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DATE/ 2018.03.26

激動の時代…リスクを取る力を養うためには?

 慣れたやり方に甘んじるな。安全志向ではならない。リスクをとれ。このような企業トップの訓示を耳にする方も多いでしょう。しかし、実際には日本企業、そして教育においても、失敗したら左遷、劣等生のレッテルを貼るといった減点主義であることが多いと、ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事の小林りん氏は指摘します。

リスクを取る力を養うためには

 小林氏が設立したISAKは、全寮制のインターナショナルスクールとして世界各国から生徒を受け入れており、「一度しかない人生。自分の個性を生かして思いきり生き、自らの立つ場所から世界を変える」ことを生徒のミッションとして掲げています。このことからも分かるように、小林氏はこれからの人材育成に必要な力の一つとして、「リスクを取る力」を挙げています。変化のスピードが尋常ではない現代は「リスクを取れないことがリスクになる」と心しておかなければなりません。

 しかし、リスクを取れと言われても、腰が引けてしまうのが人情というもの。小林氏は、いきなり大舞台に立ってガン!と大きなリスクを抱えようとするのではなく、小さなリスクを取り続ける訓練を若い頃からしておくとよい。いわば、リスクの胆力を鍛えることを勧めます。

 この鍛え方は、社会人になってからでも遅いということはなく、ここぞという勝負時にちょっと頑張ってリスクを取ってみる。ちょっとスピードを要するけれど、絶対的に効率のよい新しい方法にチャレンジしてみる。難しいかもしれないけれど、成功すれば次のチャンスにつながる方を選択する。小さなことでも成功すれば、それが次の自信につながるし、たとえ失敗しても小さなリスクなら取り返しのつかないことにはならない。「だから、リスクを取りなさい」と、常日頃から生徒たちに教えているそうです。

リスクを取るには多様性に対する寛容力を身につける

 リスクを取るためには、自分の経験や見当、知識の範囲外のことに向き合い、受け入れることが必要となってくるため、ISAKでは「多様性に対する寛容力」を養うことも重視しています。「多様性」というと、ジェンダーや国籍といった表層的なところに目が行ってしまいがちですが、たとえ同じ国籍、同じ人種、性別であっても、個々の育ってきた環境、そこで培われてきたものの感じ方、価値観、思考のくせ等は実にさまざま。国民投票の結果、BREXITを選択したイギリスや当初「政治的にはド素人」と評されたトランプ氏を大統領に選んだアメリカを見れば、同じ一つの国の深層部で多様性が渦巻いていることは明らかです。だからこそ、小林氏はこうした目に見えない部分に潜む多様性こそ、重視すべきだと考えているのです。

 リスクを取る、多様性を受け入れるに加えて、問いを立てるの以上の3点がISAKの基本方針なのですが、これはそのままどんな教育においてもビジネスにおいても、人材育成の重要な鍵となると言えるでしょう。

日本の国民性は同質性にある、と決めつけない

 よく、日本人は横一線、皆と同じことを好むと言われますが、その一方で、異質なものを果敢に取り入れ、日本ならではのものに発展させることを得意としてきました。身近なところでは食文化にその例は枚挙の暇がないほど多くあり、あんパン、かつ丼、カレーライス等々、さらにそれらのバリエーションを生むなど独自に発展もさせてきました。さらに俯瞰、かつ掘り下げてみれば、日本人は中国から伝来した漢字を取り入れ、カタカナ、ひらがなを生みだし、その上で漢字仮名交じり文という異種合成を自家薬籠中のものとしたことに思いいたります。

 日本の国民性は同質性を尊ぶなどと決めつけずに、本来の未知、多様性に対する好奇心、順応力を目覚めさせるような人材育成が、今後より一層求められていくと言えそうです。
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