社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.10.21

なぜ「炭酸水」は流行ったのか?

 コンビニやスーパーマーケットのドリンクコーナーを覗くと、お茶や清涼飲料水に混じって炭酸水のペットボトルが目につくようになりました。

 数年前までは、割り材としてアルコールコーナーに1~2種類が常温で置かれている程度でしたが、さまざまなメーカーが500ミリリットルペットボトルの製品を出し、それがお店の冷蔵棚に堂々と並んでいます。この「炭酸水ブーム」、一体どこからやってきたものなのでしょうか?

美容と健康のための炭酸水

 きっかけの一つは、「ミネラルウォーターブーム」でしょう。

 2000年ごろより、主に女性たちの間で、美容やダイエットを目的としてミネラルウォーターを飲むことがトレンドとなり、フランスの超硬水「コントレックス」をはじめとする海外のミネラルウォーターが多く流通するようになりました。その一つとして「ペリエ」や「サンペレグリノ」などのガス入りミネラルウォーターもカフェや料理店で広く置かれるようになり、炭酸水を日常的に飲む習慣が少しずつ根付くようになってきました。

 美容とトレンドに敏感な女性たちは、「炭酸水ダイエット」にも目を付けます。炭酸水が血行を促進し、冷え防止や便秘解消に役立つ上に、炭酸特有の満腹感で食欲を抑える効果もあると紹介され、ミネラルウォーターでない「炭酸水」の需要も急上昇。各メーカーがトクホやレモンなどのフレーバー入りなど、さまざまな趣向を凝らした炭酸水を発売するようになりました。

ハイボールブームも大きな要因に

 炭酸水ブームを担ったのは若い女性だけではありません。2009年から2010年にかけて起こった「ハイボールブーム」も、炭酸水ブームに大きく貢献しました。

 特に、アサヒ飲料が販売する炭酸水ブランド「ウィルキンソン」は、2007年から10年ほどで10倍以上も売り上げを伸ばすほどのヒット商品に。ウイスキーや氷を合わせてもパンチのある爽快感が楽しめるのは、強炭酸のウィルキンソンならでは。ハイボールを扱う飲食業界で根強いファンを生みました。

 また、自宅でハイボールをつくって楽しむ人たちに、余った炭酸水をそのまま飲むという習慣が定着。無糖かつノンアルコールで爽快感を味わえる炭酸水を、ビジネスタイムにも愛飲する人が増えてきました。

 スタッフの中にも炭酸水の愛飲者がおり、特に朝や暑い日、眠気が辛いとき、あるいはアルコールを控えているときなどに、炭酸水は気持ちをシャキっとさせてくれる頼もしい味方だと話しています。そのスタッフは、以前は微炭酸のサンペレグリノを箱買いしていたけれども、最近は強炭酸のウィルキンソン一択とも言っていました。また、知人は水道水から炭酸水がつくれる「ソーダメーカー」を購入し、さまざまなフレーバー入りの炭酸水を楽しんでいるそうです。

炭酸水に健康リスクはあるのか?

 「無糖かつノンカロリーで身体にいい」というイメージが強く、食事中、運動中、仕事中とさまざまなシチュエーションでポピュラーに楽しまれるようになった炭酸水ですが、胃と歯への影響は少し気をつけたほうがいいかもしれません。

 炭酸水は先に挙げたように満腹感を得られます。つまり胃が拡大することになるので、医学博士の大西睦子氏は日経Gooday30+の記事で「胃酸が逆流する人、過敏性腸症候群のある人、胃潰瘍のある人には、炭酸水は適しません」と答えています。ということで、胃の弱い方はなるべく控えたほうがいいかもしれません。

 また、歯科医師の小林保行氏は東洋経済ONLINEに寄稿した記事にて、「口にする頻度が多かったり、唾液の減る就寝前に飲む習慣があったりすると歯は少しずつ溶かされてしまう可能性があります」とコメントしています。そして、その対策として「フレーバーのものは極力避ける」「口の中にためない」「寝る前に飲むのは避ける」「飲んだらなるべくうがい、水を飲む」などを挙げています。

 何事も「ほどほどがいい」とはいわれますが、炭酸水もどうやら同じよう。適度に飲んで、炭酸水ライフを楽しむのがよさそうです。

<参考サイト>
・東洋経済ONLINE:「炭酸飲料が歯を溶かす」という通説は本当か?
http://toyokeizai.net/articles/-/115727
・日経Gooday30+:炭酸水は無糖なら水代わりに飲んでもOK?
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO14555100X20C17A3000000?page=2
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ

「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造

宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
岡朋治
慶應義塾大学理工学部物理学科教授
2

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方

人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
3

図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」

図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」

歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用

公共図書館では質の高い「レファレンス」サービスを提供しているが、活用する人は限られている。だが、実は全国の図書館ネットワークを縦横無尽に活用できる、驚くほどに便利な仕組みなのだ。今回は図書館のレファレンスで何が...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/15
4

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質

「ワット・ビット連携」の概念がある。これは神経と血管の関係にも似ており、両者が密接に関係するところから、それをもとに人間の本質について考察していくことになる。また、中村天風の思想から着想を得て、人間の心には霊性...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/13
5

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動

内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解

アメリカの大転換はトランプ政権以前に起こっていた。1980~1990年代、情報機器と金融手法の発達、それに伴う法問題の煩雑化により、アメリカは「ラストベルト化」に向かう変貌を果たしていた。そこにトランプの誤解の背景があ...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/11