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DATE/ 2019.12.30

部屋を片付けられない理由を行動分析学で考える

 「こんまり」こと片付けコンサルタント近藤麻理恵氏の著書が世界中でベストセラーになっています。このことからも分かるように「なぜ人は部屋を片付けられないのか」は人類共通のテーマともいえるでしょう。この大テーマに心理学の観点からアプローチするのが、法政大学文学部心理学科教授・島宗理氏が研究する行動分析学です。

ABC分析で行動と環境の関係を読む

 行動分析学では、「なぜ人は部屋を片付けられないのか」という問題を行動と環境の関係性で考えていきます。そこで、島宗氏はまず行動と環境を客観的に把握し、仮説を立てて実際の改善行動に移していくための「ABC分析」が必要だと説きます。

 脱いだ服でいつも散らかっているという人の行動と部屋(環境)を例にとりましょう。まず、服を脱ぐという先行事象(A)があり、通常であれば「脱いだ服をハンガーにかけたり引き出しにしまったりして片づける」という行動(B)が起こり、その結果として部屋が片付いた状態になるという後続事象(C)が生じます。

 しかし、このようにすんなりA→B→Cといかないから部屋は片付かないのです。実際の行動を観察実験すると、服を脱いでも既にクローゼットや引き出しが満杯で片づけることができない。仕方がないので、脱いだ服を適当にその辺に置いてしまう。ますます部屋は散らかっていく。こうした一連の行動を紙に書き出したり、あるいは日ごとに散らかっていく服の数を記録したりすると、行動と環境の関係が可視化され一目瞭然です。

 ここで、片付けるスペースという環境が確保できていないために片付かないということが分かりました。ではどのようにしたらいいのか? 「もっと広い部屋に移る」では解決になりません。環境だけ変えても行動を変えなければ、結果も変わらないからです。これでは広い部屋も狭い部屋と同じように散らかっていくのは目に見えています。行動と環境のどちらか一方ではなく、両者の関係で考えるのが行動分析学なのです。

「~できない」を性格や能力のせいにしない

 そこで、今度は限られたスペースという環境を変えるべく行動を起こします。古くなった服、何年も着ないまましまい込んでいた服がきっとあるはずです。それらを捨てる、誰かにあげる、リサイクルに出すなどして処分するという行動で、新たなスペースを確保します。こうして一連のA→B→Cがスムーズに繰り返し行えるように強化していくのです。

 注目すべきは、「なぜ部屋が散らかってしまうのか」を考えたときに、行動分析学では人の能力や性格のせいにしないということです。私たちは原因を考えるときに、つい「だらしがないから」「生まれつき整理整頓が苦手だから」と理由づけしてしまいがちです。

 しかし、このように性格や能力のせいにしてしまうと、「どうしたらいいか」という方向には考えが及びにくくなってしまいます。つい、なぜ片付かないのか→だらしがないから→なぜ「だらしない」と分かるのか→片付いていないから→なぜ片付かないのか→だらしがないから、と負のスパイラルにはまってしまい、このような状態に陥ることを島宗氏は「個人攻撃の罠」と呼んで警戒します。

 自分をコンプレックスのかたまりに閉じ込めてしまい、「なぜ」の言い訳を探したり落ち込んでいるばかりでは、いつまでたっても「どうしたらいいか」のステップに切り替えることができません。行動と環境の関係で分析、実践していくことが大切なのです。

 部屋が片付けられない、いつも遅刻してしまう、段取りよく作業を進められないといった自分の弱点が目に付いてしまったら、この行動分析学を味方にしてみましょう。大事なのは「行動と環境」のワンセットで切り替えを図ること。くれぐれも自分のせいにして諦めたり居直ったりしないように気をつけてください。

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