テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.01.04

エナジードリンクが「体に悪い」のは本当か?

 オシャレなデザイン缶や、さわやかな飲み口で人気のエナジードリンク。カフェインの効果を期待して、集中力アップや眠気覚ましに飲む方も多いでしょう。しかし、一方で「依存性がある」「カフェイン中毒になる」などと、体への影響を懸念する声も。

 果たしてエナジードリンクは本当に体に悪いものなのでしょうか?

そもそもエナジードリンクとは?

 エナジードリンクとはカフェインを多く含む飲料のことです。一般のペットボトルの水やお茶同様、清涼飲料水にあたります。

 医薬品・医薬部外品に分類される栄養ドリンクと違い、「滋養強壮」「食欲不振に効果的」などといった効能や効果を示す文言の表記は認められていません。パワーを引き出してくれそうな謳い文句につい引きずられそうですが、エナジードリンクの効能が実証されているわけではないのです。

 とはいえ、人体に有効な成分が含まれているのは事実。エナジードリンクの主成分であるカフェインには覚醒作用や利尿作用が、カフェインと並び多く含むアルギニンには、疲労回復や筋肉増強が期待されています。実際にどの程度効果があるかはさておき、エナジードリンクのおかげでパフォーマンスが向上したという人は少なくないでしょう。

 ではなぜエナジードリンクは「危険」といわれるのでしょう。それはエナジードリンクの成分そのものよりも、“飲む量”、そして“飲み方”に関係しています。

短時間&多量摂取がカフェイン中毒の条件

 一般的なエナジードリンクのカフェイン量は1本につき80~230mg程度。日本でおなじみの『レッドブル』は1本(250ml)で80mg、『モンスターエナジー』は1本(355ml)で142mgとなっています。

 カフェインの許容量には個人差があるため「○本以内であれば大丈夫」とは一概にはいえませんが、一度に1000mg(1g)以上のカフェイン摂取で中毒症状が現れるといいます(成人の場合)。これは230mgのカフェイン入りドリンクを4、5本飲み干す計算になります。

 しかし、このような飲み方は「度が過ぎる」事例です。通常は1日1本程度であればほとんど問題ないと考えられています。もちろんカフェインに弱い方や子ども、妊娠中の方は避けるべきですが、健康な人でも立て続けに何本も飲むのは危険だと言わざるをえません。

カフェインは依存しやすい

「エナジードリンクを飲まないと落ち着かない」という人はいませんか。その場合、カフェインによる依存性が原因のひとつと考えられます。依存しきってしまうと簡単には手放せなくなるばかりか、エスカレートしてより強い効果を求めようとし、結果的に多量摂取につながってしまいます。

 実際にエナジードリンクだけでは足りず、カフェインの錠剤に手を伸ばして多量に飲んでしまい、中毒を起こす事例も起こっています。

 よって、エナジードリンクを「逃げ場」のように考えている人は、エナジードリンクについて認識することはもちろん、自身の生活環境や置かれている状況などを見直してみることも大事ということでしょう。

常飲による糖分の摂りすぎに注意

 カフェインの効果ばかりに目が行きがちですが、ドリンクに含まれる糖分の量も抑えておいたほうがいいでしょう。

『レッドブル』のオフィシャルウェブサイトによると、「100mlあたり11gの砂糖類(砂糖、ぶどう糖)」が含まれ、「りんごジュースやオレンジジュース100mlあたりに含まれる糖分に相当」するとあります。

 糖分を取り過ぎれば、肥満や糖尿病、脳卒中、心臓病のリスクも高まります。エナジードリンクを常飲している人は、糖分の摂取量にも気を配りましょう。

常識的な範囲内で楽しむ

 エナジードリンクそれ自体は、決して悪いものではありません。しかし、ほかの栄養ドリンクよりもジュース感覚で飲みやすいため、つい過剰摂取につながってしまいがちです。

 何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」。気になる人は成分表をチェックし、自分の体質や体調を考えながら、常識的な範囲内で楽しむようにしましょう。

<参考サイト>
・レッドブル・オフィシャル・ウェブサイト
http://energydrink-jp.redbull.com
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生

ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生

ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯

ピアニスト江崎昌子氏が、ピアノ演奏を交えつつ「ショパンの音楽とポーランド」を紹介する連続シリーズ。第1話では、すべてのピアニストにとって「特別な作曲家」と言われる39年のショパンの生涯を駆け足で紹介する。1810年に生...
収録日:2022/10/13
追加日:2023/03/16
江崎昌子
洗足学園音楽大学・大学院教授 日本ショパン協会理事
2

歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか

歴史のif…2.26事件はなぜ成功しなかったのか

クーデターの条件~台湾を事例に考える(5)世直しクーデターとその成功条件

クーデターには、腐敗した政治を正常化するために行われる「世直しクーデター」の側面もある。そうしたクーデターは、日本では江戸時代の「大塩平八郎の乱」が該当するが、台湾においては困難ではないか。それはなぜか。今回は...
収録日:2025/07/23
追加日:2025/10/17
上杉勇司
早稲田大学国際教養学部・国際コミュニケーション研究科教授 沖縄平和協力センター副理事長
3

国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?

国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー

「時間は中国に有利」というのが中国の認識だが、中国の国力はすでに衰え始めているとの見方を提示した垂氏。また、台湾問題の解決が習近平主席のレガシーになり得るかだが、かつての香港返還問題を事例として、その可能性につ...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/16
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く

学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く

編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?

今井むつみ先生が2024年秋に発刊された岩波新書『学力喪失――認知科学による回復への道筋』は、とても話題になった一冊です。今回、テンミニッツ・アカデミーでは、本書の内容について著者の今井先生にわかりやすくお話しいただ...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/16