社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
部屋を片付けられない理由を行動分析学で考える
過去に「こんまり」こと片付けコンサルタント近藤麻理恵氏の著書が世界中でベストセラーになったりと、「なぜ人は部屋を片付けられないのか」は人類共通のテーマです。この大テーマに心理学の観点からアプローチするのが、法政大学文学部心理学科教授・島宗理氏が研究する行動分析学です。
脱いだ服でいつも散らかっているという人の行動と部屋(環境)を例にとりましょう。まず、服を脱ぐという先行事象(A)があり、通常であれば「脱いだ服をハンガーにかけたり引き出しにしまったりして片づける」という行動(B)が起こり、その結果として部屋が片付いた状態になるという後続事象(C)が生じます。
しかし、このようにすんなりA→B→Cといかないから部屋は片付かないのです。実際の行動を観察実験すると、服を脱いでも既にクローゼットや引き出しが満杯で片づけることができない。仕方がないので、脱いだ服を適当にその辺に置いてしまう。ますます部屋は散らかっていく。こうした一連の行動を紙に書き出したり、あるいは日ごとに散らかっていく服の数を記録したりすると、行動と環境の関係が可視化され一目瞭然です。
ここで、片付けるスペースという環境が確保できていないために片付かないということが分かりました。ではどのようにしたらいいのか? 「もっと広い部屋に移る」では解決になりません。環境だけ変えても行動を変えなければ、結果も変わらないからです。これでは広い部屋も狭い部屋と同じように散らかっていくのは目に見えています。行動と環境のどちらか一方ではなく、両者の関係で考えるのが行動分析学なのです。
注目すべきは、「なぜ部屋が散らかってしまうのか」を考えたときに、行動分析学では人の能力や性格のせいにしないということです。私たちは原因を考えるときに、つい「だらしがないから」「生まれつき整理整頓が苦手だから」と理由づけしてしまいがちです。
しかし、このように性格や能力のせいにしてしまうと、「どうしたらいいか」という方向には考えが及びにくくなってしまいます。つい、なぜ片付かないのか→だらしがないから→なぜ「だらしない」と分かるのか→片付いていないから→なぜ片付かないのか→だらしがないから、と負のスパイラルにはまってしまい、このような状態に陥ることを島宗氏は「個人攻撃の罠」と呼んで警戒します。
自分をコンプレックスのかたまりに閉じ込めてしまい、「なぜ」の言い訳を探したり落ち込んでいるばかりでは、いつまでたっても「どうしたらいいか」のステップに切り替えることができません。行動と環境の関係で分析、実践していくことが大切なのです。
部屋が片付けられない、いつも遅刻してしまう、段取りよく作業を進められないといった自分の弱点が目に付いてしまったら、この行動分析学を味方にしてみましょう。大事なのは「行動と環境」のワンセットで切り替えを図ること。くれぐれも自分のせいにして諦めたり居直ったりしないように気をつけてください。
ABC分析で行動と環境の関係を読む
行動分析学では、「なぜ人は部屋を片付けられないのか」という問題を行動と環境の関係性で考えていきます。そこで、島宗氏はまず行動と環境を客観的に把握し、仮説を立てて実際の改善行動に移していくための「ABC分析」が必要だと説きます。脱いだ服でいつも散らかっているという人の行動と部屋(環境)を例にとりましょう。まず、服を脱ぐという先行事象(A)があり、通常であれば「脱いだ服をハンガーにかけたり引き出しにしまったりして片づける」という行動(B)が起こり、その結果として部屋が片付いた状態になるという後続事象(C)が生じます。
しかし、このようにすんなりA→B→Cといかないから部屋は片付かないのです。実際の行動を観察実験すると、服を脱いでも既にクローゼットや引き出しが満杯で片づけることができない。仕方がないので、脱いだ服を適当にその辺に置いてしまう。ますます部屋は散らかっていく。こうした一連の行動を紙に書き出したり、あるいは日ごとに散らかっていく服の数を記録したりすると、行動と環境の関係が可視化され一目瞭然です。
ここで、片付けるスペースという環境が確保できていないために片付かないということが分かりました。ではどのようにしたらいいのか? 「もっと広い部屋に移る」では解決になりません。環境だけ変えても行動を変えなければ、結果も変わらないからです。これでは広い部屋も狭い部屋と同じように散らかっていくのは目に見えています。行動と環境のどちらか一方ではなく、両者の関係で考えるのが行動分析学なのです。
「~できない」を性格や能力のせいにしない
そこで、今度は限られたスペースという環境を変えるべく行動を起こします。古くなった服、何年も着ないまましまい込んでいた服がきっとあるはずです。それらを捨てる、誰かにあげる、リサイクルに出すなどして処分するという行動で、新たなスペースを確保します。こうして一連のA→B→Cがスムーズに繰り返し行えるように強化していくのです。注目すべきは、「なぜ部屋が散らかってしまうのか」を考えたときに、行動分析学では人の能力や性格のせいにしないということです。私たちは原因を考えるときに、つい「だらしがないから」「生まれつき整理整頓が苦手だから」と理由づけしてしまいがちです。
しかし、このように性格や能力のせいにしてしまうと、「どうしたらいいか」という方向には考えが及びにくくなってしまいます。つい、なぜ片付かないのか→だらしがないから→なぜ「だらしない」と分かるのか→片付いていないから→なぜ片付かないのか→だらしがないから、と負のスパイラルにはまってしまい、このような状態に陥ることを島宗氏は「個人攻撃の罠」と呼んで警戒します。
自分をコンプレックスのかたまりに閉じ込めてしまい、「なぜ」の言い訳を探したり落ち込んでいるばかりでは、いつまでたっても「どうしたらいいか」のステップに切り替えることができません。行動と環境の関係で分析、実践していくことが大切なのです。
部屋が片付けられない、いつも遅刻してしまう、段取りよく作業を進められないといった自分の弱点が目に付いてしまったら、この行動分析学を味方にしてみましょう。大事なのは「行動と環境」のワンセットで切り替えを図ること。くれぐれも自分のせいにして諦めたり居直ったりしないように気をつけてください。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
「見せかけの相関」か否か…コロナ禍の補助金と病院の関係
会計検査から見えてくる日本政治の実態(2)病床確保と補助金の現実
コロナ禍において一つの大きな課題となっていたのが、感染者のための病床確保だ。そのための補助金がコロナ患者の受け入れ病院に支給されていたが、はたしてその額や運用は適正だったのか。事後的な分析で明らかになるその実態...
収録日:2025/04/14
追加日:2025/07/18
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
胆のう結石、胆のうポリープ…胆のうの仕組みと治療の実際
胆のうの病気~続・がんと治療の基礎知識(1)胆のうの役割と胆石治療
消化にとって重要な臓器「胆のう」。この胆のうにはどのような仕組みがあり、どのような病気になる可能性があるのだろうか。その機能、役割についてあまり知る機会のない胆のう。「サイレントストーン」とも呼ばれる、見つけづ...
収録日:2024/07/19
追加日:2025/07/14
3300万票も獲得した民主党政権がなぜ失敗?…その理由
政治学講座~選挙をどう見るべきか(5)政権交代と民主党
民主党は、2009年の衆議院選挙で過半数の議席を獲得し、政権交代に成功した。しかし、その後の政権運営に失敗してしまった。その理由についてはいまだ十分な反省が行われていないという。ではなぜ民主党は失敗してしまったのか...
収録日:2019/08/23
追加日:2020/02/12
印象派を世に広めたモネ《印象、日の出》、当時の評価額は
作風と評論からみた印象派の画期性と発展(2)モネ《印象、日の出》の価値
第1回印象派展で話題となっていたセザンヌ。そのセザンヌと双璧をなすインパクトを与えた作品があった。それがモネの《印象、日の出》である。印象派の発展において重要な役割を果たした本作品をめぐる歴史的議論や当時の市況を...
収録日:2023/12/28
追加日:2025/07/17