の機械そのものよりも、その機械からクラウドに集積される大量のデータを分析し、どのようなサービスに還元して提供できるかが、より重要になってきます。つまり、端末はサービスの蛇口のようなもので、機械の機能そのものは大差なく、消費者にアピールするのは、その蛇口からどんなサービスが好きなときに好きなように出すことができるかということになるのでしょう。

 坂村氏も「これからはモノよりサービスを売る時代」と明言しています。自動車の場合、その状態がデータとして常にクラウドコンピュータに送られてきて、たとえば、窓を開け放しにしたまま車を離れるとすぐにスマホに「窓が開いたままです」とメールがきたり、自分でメンテナンスを気にしておかなくても、クラウド上で部品データの分析が行われて、しかるべき時期がきたらメンテナンスの必要な箇所を教えてくれるといったことも。もちろん、クラウドを介してつながっている工場の方からメンテナンスに出向いてくれる、などのサービスも可能になってくるでしょう。

 要するに、そのサービスこそが商品価値となるため、多彩で便利なサービスをいかに提供できるかが重要になってくるということです。坂村氏は、「そのようなサービスに対価を払うということになれば、極端な話、車はタダであげたっていいという時代がくるかもしれない」と言います。IoT時代が本格化すれば、「製造業」をはじめさまざまな産業の形態、構造を変えていくことになりそうです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授