テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2019.06.03

世界の富裕層の移住先として人気の国は?

 南アフリカ・モーリシャスの金融機関であるアフレイシャバンク・モーリシャスの調査によると、2018年、海外に移住した富裕層の人数は10万8,000人で、2017年から14%増加したそうです。彼らの移住先として選ばれる国とは、どんな国なのでしょうか。

最も人気の移住先はオーストラリア

 アフレイシャバンク・モーリシャスは、富裕層を「資産が100万ドル(約1億1190万円)以上を越える人」と定義したうえで、各国の富裕層の流出入数を調査。その結果、富裕層の移住先としてもっとも選ばれている国は、4年連続でオーストラリアが1位になったと発表しました。カナダのニュースメディアである「ビジュアル・キャピタリスト」は、このアフレイシャバンク・モーリシャスのデータをもとにマップを作成。富裕層の移動を視覚化したことが話題となっています。

<富裕層の流入が多かった国(2018年)>
1位 オーストラリア/12,000人
2位 アメリカ/10,000人
3位 カナダ/4,000人

 富裕層が住みそうな国といえばアメリカを思い浮かべますが、ビジュアル・キャピタリストは富裕層が移住先にオーストラリアを選ぶ理由を、アメリカと比べて「経済成長が堅調」「子育てしやすく安全」「相続税がなく、医療費も低い」ためと分析しています。

 流入数第2位のアメリカについては、ニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミ、サンフランシスコといった都市に1,000人以上の富裕層が移住しているといいます。いずれも利便性が高く、経済的に安定している都市が人気のようです。今後の事業展開の拠点とすることを考慮しての移住とも考えられるでしょう。

出国する富裕層が最も多いのは中国

 逆に、富裕層が最も多く他国へ出て行ってしまっているのは中国の15,000人となっています。一見大変な数に見えますが、これは富裕層の全体の2%でしかなく、ビジュアル・キャピタリストは「(中国は)失った数以上の億万長者を生み出し続けている」と述べています。

<富裕層の流出が多かった国(2018年)>
1位 中国/15,000人(2%)
2位 ロシア/7,000人(6%)
3位 インド/5,000人(2%)
※( )内はその国の富裕層全体から見た割合

 今回のランキングで、日本はいずれもランク外。その理由は、もともと富裕層と言われる人の数が少ないことや、所得税が最高で45%、相続税が55%と他国に比べて非常に高く、富裕層に厳しい環境であることが考えられます。治安が非常に良く、食文化も豊かで住みやすいといわれる日本ですが、世界の富裕層にとっては、その税率の高さが移住の最大のネックとなるようです。

 今はさほどでないにしろ、日本人富裕層が税率の低さを求めてどんどん海外へ流出してしまうのではないかと懸念する声も上がっています。

日本の富裕層が好む移住先は?

 それでは、日本人富裕層に人気の移住先とはどんな国でしょうか。調べてみたところ、各メディアによって調査方法はさまざまなので一概には言えませんが、もともと日本人居住者の多いアメリカや中国、オーストラリアのほか、ニュージーランド、シンガポール、そしてマレーシアの名前が目立ちました。特にニュージーランドとシンガポールは外国人富裕層の受け容れに寛容で、移住先の企業へ一定の金額以上の投資をすれば永住権を獲得できるという敷居の低さが、人気上昇の理由のひとつのようです。

 いっぽう、マレーシアは「日本人が住みたい国」ランキング(ロングステイ財団)で2006年から2018年まで13年連続1位と、魅力的な移住先として今もっとも注目を浴びている国です。相続税がないうえ物価が日本の約1/3と安く、アジアの中でも比較的治安が良いこと、一年を通して温暖な気候でしかも親日家が多い、という点が評価されているようです。

資産があれば「海外移住」の選択肢はアリ

 世界の富裕層に人気の国と、その理由をご紹介しました。いかがでしたか? 読んでみて「海外に住んでみたい!」「リタイア後は海外でゆっくりしたい」と思われた方も多いのではないでしょうか。

 「暮らしやすさを求めて移住する」という選択肢は徐々に浸透してきているものの、海外となるとまだまだハードルが高いのが現状です。充分な資金、資産がなければ、思い切った移住は難しいでしょう。もちろん、費用だけでなく言語や食習慣、治安、コミュニティの構築など、考慮すべきことはたくさんあります。

 しかし場合によっては、日本にいるよりもずっとメリットがあり、快適だと感じられることもたくさんあるのも事実。もし移住を考えているのであれば、どんな暮らしがしたいか、移住先に何を求めているかをまず明確にすると良いでしょう。

<参考サイト>
・Infographic: Mapping the Global Migration of Millionaires│Visual Capitalist
https://www.visualcapitalist.com/global-migration-of-millionaires/
Global Wealth Migration Review 2019 - AfrAsia Bank Mauritius│AfrAsia Bank
https://www.afrasiabank.com/en/about/newsroom/global-wealth-migration-review-2019
・億万長者に人気な国が一目で分かるマップ│GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20190419-millionaire-map/
・「ロングステイ希望国・地域2018」トップ10を発表│一般財団法人 ロングステイ財団
http://www.longstay.or.jp/newslist/open/entry-3456.html
・なぜマレーシアは日本人の海外移住先として人気なのか?│HEDGE GUIDE
https://hedge.guide/feature/why-is-malaysia-popular-destination-for-overseas-migration.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
2

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
3

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
4

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
5

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授