社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
続発する交通事故…高齢ドライバーに規制は必要か?
2018年1月9日始業式の朝、群馬県前橋市で以前から家族に運転を止められていた85歳のドライバーが県道を逆走し登校中の女子高校生2人をはね、はねられた2人ともが意識不明の重体となる痛ましい事故がおきました。このような高齢ドライバーによる悲惨な交通事故が、全国的に大きな問題となっています。
内閣府の「平成29年版交通安全白書」でも、交通事故死者数に占める高齢者の割合の増加や高齢ドライバーにより交通死亡事故が相次いで発生していることなどから、「高齢者に係る交通事故防止」を特集しています。
そして、75歳以上のドライバーによる事故は、「車両単独事故の割合が多くなっており、全体の40%を占めている。これは75歳未満の運転者による単独事故の割合(23%)と比べて高い割合を示しており、具体的類型としては、道路上を進行中、運転を誤って車線を逸脱し物件等に衝突するといった工作物衝突が最も多く発生している」とも発表しています。
このような結果を考察すると、やはり高齢ドライバーによる加害事故は深刻な問題であり、なんらかの規制もしくは対策が必要になるといえます。
公益財団法人長寿科学振興財団によると「認知機能低下の一番の要因は、加齢」とのことで、個人差はあるものの「人間は60歳を過ぎると少しずつ認知機能が衰える」としています。
さらに、高齢ドライバーの認知機能について実験している研究論文「高齢者の認知特性を考慮した運転者教育」(三井達郎、岡村和子著『安全工学』47(6)、安全工学会)では、認知機能に低下がみられる高齢ドライバーは、低下がみられない高齢ドライバーと比較すると「1.標識の意味を理解することにやや難がある、2.危険場面に遭遇したときに具体的にどのような事故危険性があるかを予測する能力が衰えている」といった特徴を明らかにしています。
法整備として、2017年3月に改正された道路交通法では、75歳以上のドライバーは免許更新手続きの際、認知機能検査において「認知症のおそれ」があると判定された場合、違反の有無にかかわらず医師の診断の義務化されました。なお、認知症と診断されれば、免許は取り消されるか停止されます。
また、内閣府による「高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム」の発足や、自治体とも協力したインフラ整美の一環としてのコミュニティバスやデマンドタクシーの普及、官民連携での自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置などを搭載した「安全運転サポート車」(通称:サポカー)の普及や啓発などにも取り組んでいます。
そして、全国的な取り組みとして警察庁・警視庁でも、高齢ドライバーに「運転免許自主返納」を呼びかけています。ちなみに、高齢ドライバーが運転免許を自主返納すると、タクシーでの送迎無料や優待、飲食費割引、金利優遇など、自治体によってさまざまな特典がついています。
ただし、若いころに比べて認知機能が衰えていることは確かです。早めに運転診断を受けたり、「運転行動チェックリスト」を活用するなどして自分の衰えを自覚し、たとえば疲れやすくなっているのなら遠出を避けたり数十分ごとに停車して休憩をする、ペダル操作に不安があるならAT車は避けてMT車を運転するなど、自己や家族による予防や注意、自覚的に危険度を下げる取り組みは必要になってきます。
もちろん規制や環境整備は大切ですし、早急な対応が必要です。ですが、自分や身近な人が高齢ドライバーな方は、まずは運転診断やチェックをし、そのうえで不安があれば高齢者支援を行うセンターや専門家に相談するなど、それぞれに合った早めの対策と行動が必要ではないでしょうか。
内閣府の「平成29年版交通安全白書」でも、交通事故死者数に占める高齢者の割合の増加や高齢ドライバーにより交通死亡事故が相次いで発生していることなどから、「高齢者に係る交通事故防止」を特集しています。
高齢ドライバーの加害事故の現状
上記白書の特集をみると、2016年の「年齢層別免許人口10万人当たり死亡事故件数(原付以上第1当事者)」を比較しています。数字をみると、75歳以上のドライバーの死亡事故件数8.9人に対し、75歳未満のドライバーの3.8人となっており、「2倍以上多く発生している」ことがわかります。そして、75歳以上のドライバーによる事故は、「車両単独事故の割合が多くなっており、全体の40%を占めている。これは75歳未満の運転者による単独事故の割合(23%)と比べて高い割合を示しており、具体的類型としては、道路上を進行中、運転を誤って車線を逸脱し物件等に衝突するといった工作物衝突が最も多く発生している」とも発表しています。
このような結果を考察すると、やはり高齢ドライバーによる加害事故は深刻な問題であり、なんらかの規制もしくは対策が必要になるといえます。
車の運転に必要な注意力はいつから衰える?
ところで、大前提として、どうして高齢ドライバーは事故を起こしやすくなるのでしょうか。最大の原因は、車の運転に必要な認知能力が衰えるからだといわれています。では具体的には何歳ごろから衰えるのでしょう。公益財団法人長寿科学振興財団によると「認知機能低下の一番の要因は、加齢」とのことで、個人差はあるものの「人間は60歳を過ぎると少しずつ認知機能が衰える」としています。
さらに、高齢ドライバーの認知機能について実験している研究論文「高齢者の認知特性を考慮した運転者教育」(三井達郎、岡村和子著『安全工学』47(6)、安全工学会)では、認知機能に低下がみられる高齢ドライバーは、低下がみられない高齢ドライバーと比較すると「1.標識の意味を理解することにやや難がある、2.危険場面に遭遇したときに具体的にどのような事故危険性があるかを予測する能力が衰えている」といった特徴を明らかにしています。
高齢ドライバー事故防止の取り組み
では、高齢ドライバー事故防止について、どのような取り組みが行われているのでしょうか。法整備として、2017年3月に改正された道路交通法では、75歳以上のドライバーは免許更新手続きの際、認知機能検査において「認知症のおそれ」があると判定された場合、違反の有無にかかわらず医師の診断の義務化されました。なお、認知症と診断されれば、免許は取り消されるか停止されます。
また、内閣府による「高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチーム」の発足や、自治体とも協力したインフラ整美の一環としてのコミュニティバスやデマンドタクシーの普及、官民連携での自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置などを搭載した「安全運転サポート車」(通称:サポカー)の普及や啓発などにも取り組んでいます。
そして、全国的な取り組みとして警察庁・警視庁でも、高齢ドライバーに「運転免許自主返納」を呼びかけています。ちなみに、高齢ドライバーが運転免許を自主返納すると、タクシーでの送迎無料や優待、飲食費割引、金利優遇など、自治体によってさまざまな特典がついています。
規制の以前の自己対策と予防が大切
しかし、交通心理学を研究する蓮花一己氏は、認知症や病気の場合は別として「高齢者の免許返納にはあまり賛成ではありません」(「高齢者ドライバーが抱えるリスク─交通心理学の専門家に聞く─」より)と言います。それは、一般の高齢ドライバーが車を運転できなくなることで、「生活の質」が格段に落ちてしまうことへの懸念からです。ただし、若いころに比べて認知機能が衰えていることは確かです。早めに運転診断を受けたり、「運転行動チェックリスト」を活用するなどして自分の衰えを自覚し、たとえば疲れやすくなっているのなら遠出を避けたり数十分ごとに停車して休憩をする、ペダル操作に不安があるならAT車は避けてMT車を運転するなど、自己や家族による予防や注意、自覚的に危険度を下げる取り組みは必要になってきます。
もちろん規制や環境整備は大切ですし、早急な対応が必要です。ですが、自分や身近な人が高齢ドライバーな方は、まずは運転診断やチェックをし、そのうえで不安があれば高齢者支援を行うセンターや専門家に相談するなど、それぞれに合った早めの対策と行動が必要ではないでしょうか。
<参考サイト>
・内閣府:平成29年版交通安全白書
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/index_zenbun_pdf.html
・公益財団法人長寿科学振興財団:認知機能低下
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/ninchi-kinoou-teika.html
・安全工学会:高齢者の認知特性を考慮した運転者教育
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/6/47_369/_pdf
・シニアマーケティング研究室:高齢者ドライバーが抱えるリスク
http://www.nspc.jp/senior/archives/1171/
・内閣府:平成29年版交通安全白書
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/index_zenbun_pdf.html
・公益財団法人長寿科学振興財団:認知機能低下
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/ninchi-kinoou-teika.html
・安全工学会:高齢者の認知特性を考慮した運転者教育
https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/47/6/47_369/_pdf
・シニアマーケティング研究室:高齢者ドライバーが抱えるリスク
http://www.nspc.jp/senior/archives/1171/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候
古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/02
分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」
グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援
グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る
いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新
前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
きっかけはイチロー、右肩上がりの成長曲線で二刀流完成へ
大谷翔平の育て方・育ち方(5)栗山監督の言葉と二刀流への挑戦
高校を卒業した大谷翔平選手には、選手としての可能性を評価してくれた人、そのための方策を本気で考えてくれた人がいた。それは、ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウト小島圭市氏と、元日本ハムファイターズ監督で前WBC...
収録日:2024/11/28
追加日:2025/03/31
このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す
国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29