テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2022.04.01

世界で最も「裕福」な国は?日本は何位?

 アメリカ、中国、日本、ドイツ、イギリス、フランス、インド。これらはGDP(国内総生産)が世界トップレベルの国々です。しかし、単に国のGDPが高いからといって、その国が「裕福」だとは限りません。

 IMF(国際通貨基金)は、1人あたりの購買力平価(PPP)に基づいたGDPによる世界の国・地域のランキングを公表しています。このランキングでは冒頭のいわゆる経済大国はトップ5入りしていません。国民のひとりひとりが「裕福」な国とはどんな国なのか。トップ5をご紹介します。

意外なトップ5の顔ぶれ

 IMFのランキングは2021年4月のデータです。順位の傾向としては、冒頭の経済大国とは大きく異なり、人口が少なく国土の狭い国・地域がランクインしています。トップ5は以下の通り。1位ルクセンブルク、2位シンガポール、3位カタール、4位アイルランド、5位スイスでした。

 一方、アメリカは8位、ドイツは18位、フランスは27位、イギリスは29位、日本は33位でした。中国やインドはさらに下位となりました。

外国人労働者への依存

 1位のルクセンブルクは、人口約60万人で、国土面積はたったの2500平方キロメートルほどしかありません。日本でいうと、神奈川県ほどのサイズです。また2位のシンガポールと同じく、金融業にとても力を入れているほか、税率を低くしたり、国外企業の本社を誘致したりと名目上のGDPが高くなっています。

 3位のカタールは2022年のワールドカップの開催予定国です。人口はおよそ270万人。そのうちなんとカタール人の人口はわずか1割ほどとなります。日本人からすると驚くべきことですが、IMFのランキングの上位の国々はカタールと同じ傾向があります。外国人労働者に大きく依存しているわけです。

 カタールの主要産業は天然ガスや石油など天然資源です。天然資源産業がGDPの半分以上を占めています。生活面においては、教育や医療、電気などは政府から無料で提供されています。

 4位アイルランドはEUの勝ち組と言われ、長らく欧州トップの経済成長率を達成しています。しかしながら、英国と米国への貿易依存度が高いことからブレグジットやトランプ外交の動向によって経済が大きく左右されると言われています。

本当の豊かさとは何か

 国連は、一人当たりGDP健康寿命、社会的寛容さなどを尺度に幸福度ランキングを公表しています。2021年版では1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位はスイス、4位アイスランド、5位オランダでした。高福祉の北欧の国々がトップを占めているのが特徴です。日本は56位でした。

 尺度によってランキングは大きく変動しますが、日本について言えば、GDPは高いものの、国民ひとりひとりの富や幸福度は低水準です。貧富の格差も大きく広がりつつあり、日本社会の将来は決して明るいとは言えないでしょう。幸福とは何か。本当の豊かさとは何か。ひとりひとりが問い、考えるべき時代に差し掛かっています。

<参考サイト>
GDP per capita, current prices│IMF
https://www.imf.org/external/datamapper/PPPPC@WEO/OEMDC/ADVEC/WEOWORLD
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」

グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援

グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01
石黒憲彦
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)理事長
2

最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響

最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響

水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地

今や世界共通の喫緊の課題となっている地球温暖化。さらに、日本国内の上下水道など、インフラの問題も、これから大きな問題になっていく。地球環境からインフラまで、「持続可能」な未来をどうつくっていくのかについて、「水...
収録日:2024/09/14
追加日:2025/03/06
沖大幹
東京大学大学院工学系研究科 教授
3

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

なぜやる気が出ないのか…『それから』の主人公の謎に迫る

いま夏目漱石の前期三部作を読む(5)『それから』の謎と偶然の明治維新

前期三部作の2作目『それから』は、裕福な家に生まれ東大を卒業しながらも無気力に生きる主人公の長井代助を描いたものである。代助は友人の妻である三千代への思いを語るが、それが明かされるのは物語の終盤である。そこが『そ...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/30
與那覇潤
評論家
4

イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴

イーロン・マスクは何がすごい?生い立ちと経歴

イーロン・マスクの成功哲学(1)マスクが「世界一」になるまで

2022年、フォーブス誌が発表した世界長者番付の一位となったイーロン・マスク。テスラの電気自動車やスペースXのロケット開発などを通じ、革新的なイノベーションを実現してきたことで知られるマスクは、いかにして現在のような...
収録日:2022/06/22
追加日:2022/08/23
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
5

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

このように投資にお金を回せば、社会課題も解決できる

お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(6)日本の課題解決にお金を回す

国内でいかにお金を生み、循環させるべきか。既存の大量資金を社会課題解決に向けて循環させるための方策はあるのか。日本の財政・金融政策を振り返りつつ、産業育成や教育投資、助け合う金融の再構築を通した、バランスの取れ...
収録日:2024/12/04
追加日:2025/03/29
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員