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DATE/ 2019.11.15

横断歩道で8割の車が止まらないってホント?

 信号のない横断歩道を渡ろうと待っていたけれど、車が途切れずなかなか渡れない…そんな経験は誰しもしたことがあるでしょう。日常でもよく見られる光景ですが、実はこの状況は交通違反にあたることを知っていますか?

横断歩道では歩行者優先が原則

 交通ルールについて細かく規定している道路交通法を見てみると、第38条第1項で横断歩道でのルールについて下記のようにはっきりと明記しています。

・横断歩道で歩行者が渡ろうとしているときには、自動車は一時停止しなくてはならない

・横断歩道で渡ろうとしている歩行者や自転車が明らかにない場合を除いては、自動車は横断歩道直前で停止できる速度で走らなくてはならない

 また、歩行者のいる横断歩道で一時停止をしないと横断歩行者等妨害等違反というルール違反になり、普通車では9000円の罰金、2点の減点が課されてしまいます。このように、横断歩道では車より歩行者優先が原則。渡ろうとしている歩行者の前を何台もの車が通り過ぎていく状況というのは、まさしくルール違反といえるのです。

横断歩道での車の一時停止率は……

 JAF(日本自動車連盟)は交通マナーについて数々の調査を行っていますが、2016年6月の調査では「信号のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているのに一時停止しない車が多い」と答えた人は9割にものぼり、歩行者目線ではこのルールは守られていない実態がはっきりとうかがうことができます。

 実際、JAFは2016年からは歩行者のいる横断歩道での一時停止状況の調査もしており、2019年8月の調査では一時停止する車の割合はわずか17.1%にとどまっていることが分かりました。2018年度の調査では8.6%だったことを考えると8.5ポイントも増加したことは喜ばしいですが、いまだに8割以上の自動車が一時停止していない現状が浮き彫りになっています。

なぜ一時停止しないのか?

 JAFは2017年6月にドライバーを対象にしたアンケートを実施。それによると、信号のない横断歩道で一時停止しない理由としては「自車が停止しても対向車が停止せず危ないから」「後続から車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから」「横断歩道に歩行者がいても渡るかどうか判らないから」といった声があがりました。

 ドライバーは免許取得時に「信号のない横断歩道では一時停止」ということ自体は教えられているはずですが、社会に根付いていないルールであることも相まって忘れられてしまっているのが現実といえるでしょう。

 しかし、一時停止率が17.5%にとどまったJAFの調査結果を受けて、警察庁交通局は信号のない横断歩道で歩行者優先を徹底する通達を出しました。2019年10月の都内での公開取り締まりでも「横断歩行者妨害違反の取締り」が含まれており、今後は歩行者のいる横断歩道での一時停止の取締が強化されることも予想されています。

交通ルールを守って安全第一を

 あおり運転や信号無視など、交通ルールの無視で起こる悲惨な交通事故は全国各地で日々起こっています。それを防ぐのはひとりひとりの交通マナーに対する意識です。もし歩行者のいる横断歩道での一時停止がルールであることを知らなかったという人がいれば、いま一度交通マナーを見直してみてはいかがでしょうか。

<参考サイト>
・JAF(日本自動車連盟)
https://jaf.or.jp/individual
・反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/menkyo/torishimari/tetsuzuki/hansoku.html
・交通違反の点数一覧表|警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/torishimari/gyosei/seido/tensu.html
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