社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「ポジティブ」な人はどこが違うのか?
「ポジティブ心理学」の創始者である心理学者のマーティン・セリグマン氏は、“本物のポジティブ感情”が生まれるために発揮するべき“強み”について、以下のように分類しています。
【24の強み】(1)~6)が6つの徳性カテゴリー、1.~24.が24の強み)
1)知恵と知識:1.創造性、2.好奇心、3.知的柔軟性、4.向学心、5.大局観。
2)勇気:6.勇敢さ、7.忍耐力、8.誠実さ、9.熱意。
3)人間性:10.愛情、11.親切心、12.社会的知能。
4)正義:13.チームワーク、14.公平さ、15.リーダーシップ。
5)節制:16.寛容さ、17.慎み深さ、18.思慮深さ、19.自己調整。
6) 超越性:20.審美眼、21.感謝、22.希望、2.ユーモア、24.スピリチュアリティ。
【24の強み】のうち、あなたが自覚する自分の“強み”=自身の“本物のポジティブ感情”は、いくつあったでしょうか。
1)「喜び」(Joy)
安全で見慣れた場所にいる。すべてが期待以上にうまくいっている。努力を必要とされる状況はほとんどない。こんなときが「喜び」を覚えるときで、「喜び」の源は数知れずあります。
2)「感謝」(Gratitude)
「感謝」の対象は人とは限らず、与えられた何かについてその価値を認めたときに起こります。“礼儀”でも“負い目”でもなく、心から感じ、楽しみ、かつ自由な発想で“お返しをしたい“という感情です。
3)「安らぎ」(Serenity)
「安らぎ」は「喜び」と似ていますが、ずっと地味な感情です。今の瞬間の感覚に意識が集中し、これをゆっくり味わっていたい、もっとこういう感覚をいつも味わいたいと思う“残光の感情”です。
4)「興味」(Interest)
新しいものごとに関心を抱き、謎を突き止めたいという気持ちにつき動かされる。「喜び」や「安らぎ」と違い、「興味」は努力と集中を要求しますが、持つと心は広がって生き生きします。
5)「希望」(Hope)
ほかのポジティブ感情が安全で満たされた状態で生じるのに対し、「希望」は例外です。「希望」は“絶望”や“失望”を感じてもよさそうな状況で現れる、“最悪な事態を恐れながらよりよい状況を望む”感情です。
6)「誇り」(Pride)
「誇り」はいわゆる“自尊感情”のひとつで、手柄となるようなことをやり遂げたときに生じ、思想を広げ、さらなる達成への動機をかきたてます。ただし、“傲慢”となる恐れもあるため、限定的で適度な謙虚さによる抑制が必要になります。
7)「愉快」(Amusement)
まず、“「愉快」という感覚は社会的なものであること”。次に、“意外性は安全な状況のなかにあってのみ「愉快」だということ”。心から面白いと思えば、笑わずにいられない、誰かと分かち合いたい、という感情です。
8)「鼓舞」(Inspiration)
人間の素晴らしさに出会い、奮い立つような感情がわいて、意識はくぎ付けになり、心が熱くなる。「感謝」と「畏敬」とともに最も自我を超越した感情とされ、人を自己満足から引き出してくれます。ただし、“憎しみ”や“ねたみ”を覚えたり、“自己嫌悪”に陥ったりする場合もあります。
9)「畏敬」(Awe)
「鼓舞」と近いのですが、例えば自然のようにもう少し規模の大きい素晴らしさに出会ったときに感じるものです。偉大さに圧倒され、自分自身の小ささを感じて謙虚になります。同時に、境界が消え、自分が何か偉大なものの一部であると感じます。
10)「愛」(Love)
「愛」は例外で、ポジティブ感情のすべてを含んでその上に位置する感情です。安全で親密な人間関係のなかで、もろもろのポジティブ感情が心を揺さぶるとき、状況によってそれは「愛」となります。「愛」というのは“瞬間的な心の状態”であり、“関係”を定義するものではなく、波のような感情の高まりなのです。
以上のように、ポジティブ感情はいろいろな形で現れます。しかし、どのポジティブ感情も儚く、瞬く間に失われてしまいます。また、ポジティブ感情もほかの感情と同様に、出来事を「どう解釈するか」というところから生じ、出来事の解釈によって感じ方は変化します。
つまり、ポジティブ感情を感じるかどうかは、適切にとらえる必要があり、またとらえ方次第だといえます。日々の出来事からポジティブ感情の視点をもって良さを見出し、さらにはその良さをはぐくめる人こそが、「ポジティブ」な人といえるのではないでしょうか。
ここでは、セリグマン氏の考案した「Three Good Things」(スリーグッドシングス;3つの良いこと)というエクササイズを紹介したいと思います。「Three Good Things」の方法は簡単で、「毎晩寝る前に、その日あった『3つの良いこと』を書き出し、これを1週間続ける」というものです。
「終わり良ければすべて良し」という諺にもあるように、1日の終わりに「3つの良いこと」を書き出すことによって、たとえその日に嫌な出来事があったとしても、認知を変えて1日を良いほうに見直し、「ポジティブ」にとらえ直すことができるようになります。
なお、“良いこと”は大きなことでなくても大丈夫です。「コーヒーがおいしかった」「窓を開けたとき風が心地良かった」など、ささやかなことでかまいません。また、リストラや大切な人との死別などとてもつらい状況の場合は、“普通のこと(つらくない瞬間)”を書いていただければとよいといわれています。ぜひ日々の生活に組み込んで、「ポジティブ」な習慣を身に付けてみてください。そのときこそ、「ポジティブ」な人の違いが感じられるようになるかもしれません。
【24の強み】(1)~6)が6つの徳性カテゴリー、1.~24.が24の強み)
1)知恵と知識:1.創造性、2.好奇心、3.知的柔軟性、4.向学心、5.大局観。
2)勇気:6.勇敢さ、7.忍耐力、8.誠実さ、9.熱意。
3)人間性:10.愛情、11.親切心、12.社会的知能。
4)正義:13.チームワーク、14.公平さ、15.リーダーシップ。
5)節制:16.寛容さ、17.慎み深さ、18.思慮深さ、19.自己調整。
6) 超越性:20.審美眼、21.感謝、22.希望、2.ユーモア、24.スピリチュアリティ。
【24の強み】のうち、あなたが自覚する自分の“強み”=自身の“本物のポジティブ感情”は、いくつあったでしょうか。
「10のポジティブ感情」ととらえ方
一方、セリグマン氏と同じくポジティブ心理学トップランナーの一人である心理学者のバーバラ・フレドリクソン氏は、生活の中に色濃く現れる最も一般的で代表的な【10のポジティブ感情】を、比較的出現頻度の高い順に分類・整理しています。1)「喜び」(Joy)
安全で見慣れた場所にいる。すべてが期待以上にうまくいっている。努力を必要とされる状況はほとんどない。こんなときが「喜び」を覚えるときで、「喜び」の源は数知れずあります。
2)「感謝」(Gratitude)
「感謝」の対象は人とは限らず、与えられた何かについてその価値を認めたときに起こります。“礼儀”でも“負い目”でもなく、心から感じ、楽しみ、かつ自由な発想で“お返しをしたい“という感情です。
3)「安らぎ」(Serenity)
「安らぎ」は「喜び」と似ていますが、ずっと地味な感情です。今の瞬間の感覚に意識が集中し、これをゆっくり味わっていたい、もっとこういう感覚をいつも味わいたいと思う“残光の感情”です。
4)「興味」(Interest)
新しいものごとに関心を抱き、謎を突き止めたいという気持ちにつき動かされる。「喜び」や「安らぎ」と違い、「興味」は努力と集中を要求しますが、持つと心は広がって生き生きします。
5)「希望」(Hope)
ほかのポジティブ感情が安全で満たされた状態で生じるのに対し、「希望」は例外です。「希望」は“絶望”や“失望”を感じてもよさそうな状況で現れる、“最悪な事態を恐れながらよりよい状況を望む”感情です。
6)「誇り」(Pride)
「誇り」はいわゆる“自尊感情”のひとつで、手柄となるようなことをやり遂げたときに生じ、思想を広げ、さらなる達成への動機をかきたてます。ただし、“傲慢”となる恐れもあるため、限定的で適度な謙虚さによる抑制が必要になります。
7)「愉快」(Amusement)
まず、“「愉快」という感覚は社会的なものであること”。次に、“意外性は安全な状況のなかにあってのみ「愉快」だということ”。心から面白いと思えば、笑わずにいられない、誰かと分かち合いたい、という感情です。
8)「鼓舞」(Inspiration)
人間の素晴らしさに出会い、奮い立つような感情がわいて、意識はくぎ付けになり、心が熱くなる。「感謝」と「畏敬」とともに最も自我を超越した感情とされ、人を自己満足から引き出してくれます。ただし、“憎しみ”や“ねたみ”を覚えたり、“自己嫌悪”に陥ったりする場合もあります。
9)「畏敬」(Awe)
「鼓舞」と近いのですが、例えば自然のようにもう少し規模の大きい素晴らしさに出会ったときに感じるものです。偉大さに圧倒され、自分自身の小ささを感じて謙虚になります。同時に、境界が消え、自分が何か偉大なものの一部であると感じます。
10)「愛」(Love)
「愛」は例外で、ポジティブ感情のすべてを含んでその上に位置する感情です。安全で親密な人間関係のなかで、もろもろのポジティブ感情が心を揺さぶるとき、状況によってそれは「愛」となります。「愛」というのは“瞬間的な心の状態”であり、“関係”を定義するものではなく、波のような感情の高まりなのです。
以上のように、ポジティブ感情はいろいろな形で現れます。しかし、どのポジティブ感情も儚く、瞬く間に失われてしまいます。また、ポジティブ感情もほかの感情と同様に、出来事を「どう解釈するか」というところから生じ、出来事の解釈によって感じ方は変化します。
つまり、ポジティブ感情を感じるかどうかは、適切にとらえる必要があり、またとらえ方次第だといえます。日々の出来事からポジティブ感情の視点をもって良さを見出し、さらにはその良さをはぐくめる人こそが、「ポジティブ」な人といえるのではないでしょうか。
「ポジティブ」な人になるためのアプローチ
では、現在「ポジティブ」でない人でも実践できる、「ポジティブ」な人になるための方法はあるのでしょうか。ここでは、セリグマン氏の考案した「Three Good Things」(スリーグッドシングス;3つの良いこと)というエクササイズを紹介したいと思います。「Three Good Things」の方法は簡単で、「毎晩寝る前に、その日あった『3つの良いこと』を書き出し、これを1週間続ける」というものです。
「終わり良ければすべて良し」という諺にもあるように、1日の終わりに「3つの良いこと」を書き出すことによって、たとえその日に嫌な出来事があったとしても、認知を変えて1日を良いほうに見直し、「ポジティブ」にとらえ直すことができるようになります。
なお、“良いこと”は大きなことでなくても大丈夫です。「コーヒーがおいしかった」「窓を開けたとき風が心地良かった」など、ささやかなことでかまいません。また、リストラや大切な人との死別などとてもつらい状況の場合は、“普通のこと(つらくない瞬間)”を書いていただければとよいといわれています。ぜひ日々の生活に組み込んで、「ポジティブ」な習慣を身に付けてみてください。そのときこそ、「ポジティブ」な人の違いが感じられるようになるかもしれません。
<参考文献>
・『世界でひとつだけの幸せ』(マーティン・セリグマン著、小林裕子訳、アスペクト)
・『ポジティブ心理学の挑戦』(マーティン・セリグマン著、宇野カオリ監訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
・『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(バーバラ・フレドリクソン著、植木理恵監修、高橋由紀子訳、日本実業出版社)
・『実践ポジティブ心理学』(前野隆司著、PHP新書)
・『世界でひとつだけの幸せ』(マーティン・セリグマン著、小林裕子訳、アスペクト)
・『ポジティブ心理学の挑戦』(マーティン・セリグマン著、宇野カオリ監訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
・『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(バーバラ・フレドリクソン著、植木理恵監修、高橋由紀子訳、日本実業出版社)
・『実践ポジティブ心理学』(前野隆司著、PHP新書)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは
日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道
機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは
地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題
国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05