テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.06.02

マイナンバー制度~恐怖の落とし穴…海外事例に学ぶ

 2015年の10月に届く、あなただけの12桁の番号「マイナンバー」。この番号は、あなたが、あなたであることを証明してくれるため、引っ越しや婚姻、パスポートや各種給付金の申請など、縦割り行政で、それぞれで面倒な手続きが必要だったものが、うんと簡単になる大変便利な制度だ。

 しかし、このマイナンバー、「あなたがあなたであることを証明してくれる」と同時に、「他人があなたである」ことまで証明してしまうものだったとしたら...!?

女子高生が1億円以上のなりすまし被害に?!

 米国の制度で、日本のマイナンバーにあたるのは、「社会保障番号」と呼ばれるものだ。アメリカのクライムサスペンスドラマなどで目にした、耳にしたことがあるという人も多いことだろう。

 この社会保障番号の犯罪への悪用の例は数限りなく存在する。例えば、とある女子高生が卒業を控え、はじめて自分のクレジットカードを作ろうとした。しかし、どうしても作れない。カード会社から申請を拒否されるのだ。

 調べてみると、なんと、彼女には借金が150万ドル(1億8,000万円)もあったことが発覚。借金は、クレジットカードなど、42もの口座で作られていて、もちろん彼女自身には全く身に覚えのないものだった。そう、この口座は、どこかで盗み出された彼女の社会保障番号を悪用して作られたものだったのだ。

被害額は3年で兆を超える

 社会保障番号は公的機関でも民間でも幅広く利用されているため、これを盗み出せば、様々な申請が他人名義で可能になってしまう。銀行やクレジットカードなどの金融機関はもちろん、携帯電話や電気、ガス、運転免許、就職、大学の学生番号などの会員番号と結び付けられているのだ。

 司法省の統計によると2006~08年のなりすまし被害は、実に約1,170万件。被害額は約173億ドル、つまり日本円に換算して約2兆700億円という、とてつもない被害が出ているのだ!

韓国では情報流出が問題化

 昨年、日本の大手通信教育会社から流出した3,000万件以上の個人情報が社会問題化したことは記憶に新しいが、韓国のマイナンバーにあたる「住民登録番号」の情報流出は、現在まで確認されただけでも3億7,400万件にも及ぶという発表もある。

 これは韓国の人口の5,000万人を軽く上回る数字で、単純計算で国民ひとりあたり7回は情報が漏れているということだ。流出した情報は他の個人情報と結び付けられ、様々な目的で利用されているという。

 日本でも、マイナンバーを企業が取り扱うようになることから、安全面での対応を迫られているが、対応が完了している企業は今年4月時点でまだ2割という調査もある。

 日本でも銀行の口座とひも付けるなど、民間利用が始まる見込みだ。これまでも、落とした保険証などを悪用されて、消費者金融で借金を作られるなどの悪用事例はあったが、マイナンバーの悪用はそれどころじゃ済まない可能性もある。

 政府は、悪用を防止するため様々な対策を施しているとも言うが、個人でも海外の事例など踏まえ、今から、しっかりと個人情報を守る意識を作っておきたい。携帯、ネット、原子力発電、自動車…、便利なものの裏には、危険が潜むというのは歴史の教訓だ。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
2

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
4

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
5

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授