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DATE/ 2018.07.02

本当に「体に良い/良くない」食事とは?

 低糖質ダイエット、りんごダイエット、スムージーダイエットなど、世にあまたあるダイエット方法。出ては消え、出ては消え、定期的にダイエット本のベストセラーも出ます。が、中には根拠が乏しかったり、あくまで著者の個人的な成功体験を紹介するだけ、なんて本も。そんな中、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は徹底的に科学的根拠に基づいた健康的な食事を紹介しています。

意外?赤身肉は健康に良くないという研究結果

 この本によると、健康に良いと数多くの研究によって太鼓判を押されているのは、

(1)魚
(2)野菜と果物
(3)茶色い炭水化物
(4)オリーブオイル
(5)ナッツ類、です。

一方健康に悪いと考えられているのは

(1) 赤い肉
(赤身か霜降りかという分類ではなく、牛肉や豚肉、羊肉や馬肉のこと。鶏肉は含まれません)
(2)白い炭水化物
(1)バターなどの飽和脂肪酸です。

 補足して説明すると、茶色い炭水化物は玄米やそば、全粒粉を使ったパンなど、精製されていない炭水化物のことで、白い炭水化物は逆に白米やうどん、パスタなど精製された炭水化物です。「甘い食べ物は体に悪い」とダイエットや健康のためにお菓子を控えている人は少なくないと思いますが、科学的には白米も砂糖も大差ないそうです。

 赤身ステーキなど脂肪分が少ない部位は高タンパク低脂肪で健康にいいというイメージを持たれがちですが、発がん性などの点で見るとリスクが増加する可能性があるという研究結果が出ているとのこと。中でもソーセージやハム、ベーコンなどの加工肉の発がん性はよりリスクがあり、世界保健機関(WHO)が「加工肉を毎日食べた場合、50グラム(ベーコン2切れ以下)ごとに大腸がんにかかる確率が18%上昇する」と発表した時は精肉業界から強い反発もありました。

これさえ食べればいい!というわけではなく…

 牛肉や豚肉を魚に、うどんやパスタをそばに、白米を玄米に、バターをオリーブオイルに置き換えることができれば脳卒中や心筋梗塞、がんなどのリスクを下げることができるのは確かでしょう。ただ、ここに挙げた健康に良いものさえ食べていれば健康には何の心配もいらない!なんてことはありません。当たり前のことですが、食事のバランスや運動などが伴ってこそ健康に過ごせる可能性が高まります。

 「〇〇を食べればがんにならない」「●●は食べれば医者いらず」などなど、食事と健康の関係は単純なものではありません。実際には、「▲▲を食べるとがんのリスクが△%上がるかもね」「□□を毎日摂取すると△のリスクを◎%下げられる」、そうした細かい積み重ねの上に成り立っているのです。

<参考文献・参考サイト>
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(津川友介著、東洋経済新報社)
・BBCニュース:加工肉に発がん性あるとWHO
http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-34645057
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