社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「NOと言わせない/YESと言わせる」説得術
買い物をする時やなにかしらのサービスを受ける時、わたしたちは買う(対価を支払う)理由が必要です。支払いが高額になればなるほど、より強い理由が必要になります。これに対して、営業・提供する側は、どうやれば売れるか、客が買う理由を考えるでしょう。この営業には大きく分けて「NOと言わせない方法」と「YESと言わせる方法」の2つがあるといえるかもしれません。それぞれについて少し詳しく見てみましょう。
具体例は省きますが、どの方法にも共通しているのは「相手の言葉を決して否定しない」こと。そして、著者の考えの核心は「人間の行動原理は自己承認欲求を満たすことにある」ということです。自分の気持が受け入れられ、その上で褒められることで人は相手を信頼し心を開くということです。こうした点がNOと言わせない話法となっているわけで、確かにとうなずかざるをえません。
戦後、日本が復興に向かう頃、自衛隊は税金ドロボーなどといわれるような時代があったそうです。この時、吉田茂は防衛大の卒業式で卒業生に向かって以下のように演説しました。
「君たちは自衛隊在職中、国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡のときとか、災害派遣のときとか、国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。言葉を換えれば、君たちが日陰者扱いされているときのほうが、国民は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい」
不遇の扱いを受ける人間に対して、その不遇にこそ価値があるのだ、というダイナミックな言い換えですよね。これを国のトップからいわれて、自分を誇らしく思わない人間はいないのではないでしょうか。もちろんこの演説があえてYESと言わせる、あるいはそう思わせるような話法を駆使して行ったものではないでしょう。ただ、この事例からしても、YESと言わせたり、そう思わせるように相手を説得したりする場合、相手の自尊心をどれだけ刺激するか、高揚させるか、という点に関係しているように思えます。ある意味、相手が危機的状況、あるいは困難な状況だと感じている場合は有効かもしれません。
NOと言わせない話法
村西とおる氏の著作『禁断の説得術 応酬話法?「ノー」と言わせないテクニック』では、さまざまな営業テクニックが紹介されています。著者は年商100億円のAVメーカーを経営したのち、50億円の借金を背負い、またそれも完済するようなド派手な人物です。命の危機を数回乗り越えた体験を交えつつ、そのときどのような話法を使ってきたかといったことまでが掲載されています。具体例は省きますが、どの方法にも共通しているのは「相手の言葉を決して否定しない」こと。そして、著者の考えの核心は「人間の行動原理は自己承認欲求を満たすことにある」ということです。自分の気持が受け入れられ、その上で褒められることで人は相手を信頼し心を開くということです。こうした点がNOと言わせない話法となっているわけで、確かにとうなずかざるをえません。
YESと言わせる話法
ということで、NOと言わせない話法は相手の懐にそっと入っていくような話法といえるかもしれません。これに対してYESと言わせる話法はよりパワフルな「言い換え」の話法になります。戦後、日本が復興に向かう頃、自衛隊は税金ドロボーなどといわれるような時代があったそうです。この時、吉田茂は防衛大の卒業式で卒業生に向かって以下のように演説しました。
「君たちは自衛隊在職中、国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡のときとか、災害派遣のときとか、国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。言葉を換えれば、君たちが日陰者扱いされているときのほうが、国民は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい」
不遇の扱いを受ける人間に対して、その不遇にこそ価値があるのだ、というダイナミックな言い換えですよね。これを国のトップからいわれて、自分を誇らしく思わない人間はいないのではないでしょうか。もちろんこの演説があえてYESと言わせる、あるいはそう思わせるような話法を駆使して行ったものではないでしょう。ただ、この事例からしても、YESと言わせたり、そう思わせるように相手を説得したりする場合、相手の自尊心をどれだけ刺激するか、高揚させるか、という点に関係しているように思えます。ある意味、相手が危機的状況、あるいは困難な状況だと感じている場合は有効かもしれません。
肝心なのは相手と同じ立場に立つこと
ここではあえて、NOとYESに分けましたが、実際にはどちらであっても、相手の立場を理解して冷静に言葉を発することができるか、という点が肝心であることは間違いないでしょう。説得するのではなく、同意すること、この後に相手の喜びどころをしっかり把握して会話することで関係が生まれます。このときにようやく自分の言葉が相手の耳に届くようになるのです。
<参考文献>
・『禁断の説得術 応酬話法?「ノー」と言わせないテクニック』(村西とおる著、祥伝社新書)
・『禁断の説得術 応酬話法?「ノー」と言わせないテクニック』(村西とおる著、祥伝社新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
ますます進む高齢化社会において医療を根本的に転換する必要があると言う長谷川氏。高齢者を支援する医療はもちろん、悪い箇所を見つけて除去・修理する近代医学から統合医療への転換が求められる中、今後世界の医学をリードす...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/19
AIは「暗黙知・常識に基づく高度な判断」が不得意
AIとデジタル時代の経営論(6)暗黙知と判断力
一橋大学大学院国際企業戦略研究科研究科長・教授の一條和生氏によれば、AIが不得手なのは、暗黙知・常識に基づく高度な判断である。人間の役割はこうした暗黙知を捨てず、個々の状況での判断力を磨いていくことだ。暗黙知を支...
収録日:2017/07/24
追加日:2017/10/30
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13


